仕事にも、大学院の知識と思考が役に立つ!Webマーケター・石山広尚さん社会人大学院生インタビュー16前編

summary

「大学院で学ぶことは、知識も思考も仕事にも直結する!」。そう語るのはWebマーケターの石山広尚さん。北海学園大学・大学院でシンボリック相互作用論などを学んできたことがいまの仕事の土台になっているそうです。今回は石山さんに大学院進学の魅力を伺いました!(前編)

石山広尚(いしやま・ひろなお)さん

北海学園大学卒業後、北海学園大学大学院 経済学研究科 修士課程に進学。博士後期課程進学後、ライター業を始めその縁でWebマーケティングの世界へ。現在は東京でWebマーケターとして活躍する傍ら、映画脚本の分野でも活動中。

(写真は本人提供)

インタビュー実施:2025年5月3日 @Zoom上

経済学史の研究から社会学まで!博士後期課程での学究生活

――:石山広尚さんは北海学園大学の学部からそのまま大学院の修士課程に進学され、経済学研究科の博士後期課程進学なさっています。

その後就職して現在は東京においてWebマーケティングの分野で活躍なさっています。

石山さんは大学院ではどのような研究をされていたんですか?

北海学園大学(写真はWikipedia

石山:結果としてあまり深められなかったんですが、最初は経済学史の研究をやっていました。

博士後期課程では、何を書こうか悩んでいるときに退学してしまったので、特にこれをやっていたとは明確には言えないんですけど、科学哲学とか社会学の領域に少し踏み込んでいました。

いわゆる意味学派ってやつですね。

たぶん藤本さんもご存知だと思うんですけど、ハーバード・ミードとか、そういったシンボリック相互作用論ですね。

経済学に対しての理論的な研究だけじゃ限界があると思っていたので、もう少し社会学的な視座を取り入れたいなと思って、社会学者のソースティン・ヴェブレンなどに関心を持つようになりました。

――:なるほど〜。そこで社会学への興味を抱かれたんですね!

石山:ヴェブレンは新カント派寄りの考え方だったので、そこからプラグマティズムに関心が出てきて。

ウィリアム・ジェームズを読んで、そこからまた派生して、ジョージ・ハーバート・ミードなどのシンボリック相互作用論にたどり着きました。

シンボリック相互作用論では人間は意味の世界で生きていると説明します

この感覚が、自分の関心の中心にあったと思います。

――:なるほど、いいですね!そういった研究をずっとなさっていたのですね。

私のブログの中でこれだけ社会学用語出てくるのってけっこう珍しいと思います(笑)

books in the library background

大学在学中から進学を決意。

――:石山さんの場合、学部からそのまま大学院に進学して博士課程まで行かれたわけですが、大学在学中から博士や修士課程に行こうと考えていたんですか?

石山:記憶している限りでは、大学3年生の終わりくらいから、研究者の道というか、大学院も面白そうだなって思って、いろいろと下調べをしていた記憶があります。

――:何かきっかけがあったんですか?

石山:そうですね。自分は大学時代はわりと真面目に勉強していたタイプだったんですけど、高校時代はあまり勉強していませんでした。

せっかく大学に入ったんだからと思って、わりとちゃんと本を読んだり、経済学を勉強し始めたんです。

そしたら意外と面白いなって思えて。

――:いいですね〜。

石山:だからすごく軽い気持ちでしたけど、「ずっと物を考えられるような仕事」、いわゆる思索家というか、知的な活動をして、それで飯を食っていけたら自分に合ってるんじゃないかなと思い始め、研究者の道を考えるようになりました。

――:ああ、そうだったんですね。

石山:すぐに就職するつもりはなかったですね。

率直な気持ちを言うと、みんなと一斉に就職活動するっていうのが耐えられなかったというか、違和感があって嫌だったんです。

――:よく分かります。

石山:学部を卒業してすぐに就職活動しても、別に積み重ねてきたものがあるわけじゃないし、もう少し準備期間が欲しいなって思ってました。

経験もないのに面接で「御社が」「御社が」って言うのもなにか違うかなと。

もう少し言語化すると、学部卒業してすぐに就職している自分を想像できなかったんです。
そういうビジョンがなかったんです。

それに、大学4年をまるまる就職活動に使うこと自体にも、あまり納得感が持てなかったですね。

だからこそ、もう少し自分らしさというか、自分がシンプルに関心のあること、突き詰めたいと思ったことに集中したいなと思い、大学院に進学しました。

――:なるほど〜、それで就職活動ではなく大学院進学するという選択をされたんですね。

「大学院で、血肉になる本の読み方を身につけられました」

――:石山さんは修士課程から博士課程まで経験されたわけですが、両方を振り返って大学院に入って「良かったな」と思うこと、逆に「あまり良くなかったな」と思うことがあれば教えてください。

