社会人大学院生インタビュー3 学ぶことで、自分にしかできない医療ビジネスを成し遂げたい。MBAとメディカルサイエンスのダブルマスター・上野和義さん

社会人として大学院で学んだ経験を持つ方々へのインタビューシリーズ
第3弾は、働きながらMBAとメディカルサイエンスという2つの修士号を取得した上野和義さんのお話を伺います。
(インタビュー実施日:2024年4月16日@Zoom)

(上野和義さん 本人提供)

上野和義さん

製薬会社でMRとして営業職を行う傍ら、2017年にグロービス経営大学院大学に進学しMBA(経営管理修士)を取得。転職後、IT系企業で勤務しながら2022年に慶應義塾大学大学院 医学研究科アントレプレナー育成コースに進学し医科学の修士号を取得。現在は3社目となるメガベンチャー企業に勤務し、医療リアルワールドデータに関する営業活動を行う。

ダブルマスターを目指した理由

ーー上野さんはグロービス経営大学院大学と慶應義塾大学大学院の2つの大学院修士課程を出ていらっしゃいますね!

こういうのを俗に「ダブルマスター」(注 マスターとは修士号のこと)といいますが、今日は上野さんがダブルマスターを目指された理由やダブルマスターを取ってみてのご感想を伺っていければと思います。
よろしくお願いします。

上野:よろしくお願いします。

ーー ちなみに、上野さんは今どんなお仕事をなさっているんですか。

上野:今は医療のリアルワールドデータ、医療ビッグデータって言ったらいいのかな、それを大学の先生に販売・提供するという仕事をしています。
そうやって新しい研究に役立てもらっている仕事なんです。

ーーすごいですね!
上野さんは結果的にダブルマスターという形で2つ大学院修士課程を出ていらっしゃるんですけど、最初から2つ通う計画を考えていらっしゃんですか?

上野:あ、その思いは最初はなかったんです。
1社目では製薬会社の営業(MR)をしていたんだけど、単なる営業だけでなくマーケティング要素とか、そういうのを取りいれて仕事がしたいなと思っていました。

そのためグロービスでMBA取得に向けて学ぶことにしました。
実際に通ってみたら思った以上に得られるものが大きかったですね。
知識だけじゃなくて、そこで得られる人脈、つまり人的ネットワークを築けることに気づきました。

人的ネットワークを築くっていう意味でもこれは有意義なんだと思うようになりました。

そうやってグロービスでMBAを取得したときビジネスが円滑に進むになったという実感が大きくありました。

ーーグロービス経営大学院大学を修了してみて、いまはいかがですか。

上野:グロービスとは修了後も繋がりがありますね。
2019年に卒業してから5年以上経っているんですけど、いまも読書会を毎年やっています。年2〜3回、それも私が事務局でやっていますね。

ーーそういった活動もなさっているのがすごいですね!

上野:仕事だけじゃなくて、今後もずっと繋がっていける仲間がグロービスで得られました。
ずっと一緒に仕事も頑張れるし、プライベートも支え合える仲間というこれ以上ない財産をMBAコースで得られました。

グロービス経営大学院大学を選んだわけ

ーー色々MBAが取れる大学院があるなかでグロービス経営大学院大学を選んだ理由はなんですか。

上野:グロービスはね、日本最大のMBAなので「人脈を形成するんだったらグロービスが一番」と聞いたのも理由です。
あと、私は転勤族だったんで、全国にキャンパスがある大学院がベストでした。

グロービス経営大学院大学は東京・大阪・名古屋・福岡の4キャンパスのほか、仙台・横浜・水戸に3つの特設キャンパスを持っています。
通学のほか、オンラインでも学習可能という特徴があります。(出典:グロービス経営大学院キャンパス一覧

