社会人として大学院で学んだ経験を持つ方々へのインタビューシリーズ。
第5弾は、スポーツにおけるインクルーシブ教育に長年携わり、本年3月に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了した塩家吹雪(しおや・ふぶき)さんのお話を伺います。(後編)
(インタビュー実施日:2024年4月19日 Zoom)
前編はこちら↓
大学院の良かった点・良くなかった点
ーー社会人で早稲田のスポーツ科学研究科に行くことや社会人として大学院に行くということについて、良かった点と良くなかった点を伺えますでしょうか?
(早稲田大学早稲田キャンパス)
塩家:良くなかったことは僕自身あまりないんです。
唯一言うとすると、しっかりしないと時間の取り方が難しいということですね。
逆に良かったことは先ほどにもお話ししましたけども、仲間づくりができたことですね。
今までだと関わり合えないような立場の方々と関わり合うことができました。
1年制修士課程だと1年間しか時間がないので結構大変だ思われるんですけど、1年だからこそ無駄な時間をそぎ落としてくれている感じがします。
淡々と授業が進むのではなく、時間をすごく有意義に使えた感じを持っています。
だから逆にもっと学びたいっていうふうに思っている人も多い中であっという間に1年が終わってしまいました。
その点、少し残念だったなという感じですね。
ーー確かに1年間ですと目まぐるしいので悩んでいる暇もないところがあったと思います。
ちょうど去年の年末に塩家さんから連絡が来て「いまアンケート集計をしている」ということを伺いましたね。
年末年始返上でアンケートの集計をして分析もなさり、年明けには修士論文も提出されたことを考えますと、本当に目まぐるしいですよね。
インクルーシブなスポーツクラブを47都道府県に広めたい!
ーーそれでは塩家さんの今後の展望や目標・夢について伺えますでしょうか?
塩家:ちょっと確定的なことではないんですけど、今回修士論文を作成するにあたってご協力いただいた先生方から「是非いっしょに研究していきたい」というお話もいただいています。
内容はまだ言えないのですが、ちょうどいまある学会での学会発表の準備もしています。
研究においてはアンケートの中身なんかももうちょっと深堀りをして、障がい者と健常者がどういう形で関わると一番スムーズにスポーツを通じた共生社会の実現ができるのかを研究したいと思っています。
日本は分離教育(注 障がい者と健常者を分けて教育すること)が一般的なので、障がい者と健常者がどういう接点でつながっていくのが本来の社会のあり方としてふさわしいのかをさらに研究していきたいと思っています。
あとはずっと私が話してきたことですけど、いま私がやっているのクラブに来るのは千葉県・東京都・神奈川のエリアの子どもたちだけなんですよね。
うちのクラブのように、障がいを持っている子どももそうじゃない子どもも一緒に活動できるスクールを最終的には全国47都道府県全部に広げていきたいと思っています。
障がいを持っていてもこんなことができるんだなとか、こういうことができるようになるんだなという経験をどのエリアにいてもできるようにしたいと考えています。
ーーいいですね〜! これからは指導者育成も行っていかれる感じでしょうか?
塩家:今、いろんなところに委託で仕事をさせていただいているんですけど、障がいを持っている人たちに対してのどんな指導をすればいいのか分かっていない人が多くいるのを感じています。
なので今後指導者育成が必要ですね。
さらには障がい者・健常者一緒に取り組むクラブをつくっていくためのノウハウですよね。こういったところをしっかり落とし込む必要があると感じています。
(本人提供)
ーーフランチャイズ展開もありだと思います。
塩家:その辺も含めて色々考えていきたいなと考えています。
あともう1点の目標はインクルーシブ教育に関する概念を整理することです。
いま議論をしてもインクルーシブ教育とかダイバーシティーやインクルージョンなどいろいろ言葉がごちゃごちゃしてるんです。
なのでどういう言葉にすると一緒に取り組みやすくなるのか考えていきたいと思っています。
場合によっては新しい団体を作るなど、新たな形で未来に向けて何か活動の幅を広げていきたいなと思っています。
今後自分自身さらにレベルアップしながら社会に貢献できる活動を継続してやっていきたいと思います。
ーー素晴らしいですね!