石山:良かったなって思うところは、「本の読み方」を身につけられたことですね。

自分の血肉になるような読み方ができるようになりました。

それと、良い本か悪い本かを見極める「審美眼」が身についたことも大きいです。

あとは、これは今でも通用してると思うんですけど、「本質を見抜く力」がめちゃくちゃつきましたね。

長々とした議論の中であっても「結局何が言いたいのか」「要するにこういうことですよね」と要約する力が大学院で本当に身につけられたと思います。

――:いいですね!

石山:これは一生の財産になったなと思いますね。

――:今、お仕事の中でもけっこう役立っているという実感はありますか?

石山:やっぱり純粋に教養の面ですごく助かっている部分がありますね。

水平的にも垂直的にも知識の幅が広がったと思います。

いろんな人に話を合わせられるし、いろんな縦横に広がる知識の糸を交差させて知見を広げたり、発想力や知識、教養の引き出しが圧倒的に多くなった気がします。

本当にいろんなところで助かってますね。

歴史などを深く学ぶことも、この年になってみて「本当に良かった」と思えるし、教養って、年齢を重ねるほどにアドバンテージになるものだと実感します。

「大学院で磨いた言語化能力がめちゃくちゃ役立っています」

――:いいですね。大学院で教養を身につけられる環境があったということですね。

石山:そうです、シンプルに。

そしてやっぱり「要約力」というか、「本質を短時間で掴む力」、つまりそれを「言語化する力」。

この圧倒的な言語化能力は、身について本当に良かったと思います。

今の時代って、特に知識労働の分野では言語化能力が「ポータブルスキル」として重視されているじゃないですか。

大学院時代の生活が、この言語化能力の土台を作ってくれたんだと思います。

これは自信を持って言えますね。

――:わかりました。ちなみに博士課程には何年いらっしゃったんでしたっけ?

石山:実質…何年だろう、2年? 3年目に入る直前に指導教員が異動されたんですよ。

そのあと休学を挾んで大学院を辞めているので実質2年くらいですね。

たしか、藤本さんと初めてお会いしたのはその時期で、たまに研究室に顔を出していた時でしたね。

まだ在学中でした。

――:懐かしいですね!

石山:もう10年くらい前になりますね。

――:博士課程に進まれて、指導教員が異動したことで研究の方向性が変わってきたということでしょうか?

石山:そうですね、大学院に残って研究者になる道は現実的ではないなとその時点でわかっていました。

30歳になってもプータローでいる覚悟はなかったので…。

――:なるほど、これもよくわかります…。

石山:それに、アカデミックな世界は自分には合わないのかもな、と思っていました。

やっぱり狭い世界ですし、正直言って論文を書くことにそれほど情熱が持てなかった。

だから、そこでそろそろ見切りをつけようと考えたというのが大きいですね。

――:見切りをつけるときって、けっこう辛くなかったですか?

石山:いや、意外と辛くはなかったです。

もともと大学院生活にそれほど執着がなかったので。それよりも「今後どうしていくか」の方が自分にとっては重要でした。

――:ああ、なるほど。

石山:もう純粋に、20代半ばも過ぎていたので「これからのキャリアをどうしていこうか」って。
シンプルに、そっちの方が心配でしたね。

――:うん、よくわかります! 私も同じようなことを経験したので共感できます!

石山:何か「自分のために成し遂げたい目標がある」人にとっては大学院進学はすごく意義があると思うんですけど、「大学教員のポストを目指すから大学院に行きたい」という人は、自分のの経済環境とかもちゃんと考えた方がいいと思います。

そうでないと、いつまでも自活できないので…。

(中編に続きます)

「社会人大学院生インタビュー」はこちら!

 

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