ーーグロービスで知識や人脈を得られたのが良かったこととして先ほど伺いましたが、反対に大変だったところはどこでしょうか。

上野:いや、もう時間が取れないところですね。
朝早く、みんなが寝てる間に勉強もしてますし、夜も土日も勉強していましたね。

ーーグロービスと慶應義塾大学大学院、どちらのほうが大変でしたか。

上野:グロービスの方が本当に大変でした。
イメージでは慶應義塾大学のほうが大変そうなイメージですけど、仕事をしながら勉強するのが自分にとって初めての経験だったところが大きいですね。
忙しく働きながら学ぶのは大変でした。
1社目は製薬会社でMRをしていたので、忙しい中で勉強するのは辛かったですね。

ーー慶應義塾大学での学習の方が楽だったっていうのは、ノウハウが分かったというか、働きながら学ぶという習慣がについたとかそういうのが多いのでしょうか。

上野:そうそう。グロービスを出る頃には働きながら学ぶ習慣がついていました。
なので勉強するストレスはなくなっていたので、だから少し楽に感じたと言うか。

慶應義塾大学院で2つ目の修士号!

ーー慶應義塾大学大学院を学んでみていかがでしたでしょうか。

上野:医療の分野って専門性が高いので、やっぱり営業以外のキャリアを積みたいとか、人脈を作りたいとか、そういった意味で本当に良い学びの場でしたね。

ーー すごいですね!
上野さんは2019年卒業をしたあとそのくらいのタイミングで「今度は慶應義塾大学大学院を受けようと思う」とお話を聞かせていただきました。
その時に「もうそんなに学ばなくてもいいんじゃないですか」と言った記憶があります。

上野:そうだったね(笑)。

ーー大学院でMBAを取った後、そこでもう一度大学院という決断をなさったのはなぜですか。

上野:医療っていうのは奥が深いな、と仕事をしながら実感していた点が大きいです。
MBAって総合的スキルというか、総合的ビジネススキルを高めるには有益だと思うんだけど、医療ってのはやっぱりそれよりも深い知識が求められます。

あと、当時勤めていたIT企業で新しいビジネスを立ち上げたかったのも理由です。
ちょうどその時期、慶應義塾大学大学院の医学研究科ではアントレプレナー育成コースっていうのがありました。

もう今年で終わっちゃうだけど、そこが募集していたんです。
自分にとって医療業界のことも学べるし、MBAの知識も活かせるかなと思って出願しました。

慶應義塾大学大学院 医学研究科アントレプレナー育成コースは2023年度入試で新規募集を終了しています。

なお、現在は専門のコースではなく修士課程の学生は誰でもアントレプレナー育成コースに関連した科目を履修できるようになっているようです。

ーー そうなんですね。はじめから慶應が第1志望みたいな感じだったんですか。

上野:いや、そんなことはなかったです。
慶應のほか順天堂大学大学院 医学研究科の公衆衛生のコースも面白そうって思って受けてました。
どちらか受かれば御の字かなと思ったら両方受かりました(笑)。

短期的なジョブチェンジを考えたら順天堂大学大学院が良かったんですが、長期的な視点で見ると慶應の方が良いと判断しました。
そのため慶應に決めました。

いま大学としても産官学連携などが進められていますし、慶應ではビジネスを立ち上げたいという人を応援してくれる制度もあります。
起業を生み出すためのビジネスコンテストもありますね。
学びながら自分のビジネスを提案できる場所が慶應にはありました。

ーーちなみに慶應義塾大学のキャンパスはどちらでしたか?

上野:信濃町キャンパスですね。家から近かったのも良かったですね。

ーー信濃町キャンパスといえば医学部ですよね。

上野:そう、慶應義塾大学の医学部があるところです。
でも医学部以外の人も学べるようにカリキュラムが工夫されていますね。

私の場合は特に医療でビジネスを勉強したかったので医学部の知識とビジネスの知識を身につけられるところが特徴的なコースでした

(慶應義塾大学信濃町キャンパス/慶應義塾大学病院)

ダブルマスターになって得られたもの

ーーダブルマスターになったからこそ見えてきたものや得られたものはありますか。

上野:慶應は今年の3月に修了したばかりだから明確に答えれるわけじゃないけど、今年の4月に職場で人事異動があったんです。
医科学の修士号を取ったからかわかんないんだけど、大学の研究者に研究提案する仕事に変わりました。