ご自分がずっとやってきたフィールドがあって、それを大学院で磨き上げた上で、今度はその内容をこれから還元する戦いが始まるんですね!
塩家さんは将来的に博士後期課程への進学や大学教員になる思いってありますか?
塩家:博士後期課程進学は時間的にちょっと厳しいかなと思いますけど、同期がもう専門学校や大学の非常勤講師として勤務する予定の人もいるので私もそれを目指したいですね。
専門学校や大学で自分のやってきたことを学生に発信するような仕事も、今後は継続してやっていきたいと思います。
そういうお話があれば、ぜひ進んでやらせていただきたいと思っています。
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科を目指す方へのメッセージ
ーー今回、塩家さんの思いが全国に広がっていくというのが見えるようでとても楽しい収録でした。
ありがとうございます。
最後に社会人大学院を目指している方、特に早稲田のスポーツ科学研究科修士課程進学を目指している方にアドバイスやメッセージをお願いします。
塩家:大学院は大学の学部と違い、自分がやってきたことをさらに広げるというか、視野を広げるという意味で、非常に重要な時間になるのではないかと思います。
論文が大変とか、授業が大変とかというお話を聞くと思うんですけど、それ以上に終わった後の達成感とか満足感とか、さらには終わった後の視野の広がりが明らかにこれまでの自分とは全く違ってきます。
なので大学院進学をどうしようかなって思った人は迷うよりも行動あるのみですね。
ぜひそういう場に自分の足を置き、物事を俯瞰する視野を広げながら、学びの幅を広げてみてください。
その意味で大学院はすごくいいところではないかなと思います。
私は早稲田大学大学院のスポーツ科学研究科という本当に素晴らしい大学院で学ぶことができました。
先生方の指導も素晴らしいです。
早稲田大学ってネームバリューだけなのかなって思う部分が最初はありましたけれども、中身はもう全然違っていました。
ネームバリュー通り、本当に深いというか、卒業して初めて早稲田のすごさというものが身に染みて分かるようになりました。
ぜひ早稲田のスポーツ科学研究科に入学を検討している方につきましては、卒業した後、本当にものすごくレベルアップしてスポーツをさまざまな視点から客観的に見る能力を備えられると思いますので、入学していただけたらなと思います。
決して僕は早稲田の営業担当ではないんですけどね(笑)
ーー早稲田の職員の人が泣いて喜ぶような素晴らしいインタビュー、ありがとうございます。
私も早稲田出身ですが、早稲田の良さって出てからじわじわと味が出てくるところがありますよね。
塩家さんと同じく稲門会(早稲田のOB・OG組織)の一員であることを私もうれしく思っています。
今回、ありがとうございます!
インタビューを終えて
塩家さんとのご縁はちょうど1年前、塩家さんからメッセージをもらったのがきっかけです。
「早稲田の大学院受験の際、フジモトのカクロン(私のYouTubeチャンネル)を観て受験勉強しました」
こういうメッセージを頂いたことが縁でいろいろお話を伺うようになりました。
東京でも札幌でもお会いし、これまでも塩家さんと話す機会が多くあり、今回のインタビューではついつい私が喋りすぎてしまったことを反省しています。
ですが、それくらい塩家さんのことを私が話したくなるほど塩家さんの人柄や活動が魅力である証拠でもあると思っています。
私は高校教員時代、発達障がいを持つ生徒も多く通う高校で勤務していました。
その経験もあるからこそ、インクルーシブ教育の広まりにとても関心があります。
塩家さんの活動で全国にインクルーシブ教育が浸透するよう、私も応援しています!
塩家さん、インタビューへのご協力ありがとうございます!
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千葉において障がいのあるなしにかかわらず皆がともにスポーツに取り組むNPO法人シオヤレクリエーションクラブを理事長として運営。パラスポーツに20年以上関わり、世界陸上やパラリンピックに伴走者として選手の入賞に貢献するほか、日本代表チームの監督・コーチとしても活躍。忙しい時間をこじ開け2023年に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程1年制コースに進学し、2024年3月に修了している。