社会人として大学院で学んだ経験を持つ方々へのインタビューシリーズ。
第9弾は、大学中退後ボクサーに挑戦後 復学してロースクールを経て弁護士になった土田史さんのお話を伺います。(後編)
(インタビュー実施日:2024年5月30日)
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目次
イソ弁を経て独立!
ーー土田さんはいまご自分の法律事務所を立ち上げていらっしゃいますね。
司法試験に受かって司法修習生になった後、1度どこかの弁護士事務所で勤務されてから今ご自分でやっていらっしゃる感じですか。
土田:そうだね。札幌の弁護士事務所で2年1ヶ月、イソ弁として勤務していたよ。
イソ弁って「居候の弁護士」という意味。
給料をもらいながら弁護士として活動する形だね。
その後札幌第一法律事務所という事務所を自分で作って独立しました。
弁護士を3人持つようになった段階で、今度は別にリーガライト法律事務所っていうのも去年12月に作ったんだ。
札幌第一法律事務所は一般個人の方が対象となっていて、リーガライト法律事務所の方は企業さん、つまり企業法務が主な対象となっています。
「企業法務に取り組んでいます」
ーー企業法務というところはどういうお仕事なんですか。
土田:まあ、一言で言うと、読んで字のごとく企業さんのために役に立つ法的なサービスをするということなんだよね。
例えば契約書の作成や確認などを行っています。
ーーうちの会社の契約書も以前見てくださりましたね! アドバイスを頂いて大変勉強になりました!
土田:それは良かった(笑)
企業法務の場合、契約書にどんな文言を入れるかでなにかトラブルが発生した際に大きく結果が変わってくるんだ。
例えばどこまでがサービスであって、どこからがお金をもらうことになるかとか、どこまで義務があるかとか、そういうのをはっきりしておくのってすごく大事なんだよね。
紛争になったときも反論できるように、またそのときも勝ちやすくするために手厚く契約書を作っておく。
こういう企業法務もやっています。
また、最近だと労働案件もけっこうあるね。
うつ休職への対応など就業規則関係とかね。
会社には就業規則というルールがあるんだけど、長く放置して修正してない会社さんも多いんだよね。
現在だともう合わないルールが放置されることがよくある。
そういうところを直すこともしているね。
あと、会社の売却とかもやっています。
「社会人経験が活きています」
ーーいろんなことをやっていらっしゃるのがすごいですね!
私も経営者の端くれなので、事業が大きくなったらぜひお世話になりたいなと思っています。
ちなみに土田さんは当初から今のように企業法務などをやりたいと思っていらっしゃったんでしょうか?
土田:企業相手に仕事をしたいというのは昔から意識していたんだ。
元々大学生でボクサーになる前に会社を作っていたのね。
ーーそうなんですね!
土田:もう売却しちゃったんだけど、株式会社トゥクトゥクっていうエスニック雑貨を仕入れて販売する会社を作ってたんだよね。
タイとかネパールとか遠くはウズベキスタンから仕入れて税関を通して日本で販売していました。
ーー在学中というのがすごいですね!
土田:そういう経験のなかで、「経営者目線で相談できる人が欲しいな」と当時から思っていたんだよね。
他にも一時期 不動産事業もやっていたからそういう経験も活きているね。
最近も不動産の関係のお話、特に再開発についての相談も聞いているし。
そのなかでのトラブル発生時に相談を受けることもあるね。
ーーこの社会人経験を持って弁護士になったことっていまも役立っていると思いますか?
それとも大学を出てそのまますぐにロースクールに行って弁護士になったほうが良かったと思いますか?
土田:ああ、比較したことがないから大学を出てストレートに進学したらどうだったかっていうのは分からないけども、今は社会人として色々やっていて良かったっていう気持ちしかないかな。
社会人経験やってた時、不動産の営業もやっていたのでお客さんにどう説明したらいいかも考えているね。
法律用語を法律用語をそのまま使って説明してたら、お客さんは分かんないので。
説明してちゃんと理解してもらえるように努めるとかね。やっぱりそれって営業の感覚に近いんだよね。
ーーなるほど。
土田:例えば不動産の相談を聞いたとき、土地計画法上の区分を説明する場合もお客さんにわかるように説明しなきゃいけない。
法律用語だけで説明するとよくわからなくなってしまうしね。
大学を卒業してそのままロースクールに入った人たちを見ていると、横で見てて下手だなって思う時はあるかな。
だからね、色んな弁護士を比較したあと、「やっぱりあなたにお願いしたい」と言ってもらえるように丁寧な説明になるよう気をつけているね。
あと、ちゃんと報告したり、相談したり、あと決断していただくという場面がどうしても出るので、お客さんとのコミュニケーションが重要だね。
ロースクールに入ってよかったこと!