今までは製薬会社に医療データの利活用を提案していたんだけど、医療系の大学院を卒業したことがこの人事異動に恐らく影響していると思います。

他にもダブルマスターになってから仕事の選択肢が増えたところもあります。

やっぱり、学びというのは続けていかなきゃ知識がどんどん陳腐していってしまうので、最新の知識を得られるよう今後も学びを継続しなきゃいけないんだなって思っています。特に医療に関する知識は。

ほかにも、例えば仕事しているときってその表面的な内容しか分かっていないこともあるんだけど、自分に知識が足りていないなということに気付けるっていうのは、やっぱりこの大学院で学んだおかげかなと思っています。

本当にまだまだ勉強しなきゃいけないことが多いんだけど。

ーーどこまでも学びを大事にしている姿勢がすごいですね…!

ダブルマスターでキャリアの差別化


ーーところで、ダブルマスターの人って海外だとわりと多いと思うんですが、ダブルマスターを持っている人、日本で上野さん以外で会ったことってありますか?

上野:ああ、意外とないかも(笑)。
修士課程を出ている人、もちろん博士後期課程に行っている人も正直そんなにいるわけじゃないけど、ダブルマスターを持っている人って確かにそんなに多いと感じないよね。

そういった意味で自分のキャリアの差別化ができるかも知れない、と思っています。

ーー大学院に入ったことで、周りの反応が変わったというところはありますか?

上野:家族がすごく喜んでくれました。
働きながら学ぶっていうことがいいですね。

周りの同僚も、飲み会の時の話題になることがあるから「なんかいいな」と思ってくれているようです。

同僚から相談された際も、2つの大学院に行っている関係上「学びたい」「チャレンジしたい」っていう人に自分からアドバイスを与えることが2つもあるのもありがたいです。

大学院は転職にも有利!

ーー上野さんは何度か転職をなさってますけれど、転職活動の際に大学院進学が有利になったというような実感はありますか?

上野:自分はあると思っています。
元々1社目が製薬会社で営業の仕事をしていたんだけど、2社目はIT系企業に事業企画の仕事で転職しました。
このとき、おそらくMBAコースで学んでいたことが評価されたと感じています。

いま勤務している3社目のメガベンチャー企業は大学院卒というバックグラウンドを持ってる人が活躍できそうな求人でした。

自分が当時2つ目の大学院(慶應義塾大学大学院)に通っていたので「チャレンジできるんじゃないかな」と思って応募したら、そういったところも評価してもらえて内定になったと思います。

入社してみたら、結構社会人になっても大学院に通っている人が多かった印象があります。
向上心がある人がやっぱり多い環境だったんで、そういう意味ではマッチしたのかもしれません。

「行きたいと思ったタイミングで行くべき!」

ーー働きながら大学院で学んでいた経験が転職にも直結したんですね!
これから何か大学に行きたいなっていう人に対して何かアドバイスをお願いします。

上野:アドバイスとしては「行きたいと思ったタイミングで行くべき」ということです。

なぜかっていうと自分もそうだけど、家族がいると自分のスキルアップの為にかける時間が限られてしまうからです。
なかなか時間の捻出が難しいと思っているので、進学ができるタイミングですぐ行った方がいいですね。

ーーちなみに上野さんのご家族について伺えますか?

上野:いま妻と娘が2人の4人家族です。
慶應義塾大学院に入った時は娘1人だけだったんだけど、大学院を修了するまでに2人目も生まれて4人になりました。

このタイミングで進学できたのは奥さんの理解があったから行けたと思っています。
でも「もうこれ以上は行かないで」とは言われています(笑)

ーーなるほど、そうだったんですね。

上野:進学というのは家族の理解と協力がないと絶対できないので。

「日曜日は家族との時間と決めていました」

ーー家族などのプライベートと仕事の両立を考えたとき、大学院進学をする際大変だったところはありますか?

