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「これを知らないと大きな差がつけられてしまいます」を聞いていると疲れませんか?
「これを知らないと周囲と大きな差がつきます」というフレーズ。
YouTubeやSNSの広告で時折目にすることはありませんか?
例えば
「●●を知らないと世の中についていけません」
「知っているか知らないかで大きな差がつきます」
「知らないと置いていかれます」
というようなフレーズです。
こうしたキャッチコピーを目にすると、「知らないのはまずい」と焦ってしまうことはないでしょうか?

(私はこういうフレーズを見聞きすると「またか」と思い疲れてしまいます…)
こういう表現がついつい気になるのは、「他人の目」をもとに自分の生き方やキャリアを考えていることが理由かもしれません。
今回は「他人」「周囲」と比べるのではなく、「自分自身」と比べるキャリア形成の大事さをお伝えします!
「差がつく」という煽りに対する違和感
「●●を知らないと大きく差がつけられてしまいます」
こういうフレーズは広告戦略上きわめて有効だとされています。
それは「競争を煽る」ことで視聴者の不安を刺激し、購買や行動を促そうとするマーケティング手法だからです。
人間は「他の人と同じ自分でいたい」「他の人と違う自分でいたい」という正反対の欲求をもっています。
他の人と同じような自分でありたい反面、他の人と違う個性的な自分でもありたい。
そういう極めて面倒くさい存在が人間なのです。
例えば高校のクラスですと少しワルぶって「こんな学校なんていられるか」と反発(=他の人と違う個性的な自分でありたい)しながらもそのまま皆と一緒に卒業したい(=他の人と同じような自分でありたい)という人がいます。
ある程度の範囲内において他の人と同じような自分でありたい反面、ある程度の範囲内においては他の人と違う自分でありたいという思いが込められているのです。
「〇〇を知らないと大きく差がつけられます」というフレーズが巧妙なのは「他の人と同じ自分でいたい」「他の人と違う自分でいたい」という両方の方向性を含んでいることです。
つまり、「◯◯を知らないと他の人よりも遅れてしまう」点では「他の人と同じ自分でいたい」欲求と関わるのと同時に、逆に「◯◯を知ることで他の人に大きな差がつけられる」点では「他の人と違う自分でいたい」欲求にも関わってくるからです。
どちらにも共通しているのは自分自身ではなくあくまで他人や周囲と比較をしたうえで判断をしているということです。
もちろん、日常生活において他人や周囲と比較するのは自由です。
ですが、今後の自分の生き方やキャリアを考える際に他人や周囲と比較している状態だと「疲れ」てしまいます。

キャリア形成において重要なのは、「他人と比較すること」ではなく、「自分にとって最適な選択をすること」です。
誰かと比較して優劣を意識しすぎると、本来自分が目指すべきキャリアの方向性を見失いかねないからです。
他人や周囲と比較していると、お金も時間も無限に必要となります。

たとえば私は「ひとり社長」フリーランスとして日々仕事をしていますけど、周囲の経営者を見ているといい車に乗っていたりいいワインを飲んでいたりと「上」を見始めたらキリがありません。
周囲に勝ちたいと思い高級車を手に入れても、それ以上の高級車を持っている人はゴマンといます。
なので他人や周囲と比較していてもなんにもならないのです。

経営者勉強や経営者セミナーもあれこれ出過ぎるのは考えものです。
それは私のような「ひとり社長」の場合、たくさん従業員を抱えていたり全国に支店・支社を持っていたりする経営者とは見えている世界も考え方もまったく違うのであまり役に立たないからです。
むしろ人によってはこういう場に出るほど自分が惨めになって帰りたくなるケースもあることでしょう。
比較をしていてもなんにもならないのです。
キャリア形成は他人との比較ではなく、自己の成長に注目すべき
キャリアアップを考える際、「他人や周囲と比べてどうか」を基準にすると、本質を見誤ることがあります。
そうではなく、本当に重要なのは、「自分にとって何が最善か」を明確にすることです。
そのためには次の3点を意識することが重要になります。
(1)キャリアアンカーを活用する
キャリア形成において有効とされるツールにキャリアアンカーがあります。
キャリアアンカーとは、エドガー・シャインが提唱した概念で、「自分のキャリア形成の土台となる価値観」を明確にするためのツールです。
エドガー・シャインは次の8つのキャリア・アンカーを提示しました。
①技術・職能志向
②管理職志向
③自律・独立志向
④安定・保障志向
⑤起業家的創造性志向
⑥奉仕・社会貢献志向
⑦挑戦志向
⑧生活様式志向
例えば、「安定した環境で働きたい」「専門性を極めたい」「自由な働き方をしたい」など、人によってキャリアの土台となる考え方は異なります。
他人と比べるのではなく、まずは自分のキャリアアンカーを理解し自分はどういう価値観で仕事や生き方を選んでいるかを知ることが重要です。
☆「キャリアアンカー」の詳細はこちらにまとめていますので一度ご覧ください。
(2)キャリアレインボーで長期的な視点を持つ
続いて役立つツールは「キャリアレインボー」です。
キャリアレインボーは、ドナルド・E・スーパーが提唱したキャリア概念です。
これは人生の各段階においてどのような役割が重視されるかを示したものです。
人生段階と役割を虹(レインボー)のようにまとめていることから「キャリアレインボー」と呼んでいます。

