仕事にも、大学院の知識と思考が役に立つ!Webマーケター・石山広尚さん社会人大学院生インタビュー16中編

summary

Webマーケターの石山広尚さんのインタビュー第2弾。「常に学び続ける存在であることが今後生きていくうえで欠かせない」と語っていました。「学びを止めて持論に閉じこもる大人になりたくない」との名言も伺いました!

石山広尚(いしやま・ひろなお)さん

北海学園大学卒業後、北海学園大学大学院 経済学研究科 修士課程に進学。博士後期課程進学後、ライター業を始めその縁でWebマーケティングの世界へ。現在は東京でWebマーケターとして活躍する傍ら、映画脚本の分野でも活動中。

(写真は本人提供)

インタビュー実施:2025年5月3日 @Zoom上

☆前編はこちら↓

論文の書き方・調査法の学習は事前に念入りに…!

――:大学院で学んだ際、「これは良くなかったな」と思う点はありますか?

石山:そうですね…。今だとちゃんとした論文を書けるようになったのですが、入った当時は「論文の書き方」や「調査(サーベイ)の方法」などを学ぶ機会が圧倒的に少なかったんです。

なので、最初相当苦労しました。

なのでもう少し体系的に論文を指導してくれる環境が必要だったと思いますね。

今から思うと「なんであんな簡単なことができなかったんだろう」と思いますけど、当時は本当に分からなかったんですよ。

――:本当によく分かります。

石山:だからやっぱり、体系的なトレーニングの機会は絶対に必要です。

そうでないと、しなくてもいい苦労をたくさんしてしまうと思います。

――:修士課程の院生って、論文指導をちゃんと受けられていないことも多いですからね。
よくわかります。

石山:そうなんです。指導教授のさじ加減で、かなり属人的になっていて。

――:どれだけ指導教員に熱意があるかで大きく変わりますよね。

石山:そうそう。

――:大学院での学びが役立つとはいえ、指導体制には課題があるなと感じます。

石山:その通りですね。
やっぱりクローズドな世界というか、顕在化しにくい問題が多いと思います。

大学院って人口が少ないですから、けっこう“なあなあ”になっている部分がある。
学部と比べても圧倒的にそう感じます。

なので大学院での論文指導も論文が「書ける前提」で放置されているような雰囲気があります。

もちろん、自然科学系の大学院だったら、たぶん徹底的に指導すると思います。
あちらは論文の客観性が非常に重視されますから。でも人文系は、かなり適当ですよね。

大学院での研究からWebマーケティングの世界へ!

――:大学院ののちWebマーケティングの分野に進まれた理由について教えてください。

石山:きっかけは本当に些細なもので、大学院を退学したあと、身の振り方を考えていた時に「ライターになりたい」と思っていたんです。

――:なるほど。

石山:なので大学院休学中から出版社系の仕事をしたりしていました。

雑誌記者や、Webのインタビューの手伝いなどをしていました。
ただ、「もっと稼げるようになりたい」と思っていました。

そのとき「ライター」ってすごく曖昧な職業だと気づいたんです。
コラムニストもライターですし、でも「どんなライターになりたいのか」が自分の中で見えていませんでした。

たとえば、服が好きだったので、「東京のファッション雑誌の編集者になって、ゆくゆくはコラムニストに…」みたいな妄想もありました。
でも、これ、すごくキラキラして見えたけど、現実味がなかったんです。

藤本さんも分かると思いますが、「コラム書いて生活できたらかっこいい」とは思うけれど、そうなれるビジョンが全く見えなかった。

「で、どうしようかな」って思っていた時、ちょうど2017年くらいでしょうか、「デジタルマーケティング」「Webマーケティング」という言葉が流行りはじめていて…

――:はい、流行ってましたね。

石山:まさに「Webマーケティングの時代がやってくる」と。
しかも、それは不可逆的な流れだという認識がありました。

もともと少し知ってはいたんですが、「この世界でもライターのような存在は必要とされている」と気づいて、だったら「食いっぱぐれないだろうな」と思ったんです。

IT系は間違いなく成長分野ですし、「だったらデジタルマーケティングの世界のライターとして生きていこうかな」なんて思って、その道に足を踏み入れたのがすべてのきっかけですね。

だから、もともとWebに興味があったかというと、正直ほとんどゼロに近かったです。

「大学院時代の経験がいまも役立っています!」

――:そうだったんですね。

そこから始められて、今に至るわけですが、「大学院時代とは大きく違うな」と感じる部分や、逆に「大学院時代の経験が役立っているな」と思う点はありますか?

石山:あるとすれば、標準よりちょっと上くらいの「文章力」でしょうか。
また「ものを伝える能力」ですね。
これは喋ることも書くことも含めて、一定以上のスキルを大学院で身につけられたと思います。

――:間違いなく、それはありますね。

石山:あとは、知識量というか、結構「一を聞いて五を知る」くらいの引き出しの多さを身につけられたと思います。
理解力も速くなりました。

これはたぶん、大学院時代に培った教養のおかげなんだろうなと思います。

あと、未知の分野でも本を一冊パッと読めば、だいたい1日で本質がつかめる感覚はあります。

いわゆる学習の効率ですよね。

――:それは強いですね。

石山:こういうのが「言語化能力が高い」と言うことだと思います。

これはどういうことかというと、自分がインプットした情報を、自分の言葉にちゃんと咀嚼してアウトプットできる能力なんです。

これはめちゃくちゃ重要です。

藤本さんも得意だと思いますけど、「アナロジー(類推)」ってあるじゃないですか。

「これってこれに似てるよね」という喩え。

例え話や比喩が得意な人って、やっぱり物事をうまく咀嚼できる人なんだと思います。

自分で言うのも変かもしれませんが、今思うとそれって「言語化能力」の一つなのかなと感じています。

石山:たとえば「SEO」という言葉ひとつ取ってもいろんな角度から切り口を与えることができるんです。

一般的には「SEOとはSearch Engine Optimizationで、優良な情報を提供していれば検索結果で上位に出るようになりますよ」とか説明されますよね。

