社会人として大学院で学んだ経験を持つ方々へのインタビューシリーズ。
第4弾は、小樽商科大学大学院アントレプレナーシップ専攻(OBS)でMBAを取得した縁で独立なさった山田瑞希さんのお話を伺います。(後編)
(インタビュー実施日:2024年4月17日@弊社事務所)
前編はこちら。
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目次
実践を通すと、経営学の理解が深まる。
ーー結果的にはご出身の小樽商科大学の大学院に戻って来る形になったわけですね。
ビジネス経験を挟んでもう一回経営学を学び直されたことになったと思うんですけど、そのとき何か印象の違いはありましたか?
山田:大学生時代、夜間学部だったんですよ。
当時も20代前半ながら昼間働いて夜学校に行くっていう生活をしていました。
当時は全然大学の勉強に興味がなくて、経営学について全く覚えていませんでした。
昼間働いて大学に行って、とりあえず頑張って大学を卒業するところが目標でした。
なので学んだことをビジネスや就職に活かす発想がなかったんです。
で、約10年ぐらい社会人を経験して改めてもう一回学んでみると、マーケティング論とか経済学入門みたいな部分って重複してるところがあるので、「何か聞いたことあるな」っていう感じを持ちました。
教科書で習ったことに実務経験がくっついてきているので、「ここは教科書通りだけど、ここは実際は教科書通りじゃないよな」とどちらの視点からに考えられるようになっていました。
これは社会人経験をしているから得られる面白さだったと思います。
ビジネスでの経験が経営学学習に役立った。
ーー仕事でもOBSの学びが役立っているという実感はありますか?
山田:個人的には2年の間「本当に自分は成長しているんだろうか」「この学びはちゃんと身になっていて、アウトプットできているのだろうか」っていう不安感がすごくありました。
ですが、多分そこは自分自身で判断するというより周りや仕事の内容が変わるところなどで判断していくべきなのだと思います。
同期を見ていると、結構思い切りキャリアチェンジする友人もいたし、ほかにも在学中に上場企業の役員に就任された方とかもいました。
そういう人がいると「自分も頑張ろう」という感じになりました。
私の場合は具体的にこれがこうなったっていうビフォーアフターがある訳ではないんですけど、やっぱり周りの環境と自分の捉え方の変化が実務に役立っているなと思います。
OBS修了と同時に独立!
ーー山田さんはOBS修了後、キャリアチェンジをなさったと聞いたのですが。
山田:そうなんです。
OBSを修了したのと同じタイミングで7年間勤めていた会社を退職したんです。
辞めたのは、ちょうど北大には履修証明プログラムという社会人向けのプログラムがあるのでそこで観光学を本格的に勉強しようと思ったからなんです。
そのため今年の4月から履修証明プログラム生という学生としての一面と、フリーランスという一面の2つを持つために働き方と生活を変えることにしたんです。
ーーMBAを取ったのを機会に独立なさった感じですね。
山田:まあそうですね。
MBAを取られる方って、MBAを取ろうって思っている時から既に独立を視野に入れている方と全く入れていない方、社内でのキャリアアップを目指す方など色んなパターンがあると思うんです。
でも、正直に申し上げると私は入学する前も在学中も独立は一切考えていなかったんですよ。
会社も全然辞めるつもりもなかったんです。
こう言ったら変なんですけど、辞めてもいいし、辞めなくてもいいし、別にそこはどうでもいいみたいに考えていたんです。
ちなみにOBSに入って社会人大学院生としての生活をスタートするにあたり時短勤務で週3回しか会社に行かない形にしてもらったんです。
なおかつ会社の定時は6時半なんですけど、4時半には終わるような感じにしてもらいました。
こういう感じで会社での働き方を入学時の2年前から変えているんです。
それも通して「もしかしたら会社にずっといて会社の仕事をフルコミットするっていうこと以外の働き方もあるかも」って思うようになってきました。
なので月曜日から水曜日までは会社に行き、その後OBSに通っていました。
木曜日と金曜日はフリーの状態になって、そこで副業という形で会社の業務とはバッティングしないものをフリーランス的に幾つか受けたり勉強に使ったりと、働き方をこの2年間で徐々に変えていきました。
今回修了を機に、北大の履修プログラムなどもう少し平日昼間にも学びたいことができたので、思い切って会社員を卒業しようと考えました。
ーー戦略的にやってらっしゃるのが凄いですね!