例えばあなたがいま40歳で結婚している場合は「家庭人」「配偶者」「職業人」としての役割が日々求められています。
休日には趣味で映画を見に行く(=余暇を楽しむ人)ことや実家の両親と話す(=子ども)という役割も演じることになります。
人生の段階に応じて、どの役割が中心的かは大きく変わってきます。
それにより、どの役割を重視すべきか考えながら今後のキャリア形成が可能となるのです。
☆キャリアレインボーの詳細はこちらもお読みください。
(3)10年後の自分を考える!
キャリアは短期的な成功や失敗で決まるものではなく、長期的な視点で形成されるものです。
「〇〇を知らないと大きな差がつく」という発想は短期的な発想でしかありません。
大事なのは短期的視点ではなく長期的な視点で自分のキャリアを考えていくこと。
ポイントは今日から10年後の日付を紙に書き、「そのときどのようになっていたいか」を細かくイメージしてみることです。
例えば今日が2025年3月6日(木)とすると、10年後は2035年3月6日(火)となります。
その時の自分の年齢や家族構成・家族の年齢などを一度書いてみます。
そのうえで、そのときの理想の生活をイメージしていきましょう。

どこに住んでいるか、どういう場所でランチを食べているか、どんな仕事をしているか、どういう役割を担っているかをイメージしていくのです。
ほかにも、どんなスキルを身についていたいか、どんな人と関わっていたいかも考えてみるといいでしょう。
別に、今の段階で「実現は難しそうだな…」と思う未来でも構いません。
まずは10年後どうなっているのが理想かを考えてみることで「この理想に少しでも近づくにはいまから何ができるか」を明確に考えることが可能となるのです。
「自分はどうしたいか」を考えていないと流される…!
今回の内容は私自身の反省にも基づいています。
これまで私は「起業して塾を作りたい」「仕事を法人化したい」「大学院に行きたい」などいろんな目標に挑戦してきました。
目標を達成できたあと、ふと「目標は達成したけど、これからどうしようか…」と途方にくれることが多くありました。
そういう場合、自分がどうしたいか曖昧なので、「他の人に差をつけたい」「周りに遅れないようにしたい」とやたらブランド物を買ったり背伸びして高級レストランに行ったりするなど「見栄」を張ることがしばしばありました。
そうやってムダにお金を浪費してしまっていました…。
(当時は「ちゃんとした経営者ならちゃんとしたブランドの服を着るべきだ」「一流レストランに行くべきだ」というようなヘンな思い込みがあったのです…)
こういうことに時間とお金を使っていても、別に自分の内実が満たされるわけではありません。
こういうとき役立ったのが、「10年後の自分を具体的にイメージすること」です。
今の職場や同じ立場の人と競争するのではなく、「10年後の自分がどうなっているか」を軸に考えることで自分のキャリアの方向性を明確にできます。
自分の未来を具体的に考えることで、今やるべきことが自然と見えてくるのです。

結局、人は煽られやすい
とはいえ、「圧倒的に差をつける」「周りと差を広げる」といったフレーズは、どうしても目を引きます。
実際、私自身もYouTubeの広告でこうした表現を見ると、つい気になってしまいますし(笑)。
しかし、こうした煽りに乗せられてしまうと、本来の目的を見失いがちです。
そうではなく、キャリア形成においては、他人と比較して焦るのではなく、「自分の理想に向かってどう進むか」を考えることが大切です。
まずはキャリアアンカーやキャリアレインボーで価値観を明確にしたあと、「10年後自分はどうなっていたいか」を明確にイメージしてみるところからはじめていきましょう!
こうやって他人の煽りに左右されることなく、自分にとって本当に意味のあるキャリアを築いていってください!

☆「キャリアアップを科学する」シリーズはこちら。
「これを知らないと差がつく」。最近こういう煽り広告を目にすること、ありませんか?これに振り回されていると焦ってばかりで何も自分のプラスにつながりません。大事なのは他人志向ではなく自分志向のキャリア形成をすること。「10年後どうなっていたいか」を明確にイメージし、キャリア形成していきましょう!