でもそれって、まだ教科書通りで、自分の言葉にはなっていないと思うんです。

たとえば僕なら、こう言い換えます。
「Googleは検索するユーザーのために、本当に役立つ情報には全力を注いでいる」と。

Googleの哲学は、「検索した人が『この情報に出会えてよかった』と思えるような検索体験を提供すること」なんですよ。

つまり、Googleに評価されるということは、そのGoogleの信念や哲学にコミットしているサイトなんだということなんです。

こういう説明をしている人ってあまりいないんですけど、本質はそこなんですよ。

検索順位を上げたいなら、まずGoogleが目指している理想の検索エンジンのビジョンを知るべきなんです。

「あなたがGoogleで戦うなら、まずそれを理解しなさい」と。
それが大事なんですよ。

同じ事実を扱っていても、視点を変えるだけで、景色が違って見える。

これって多分、大学院時代に培った能力なんだと思うんです。
本を読んで、「結局どういうことなの?」って問い直す力ですね。

実践編・言語化能力の磨き方

ーー:こういう言語化能力を鍛えるにはどうすればいいと思いますか?

石山:大学院の指導教員に鍛えられたなと思うのが、「段落一つを全部模写して、その上で無理やりでもいいからコメントを書け」っていうトレーニングです。

指導教員から、これをずっとやらされたんです。

特に、海外の学者って、一段落ごとにしっかり意味を持たせて書いているじゃないですか。

その一段落一段落をしっかり模写して、それについて「何か自分のコメントを書け!」と。

例えばヴェブレンの『有閑階級の理論』という本なんかは、300ページ分くらい全部それをやりました。

――:すごいですね。

石山:パソコンにまとめていったのですが、データが重くなりすぎて、最終的にWordファイルが開けなくなりました(笑)たぶん二度と開けないと思うんですけど。

でもまあ、そういうことをやってきたおかげかなと思います。

ある種、特殊な訓練だったとは思いますが、こうやって「要約能力」「本質を掴む力」「言語化して自分の言葉に置き換える能力」っていうのは、大学院に行ったら誰しもがある程度は求められると思うんです。

これを学ぶことができた点で、大学院で一生ものの財産を得たと感じていますね。

――:いや〜、素晴らしいです。

石山:この力って、なかなか普通には身につかないものですし、大きな価値があると思います。

特に知識労働系の仕事で成果を出したい人にとっては、間違いなく年収にも直結してくるスキルだと思います。

だから自分にとっては、大学院進学は「自己投資」だったと今では思います。

――:それでは結果的に「大学院に行って良かった」と思えるということですね?

石山:はい。後悔は一度もしていません。

――:やっぱりそうですよね。

石山:博士課程は少しグダグダしてしまいましたけど、それでも自分を見つめ直す良い機会になりました。
あれがあったからこそ、今の自分があるんだと思います。

「学びを止めて、持論に閉じこもる大人」にはなりたくないんです

――:それでは石山さんの今後の展望について伺えますか?

石山:自分のビジョンとしては、「自分が貢献できる存在であり続けたい」というのがあります。
そのため、まずは「学び続ける自分」でありたいと思っています。
それは、現場に対して熱量を持ち続けるということでもあります。

今の時代、今日学んだことが明日には通用しなくなっているかもしれません。
それくらい、社会の変化はますます加速しています。

――:やっぱり、学び続けないといけないですね。

石山:そうなんです。だからこそ学び続けたいと思っています。
そして、常に最前線に目を光らせていたいですね。


これから身体は衰えていくかもしれないけれど、「脳みそ」はいつまでも若く保ちたいです。

――:いいですね。いつまでも若々しい脳みそでいたい。素晴らしいことだと思います。

石山:大人になればなるほど、情けなくなることってありますよね。
学んでない人って、やっぱりわかるんですよ。
正直に言って、「この人、学んでないな」ってのがバレる。

そういう人を見ると、「大人として一番恥ずかしいな」って思うんです。
結局、通用しないんですよね。学んでない人って、言葉が薄いし…。

――:確かに、卒業してからそのまま止まっているような方って…。

石山:ちょっとダサいなって思うこともあります。
そういう人をたくさん見てきたからこそ、僕は「そうなりたくないな」という気持ちが強くあります。

「学びを止めて、持論に閉じこもる大人」にはなりたくないんですよ。

――:今の言葉、名言ですね。いいですね!

石山:そうなってしまった時点で、人材としての価値は一気に下がってしまうと思います。

あとは「大きな仕事を成し遂げたい」という思いは常にあります。


今の仕事もそうですが、「この仕事を任せてよかった」と言ってもらえるような、そんな成果を出せるような仕事をしていきたいですね。

それが今の自分の一つのビジョンです。

(後編に続きます)

「社会人大学院生インタビュー」はこちら!

 

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