山田:とんでもないです。
ーー私は独立した時は本当に収入ゼロになった人間なんで、徐々にキャリアチェンジを進めていったというのが凄くいいなと思います。
山田:いえいえ(笑)
とはいいものの、OBSでは経営戦略とかスタートアップの方向性とかも授業で習っていましたが、そのセオリーでいうところの自分の事業のミッション・ビジョン・バリューも決めてないので…。
事業計画も財務諸表も作ってないし、ぼやっとしています。
でも、逆に言うと自分の活動のコアみたいなものがあるので、他の人よりは多少なりともポジションを取れていたり、他の人には真似できないものはなにか考えたりと、考える癖が付いたのがMBAの授業のおかげだなと感じます。
「観光をアカデミックに研究したい!」
ーーOBSでの学びをキャリア形成につなげていらっしゃいますね!
私が凄いなと思うのは大学院を出て終わりではなくまだまだ学んでいきたいという山田さんの姿勢です。
山田さんがいま学ばれている北大の履修プログラムの存在はいつ知ったのですか?
山田:OBSに入っていろいろな授業を取った時に、「北海道の観光産業はかなり大きいから、観光だけに特化したMBAの授業があってもいいんじゃないか」って思ったんです。
もちろん、OBSでは地域経済に関する授業もたくさんあったので、その中で何個か掘り下げていく機会がありましたし、私自身も授業の中ので観光関係のビジネスプランを提案し、事業立案を考えていたんです。
その時に、「観光をアカデミックに研究するほうが自分にはいいんじゃないか」って思うようになりました。
それをたまたまた話したとき、北大のプログラムの存在を教えてくれた人がいました。
おやおや、と思って内容を見てみると「MBAを取った後、もう一回チャレンジできる内容だな」と感じました。
この北大の履修プログラムは1年だけなんです。
その期間、現役の大学院生に混ざって履修する授業が多くあります。
定員は5人で、この5名の為だけに作られた授業となっています。
現役学生と関わるとハッとする気づきが。
ーー4月から授業を受けていらっしゃるわけですね。
北大に通ってみて、OBSとの違いについて気付くことはありますか?
山田:もう全然違いますね。
OBSは社会人の同期35名で生活していくことになるので、現役大学院生とか大学生とかに触れ合うことってほぼありませんでした。
今は十数歳も年下の方やさまざまな国籍の方、さらには観光をメインで勉強されていた方っと勉強しているとディスカッションで結構ハッとさせられることが多いです。
札幌でタイフェスティバルを開催したい!
ーーいいですね!
山田さんはいま目指していらっしゃる目標はありますか?
山田:私はインバウンドとか海外PRだとかで、タイに対しての仕事に多く関わっています。
北海道でタイに関係する人って大ベテランの先輩方がいるのですが、将来的にはそのうちの一人ぐらいには入りたいなって思っています。
私が実現したいなと思っていることで行くと、札幌でタイフェス(タイフェスティバル)をやりたいんですよ。
タイフェスは東京だと毎年やっている大きいイベントなんです。
あれを札幌に持ってきたいなと。
そうするとタイと北海道の観光振興にも繋がりますし、日本や北海道がアウトバウンドするのにも繋がるかなと思うので。
私は「これは絶対にクリアしたい」っていう小さなスタンプラリー的な目標を積み上げていき、結果的にそのキャラクターとして道内でポジションを取って行きたいと考えています。
(本人提供)
ーータイフェス、是非開催していただきたいと思います!
ところで、山田さんとタイとの関わりはいつからなんですか?
山田:タイに初めて行ったのは10年ぐらい前ですね。
7年ぐらい前には実際に10ヶ月くらいタイのバンコクに住んでいましたので、それがタイとの関わりの深さにつながったと思っています。
ーータイ、いいですよね。雰囲気も面白いですし。
山田:面白い国です。
特に観光立国としてタイは日本の倍ぐらいインバウンドが入っているんですよね。
外国人観光客とか観光による収入でいうと、日本は見習わなきゃいけないというか、日本より先輩の国なので、そういった意味でも研究対象として面白いです。
(本人提供)
遠慮・立場を考えずにディスカッションができた!