ーーロースクールを入って良かったなってことやあんまり良くなかったなっていうところがあればお願いいたします。
土田:ロースクール生活の良かった点は、その時に人間関係を築けたことがすごく大きいです。
ーー人間関係ですか。
土田:そう、いまだにロースクール時代の人間関係がしっかり生きているんだよね。
困った時にも相談できるような関係。
例えば私は今札幌にいるんだけど、仲間で東京で頑張っているのがいて、「札幌ではこういう案件少ないからちょっと教えてほしい」と言って教えてもらうこともあるし。
逆に僕のほうから仕事をお願いする時もあるし、何か仕事をいただく時や紹介されることもあるし。
また、東京出張に行った時とかに一緒に飲むこともあるね。
やっぱり2年間一緒にきつい勉強を続けてきたっていう時間を共に過ごしたがゆえの関係性。
今思うとこれが財産だったと思うね。
ーーいいですね。
土田:LINEグループとか、結構作っていて、それがそのまま残っている。
「関係性が財産です」
ーー1日12時間も大学で勉強してたらすごく仲良くなりそうですね。
土田:本当にね。
勉強中も仲間がいるとね、やっぱり助かるんだよ。
「ここなんですか」「教えて」みたいな。
得意なやつにすぐ質問できる。
良い関係だったよね。だから関係性が財産です。
ロースクールで良くなかったこと。
ーー逆にロースクールにいってあんまり良くなかったなってということは何でしょうか。
土田:よくなかった点ね。
私が通っていた中央大学のロースクールは学費が結構高くて年間200万円くらいかかっていたね。
奨学金をマックスでもらいながら通っていたんだけど、母親から生活費は支援してもらっていたんだ。
お金をかけさせてしまったところは大きいね。
いまだに借金は返済しているけど、金銭的にはけっこうキツかったね。
まあ、そうはいってもおかげさまで弁護士としても事務所の運営が上手くいっているので良かったんだけど。
受かって良かったというのはあるんだけど、結構大きな博打だったなあと思う。
だからこそ、お客さんに来てもらえるのがありがたいですね。
「お客さん目線の法律事務所を!」
ーー土田さんの今後の展望がありましたら自由にお話ください。
土田:今リーガライト法律事務所っていう法律事務所をやってるわけだけど、今後グループを作っていきたいなと思っています。
今はリーガライト行政書士法人っていうのがあって、僕らが北海道全域の建設とか入管取次とかをやっているんだ。
例えば最近はドローンの飛行許可申請の導入、あるドローン機体の申請の日本第1号を取ったのがうちなんだよね。
(ドローンのイメージ)
ーーそうなんですね! 日本で第1号!
土田:そうそう。
リーガライト行政書士法人はドローン関係業者さんにとってはもうたぶん全国で知られている。
こういう行政書士法人だけでなく、それ以外の社労士法人とか、司法書士法人・税理士法人を作ってお客さんのお役に立てるような法律家の集団を全部作りたいんですよね。
ーーそうなんですね!
土田:で、今ビルも欲しくてリーガライトビルっていうのを作って、そこに全員入るっていうのをやりたいわけ。
ーーメディカルビルの法律版みたいな感じですね。
土田:ああ、そうそう、そういう感じね。
札幌だとこういうところがないからお客さん目線で見たらすごく助かるんだろうなって思うんですよね。
いま、どの法律関係もみんなバラバラなので、例えば相談をすると税理士の言うことと弁護士の言うことが真っ向から違うときもある。
ーー確かにありますね。
土田:税理士としては「こうやったら節税になるよ」って最も節税効果の高い提案とかするわけですよね。
でも弁護士としては相続になった時に揉めやすい類型っていうのが頭にあって「それを回避しよう」という提案をすることもある。
で、この場合選択肢が真逆っていうことが結構あるんですよね。
なので私が気をつけているのが、もう一番最初の法律相談がパッと来た時に10分ぐらい電話で相談を聞いたときに、お客さんの相談に役立ちそうな法律家をぜんぶ集めた状態で相談に乗る形にすること。
「この案件は司法書士と税理士が必要だ」っていうのを聞けば分かるので、最初の相談のときからこういう法律家も呼んで相談に乗れるようにする。
お客さん自身が3つの事務所にアポ取って3回行くのではなく、一度の相談時に3人が相談に乗ります、という状態ですね。
例えば税理士が説明したあと弁護士である私が話し、私と税理士がお客さんを目の前にしながら、「じゃあ、こういう選択肢はどうですか」って選択肢を3つくらいに絞った状態で相談できるようにする。
「紛争リスクを回避するのを優先するなら選択肢1です」「節税効果が一番高いのは選択肢2です」「どれがいいか選んでください」みたいな説明もできるので、結構手厚い情報提供ができる。
こういうのは一つの法律家だけではとてもできないと思うね。
それでリーガライトでは全てできます、っていうの目指します。
ーー土田さんの場合、以前から有言実行で達成されているっていうのは私もずっと以前から拝見してます。
だから絶対成し遂げられるんだなと思います。
札幌でそういう弁護士事務所さんがあると、今後の北海道の発展であるとか、そういったことにもかかわっていくと思います。
なので私も応援させていただければと思います。
ロースクールを目指している社会人へのメッセージ
ーー今、社会人でロースクールを目指している方、特に「進学しようか悩んでいる」という方にアドバイスをお願いします。
土田:本当に主観的なことになってしまいますけども、弁護士って本当にいい職業なんです。
独立して自分の店を構えた時にはどこで仕事するのか、誰と仕事するのか、どんな仕事をするのかを完全に自由に決められるんです。
それにお客さんにもすごく満足してもらえることが多い。
人生のピンチとか、そういう人を救っていける。
ストレスは間違いなくあるんだけれども、魅力的な職業だと思っているのでオススメですね。
ーーありがとうございます!
インタビューを終えて。
インタビュー中にも話していましたが、土田さんは私の大学時代の先輩です。
当時から面倒見よく気さくな方で、一緒にタイに卒業旅行に行った際も楽しい思い出を作ることができました。
決めたことを最後までやりきるという姿勢で、これまでも取り組まれてきましたし、これからも突っ走っていかれるのだろうという思いが伝わってきました。
土田さん、お忙しい中、インタビューにご協力くださりありがとうございます!
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北海道出身。早稲田大学教育学部を中退してプロボクサーに挑戦。怪我による引退後、世界一周の旅や不動産事業を営んだ後 大学へ復学。卒業後は中央大学ロースクールに進学。司法試験合格後、弁護士に。現在、札幌第一法律事務所・リーガライト法律事務所(リーガライト行政書士法人など)の代表を務める。