上野:スケジュール管理ですね。
これは本当にそう。

だから自分の場合はね、日曜日は絶対家族の時間と決めていました。
それ以外の時間、例えば家族が寝ている時間に研究。土曜日は「半日は大学院の研究の時間に使いたい」って伝えて、もう半日は家族との時間にしました。

(イメージ画像)

ーー了解を得ながらというのがいいですね。

上野:そうじゃないと進学ってできないから。

オンラインとリアル、どちらがいいか?

ーー上野さんが修了なさったグロービス経営大学院大学はオンライン(通信教育)でもキャンパスでも受けることができます。
また慶應義塾大学大学院の場合は直接現地まで行かなきゃいけないというところがあります。

なので上野さんはオンラインの良さとリアルの良さ、両方を実感している人だと思うんですけど、トータルではどっちの方がいいと思いますか。

上野:オンラインは家族との時間やプライベートの時間を捻出しやすいというのが一番の良さです。
ただフェース・トゥー・フェースでディスカッションできるのも直接キャンパスに通う良さですね。

なので、自分はグロービスの方はオンラインでも行けるけどリアルで学んでいました。

慶應のほうはリアルとオンラインのハイブリットだったんです。
コロナ禍の影響で、オンライン授業の名残もちょっと残ってて、それでリアルでもオンラインでも学習できるいいタイミングでした。

ーー上野さんの今後の展望について伺います。上野さんがいま目指されているものはありますか?

上野:自分が得意としている仕事の範囲を広げていきたいですね。キャリアの幅を広げていきたいなと思っています。

自分は大学院に行ってからいろんなお話をいただくようになりました。
「一緒に起業しませんか」っていうような医療系のベンチャーの話も伺うことがあります。
そういう副業の話も来ています。

学んだことをもっと活かしていくために仕事で色んなことを経験していきたいなって思っています。

ーー博士後期課程の進学は考えていらっしゃいますか?

上野:家族に怒られちゃうんですよ(笑)。自分のキャリアを広げつつも、家族との時間も大事にしていきたいと思っています。
行ったらいいんじゃないかと考えてはいるんだけどね。
でも行くと4年間そればっかりになってしまうので。

自分は研究者になりたいわけじゃないからビジネスマンとして挑戦しようと思っています。
なので、いまは学んできたことを社会に還元する番だと思っています。

ーーいいですね! 大学院に進学なさったため、勉強を続ける習慣が身についていらっしゃると思うんですけど、いま何か学ばれていることはありますか。

上野:今まさに全国の大学の研究者に医療のリアルワールドデータを提供する立場になったので、有名な教授・研究者の発表した論文を読むようにしています。というか会社から読まされています(笑)。

あとは大学院で学んだことを仕事でも活かせるようようにアウトプットに取り組んでいるところですね。

ーー上野さんのお話、とても面白いです。最後に何かありましたら自由にお話ください。

上野:進路に悩んだ時にはフジケン先生のところに行き、アドバイスをもらうといいです。
迷ったらフジケン先生に相談してみてください(笑)。

ーーありがたいお言葉、嬉しいです…!

インタビューを終えて

気さくにお答えいただきた上野さん。
気づかれたかも知れませんが、上野さんと私は古くからのつながりです。

何を隠そう、私の高校の1コ上の先輩なんです(笑)。
しかも、高校1年生のとき、寮で同じ部屋でした。

最初にお会いしてからもう20年以上経っていることになります。

高校生の時から上野さんは医療系の仕事を目指していらっしゃったのを思い出します。

高校を出たあと大学の商学部に進学されたのを意外に感じていましたが、インタビューのなかでそのあとMR→医療情報サービス提供の仕事に就かれたことを伺い、初心貫徹なさっている様子が印象的でした。

上野さんはMBAとメディカルサイエンスのダブルマスターです。
同様に、私もいま2つ目の修士号を目指し学習しているところです。

日本ではまだ少ないダブルマスターの先輩としても、今後色々教わっていきたいと思っています…!

上野さん、貴重な機会をありがとうございます!

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2件のコメント

同世代で2つも大学院を卒業した人がいることに驚きです!
私も学びの意欲を持ち続けたいです。

上野さん、本当にすごいですよね〜!コメントありがとうございます!

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