社会人大学院生インタビュー8 北大大学院という山を登る!北海道大学公共政策大学院・阿部大祐さん下

社会人として大学院で学んだ経験を持つ方々へのインタビューシリーズ
第8弾は、北海道庁からの派遣で北海道大学公共政策大学院(通称HOPS)に通われている阿部大祐(あべ・だいすけ)さんのお話を伺います。

山に憧れ続け、いまも登山を続けられている首尾一貫な姿勢が伝わるインタビュー。3回に分かってお伝えします(下)。
(インタビュー実施日:2024年5月10日)

阿部大祐さん

旭川出身。高校時代から登山に目覚め、明治大学在学中は国内外の山に挑み続ける。北海道庁入庁後は観光局など多方面で勤務。外務省出向でモスクワの日本大使館でも勤務。2024年度からは道庁の「企業等・大学院派遣研修」の一環で北海道大学公共政策大学院に進学。

☆3回に渡るインタビューシリーズ(上中下)。上・中はこちら↓

☆動画でもお届けしています。

大学院に入って良かったこと!

ーー社会人として北大大学院に入ってみて良かったところ・あまり良くなかったところを伺えますか?

阿部:良かったところは、自分が希望して大学院に入れたところです。

当初の目標が叶っているという充実感が充ち満ちています。

実際に北大の公共政策大学院に入ってみると、若い学生さんや社会人も外国人もいて色んな人たちと一緒に強できるのが刺激的ですね。

大学の頃と大きく違うのは、自分が本当に希望して入っているということです。

おまけに、私は研究テーマ的にこれまでの業務経験とは違う道を行こうとしています。

自分で希望して、今ここでしかできないことをやろうとしているので、勉強に対しての意欲が強く出ているように思います。

ーーいいですね〜! 何か印象に残っている授業はございますか?

阿部:思想史に関する授業ですね。

先生はとても穏やかな方なんですが、どんどん静かに課題が積まれていくんです(笑)

指定された文献を1週間の間で読んで、授業中に自分なりの意見を発表し、ディスカッションをするっていう形式なんです。

週替わりで発表者が変わりつつディスカッションになりますので、毎回結構な緊張感を持ってやっています。

授業は大変なんですけど、非常に鍛えられている感じがします。

ーー凄いですね!

阿部:今の私の研究テーマと全く関係ないんですけど、ちょっとやってみたいなって思ってやっています。
とても充実しています。

ーーもともと考古学にご興味をお持ちでしたし、大学は文学部の史学地理学科にいっしゃったので授業の内容にも近いかもしれませんね。

「道庁に戻った後のことが不安です。どこに配属になるか…」

ーー逆に大学院に入ってあまり良くなかったところはありますか?

阿部:う〜ん、自分で希望して入っているので、今のところはないですね。

ただ、この1年間が終わった後、再び道庁の職場に戻るので、その後どうなるかが不安です。

道庁では3年で配属が変わるのですが、ちょうど私が今年3年目にあたっているので、来年どこに配属になるのか気になっています。

その時、可能なら私の研究テーマの内容を酌み取ってもらい、職場で活かせるようなところに配属されるとありがたいなと思っています。

ーー公務員の方の難しいのはその点ですね。

阿部:こればっかりは自分の希望を取りあってもらえるわけではないんです。
他の人との兼ね合いもありますから。


「大学時代に比べ、IT化が進んでいたのに驚きました」


ーーなるほど〜、よく分かりました!
ただ、この1年、すごく楽しみですね!

大学院での生活をやってみて、以前の大学時代と比べて何かイメージが変わったところなどはありますか?

阿部:環境面で言うとIT化が非常に進んでいますね。

事前に配布される資料も授業中の資料も全てWeb上で共有されていますし。

(北海道大学の学習プラットフォームELMSの画面)

授業でノートを取る時も、学生さんを見ていると手書きではなくパソコンに書いているんです。
ここは最初に見てびっくりした点ですね。

他にも提出物の提出や事前の課題ディスカッションの元となるようなコメント共有も全部パソコンで行うようになっています。

ーー大学時代はよくあった休講も、大学院では減っていますね。

阿部:休講、少ないですよね。
先生方の方でもきちんと所定の授業を行うことが求められている時代なんだと思います。


「休講が残念だと感じるようになりました」

ーー社会人になってから大学院に入ると、勉強への姿勢で変わったところはありますか?

阿部:自分から望んでここに入ってますんで、勉強への意欲が高くなっていますね。

さっき休講の話が出ましたけれども、大学時代はたくさん休講がありましたが大学院では今まで2回だけ。

大学時代、休講だと嬉しく感じたんですが、大学院に入ってからは休講と聞くと「えー、そうなの…。授業を聞きたかったな。授業を受けたかったな」と感じるようになっていました。

我ながら自分の変化に驚きます。

だからその辺りのモチベーションのあり方が全然違うのを実感します。

学生の頃だったら、指定図書と言われるものもなるべく買わないようにしている節がありましたけど、いまは積極的に買って読んでちゃんと課題を提出するようになりました。

私、大学時代は文学部だったんですが、周りから「何学部なんですか」と聞かれると「山岳部です」って答えていました(笑)

なので、学生時代は勉強をなるべくやらないっていう方向だったんですけど、今はなるべく勉強を重視していますね。

大学院を目指している方へのアドバイス

ーー今まさに大学院を目指している社会人の方、あるいは道庁の人で阿部さんのように北大大学院に入りたいという方に何かアドバイスはございますでしょうか?