ーーOBSに行って一番良かったことは何ですか?
山田:一番良かったことというと、遠慮や立場とかをあまり考えずにディスカッションできる仲間の存在が良かったと思います。
会社の中だと「このプロジェクトが成功するかどうか」っていうのが念頭にあって話をしていきますし、友達だとそこまでガッツリ話さなかったりもしますし、取引先だと遠慮することもありますし。
なので年齢も性別も超えてディスカッションできるのが貴重でした。
「教科書のここに書いてあることは、これおかしいんじゃないか」とか、「今の戦略じゃ絶対にうまくいかない」みたいなことを本音でぶつけ合ってディスカッションできました。
OBSを目指す人へのメッセージ
ーー社会人でMBAを目指している方、その中でも特にOBSを目指している方にメッセージがありましたら、自由にお話しください。
山田:さまざまな先輩にOBSを目指した時の話を聞いて思うんですけど、みんな「つらい」っていうんですよね。
これは半分本当なんですけど、半分嘘でもあるんです。
決してつらすぎるわけではなくて、うまくコントロールしていき、同期や先輩・後輩のつながりをうまく活用すると、つらさもちょっとは軽減されるのではないかって思います。
OBSの場合はオンラインではなく対面というところもありますし、同じ北海道をフィールドにしてビジネスをやっている仲間たちが集まっています。
業種は全然違うんですけど、志や境遇の近い方が多いので、1人でやりきるというよりは「周りの仲間たちと一緒に2年間を乗り越えよう」っていう心持ちでいると、みんなの「つらい」というセリフがそこまで重く聞こえないのではないかと思います。
あとは、環境を少し変えられるのであれば、大学院に入る時に思い切って「この2年間は会社員としての時間を少し時短してみよう」とか、思い切って働き方を変えてみるのもいいんじゃないかと思います。
人生のうちの2年間なのでやってみてもいいんじゃないかなと思うので、無理やり時間を作っていくとか、会社に言わないで2年間乗り越えるとかしなくてもいいんじゃないでしょうか。
大学院生活って人それぞれなんですよね。
そのため、あまり入学前とか受験前からギチギチに決め過ぎずに、ライフスタイルも柔軟に変えていくのも含めたスキルアップも必要だと思います。
頑張ってください!
ーー今回本当にありがとうございます。
私が通っている北大大学院でもお会いできれば幸いです!
(本人提供)
山田さんの体験談はOBSの2024年度入試版 募集パンフレットにも掲載されています。期間限定ですがこちらからご覧ください。
小樽商科大学 大学院 パンフレット「OBS座談会」
インタビューを終えて
OBSで学ぶときから会社と「働き方改革」の相談をし、さらには修了と同時に独立と、進学を機に自らの働き方・生き方を柔軟に変えている山田さん。
山田さんがOBS受験をする2021年夏、うちの塾に相談に来てくださいました。
すでにインバウンドへのWebマーケティングで結果を出している山田さんがOBSで経営学を身につけることは「まさに鬼に金棒だな」と感じたのを覚えています。
実際に在学中から活躍なさり、現役MBA生による「ビジネスプラン甲子園」ともいえるJBCCでOBS生初の全国準優勝を勝ち取るという快挙を成し遂げています!
インタビュー内で出ていた「札幌でタイフェスを開催したい!」という思いも、おそらくすぐに達成なさり、さらにご活躍なさっていくことを確信しています!
山田さん、インタビューへのご協力、ありがとうございます!
今後も応援しています!
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インバウンド(海外観光客)対象の観光ビジネスに長年従事し、Webマーケティングの担当として活躍。タイのバンコクで10ヶ月間生活した経験もあり日タイ交流にも取り組む。2022年に小樽商科大学大学院大学院アントレプレナーシップ専攻(OBS)に進学、2024年3月修了と同時に独立。現在はフリーランスとして活躍しつつ北海道大学大学院のデスティネーション・マネージャー育成プログラム(履修プログラム)で学んでいる。