阿部:どの人も進学するためにきっかけがあると思うんですね。

日頃業務をやっているけれども、何かもっと知識が欲しいなと思ったり、あるいは全然違うことをやるためのステップにしたいと考えたり。

そういったきっかけがあったら、大学院進学というのを選択肢の一つとして考えておいてもいいのかなっていうふうに思います。

あと、私20年ぐらい働いていますけれども、そこで一旦区切って大学院で新しい知識を入れるのも気分転換の意味でいいかもしれないですね。

こういう学び直す観点も大事だと思います。

「道庁復職後に活かせるリサーチペーパーに!」

ーーありがとうございます。
阿部さんの今後の展望などを自由にお話しください。

阿部:私がテーマに定めている登山道整備に関するリサーチペーパーをしっかりまとめあげ、かつそれが復職して道庁に戻った時に活かせるような内容にまとめていきたいと思っています。

また、そういった該当部署に行けるように、あらかじめ私のやっていることを職場に説明して理解してもらうのも必要かと思います。

ーーちなみに阿部さんはけっこう普段から運動されているんですか?

阿部:天気がいい日は家から大学院までジョギングして通っています。
通学以外にも週に3回ぐらいはボルダリングをしています。

(本人提供)

ーーボルダリングしているんですか!

阿部:はい、ボルダリング、つまり岩登りです。
日頃から体を鍛え、登山道整備の本番シーズンになる7月以降に備えています

「ヨーロッパのアルプス登山が一番印象に残っています」

ーー阿部さんの登山経験をさらに伺えますでしょうか?
一番印象に残っている登山はなんですか?

阿部:やっぱり、19歳の時に行ったヨーロッパのアルプス登山ですね。
8月・9月の時期に行きました。

夏とはいえ、アルプスは4000メートル級なので上の方には雪が普通にあるんですよね。

積雪もあるので結局は日本の冬山と同じような感じになります。

(登山写真 本人提供)

ーー4000メートル級ですと何日ぐらいかけて登るんですか?

阿部:モンブランは1泊しましたね。

普段は麓にあるキャンプ場でテントを張って暮らしてるんですけども、とても天気がいいなと思ったときに山に登るという生活を1カ月間ぐらいやっていました。


ーー本当に山がお好きなんだなって伝わってきます。遭難した経験ってありますか?

阿部:何回かありますね。
遭難の種類も色々ありますけど、道迷いというのがありますね。

ほかにも落下というか滑落というのもあります。
下手をすると谷底まで落ちてしまうんです。

その時はたまたまピッケルが刺さってなんとか止まることができました。
何か弾みがあれば谷底まで落ちてしまったなという経験があります。

ーーそれで死ぬこともあると。

阿部:そうかなと思います。

登山と観光を組み合わせた研究テーマ。

ーー今回のインタビューを通して、阿部さんが本当に山を愛していらっしゃるのだなというのが伝わってきました。

好きが高じて研究テーマにもなっていますし、やがては研究テーマを仕事でもいかして活きたいという思いが伝わってきました。

モスクワでの大使館勤務やサハリンの支局での勤務など大変輝かしい経歴をお持ちの方なので、今回の山男経験の話、いままでのイメージとは逆で新鮮に感じました。

阿部:私の仕事の話に戻ると、観光局での勤務も経験していたんです。

観光局の立場から北海道のいろんな観光コンテンツを見てきたんですけど、やっぱり北海道に観光に来る方はこの大自然を目的に来る方が多いんですね。


登山者の方も、北海道には国立公園が何個もあるから来ているところがあります。

なので自分の趣味である登山と観光に関するテーマをかけあわせて何かのテーマにならないかなって思ったのが研究テーマを立てたきっかけなんですね。

大学院の場合、入学時に研究計画書などの作成が求められます。
阿部さんのように1年制で北大公共政策大学院に入る場合は10,000文字の研究計画書の作成が求められます
そのため、入学前から明確な研究計画を立てておくことが求められます。

 

ーー趣味と仕事、そして研究の3つがミックスできるテーマを立てていらっしゃるんですね!

阿部:はい、自分の個人的な関心と仕事を掛けて、今のテーマを考えました。

ーー大学院修了という1年間かけての登山も無事達成なさり、胸を張って卒業していただければと思います!

インタビューへのご協力、ありがとうございます!

インタビューを終えて

インタビューを通して、登山にかける阿部さんの熱意が伝わってきました。
私も山登りを再びやってみたい思いになりました(笑)

登山には事前の準備のほか、無理をせず淡々と登り続ける姿勢と諦めない執念が必要です。
この姿勢は登山だけでなく、大学院での研究にも通じる姿勢であると感じています。

研究計画を立て、地道に調査を続け、最終的にリサーチペーパーにまとめる。
並行しつつ、大学院の授業の予復習とレポート課題を提出する。

長丁場のプロジェクトでもあるのです。

なお、以前〈登山は登って終わりではなく、降りてくるまでが登山〉と聞いたことがあります。

大学院という山を登り切り、最終的には学んだ内容を元の職場に持ち帰るのが阿部さんの目指されていることだと思います。

ここからの一年の学習も応援させていただきます!

インタビュー、ありがとうございます!

余談ですが、大学院の研究テーマで悩んだ際は阿部さんのよう仕事・趣味・これからのキャリアにつながるテーマを選定することをオススメしています。
趣味と実益両方につながるので積極的に研究に取り組めるはずですよ!

☆これまでのインタビューはこちら↓


☆メルマガ登録後1通目が届かない場合はこちらをご確認ください。
メールが届かない場合

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください