目次
データ分析の基本!アンケートを「まとめる」から「分析する」へ
「どうやって論文を書いたら良いかわからない…」
そんな声に対し、研究の仕方からお伝えする「研究論文の書き方」シリーズ、今回もお伝えします!
前回の記事では、研究の中で用いられる量的調査と質的調査の方法について具体的に見てきました。
今回はその続きとして、「得られたデータをどのように分析し、どのように解釈していくか」というテーマを扱います。
アンケートを“まとめる”だけでは研究にならない!
大学院などで研究する際、困ることが多いもの。
それは「データのまとめ方」です。
アンケート調査やインタビュー調査を行ったあとはその結果を表やグラフにまとめていくことになります。
これ自体、けっこう大変です。
ですが、こうやって数十名・数百名の回答を得たとしても、それを単純に集計しただけでは研究にはなりません。
実際、アンケート調査・インタビュー調査の結果をなんとかまとめ、指導教員のもとに資料を持っていくことがあります。
そういうとき、指導教員からこう言われることがあります。
「これは“まとめ”であって、“分析”ではないよね」
私も1回目の大学院生のとき、指導教員からこう言われた経験があります。
当時、めちゃくちゃ驚きました。
自分ではデータを「分析」したつもりだったからです。
単にデータをまとめるだけでは研究にはならないことをその時痛感しました。
単にまとめるだけでなく、学術的な手法で研究分析をすることが必要なのです。

データ分析が持つ学術的な意味
アンケート調査やインタビュー調査の結果を集計すること・まとめること自体は重要です。
ですが、研究にまとめるにはそれだけでは不十分なのです。
たとえばアンケートで「はい/いいえ」と答えた人数を示すだけでは、単なる事実の列挙に過ぎません。
そうではなく「どんな傾向が見えるのか」「どの要因が関係していそうか」「他の属性とどのように関連しているのか」を掘り下げてこそ、分析になります。
この分析も、「適当」に「自己流」で行っては意味がありません。
どの人がやっても同じ結果が出るような客観的・厳密な方法で分析をすることではじめて学術的な意味が出るのです。
この“分析”の有無が、レポートと研究論文を分ける最大のポイントです。
企業の報告書や行政のアンケート結果などでは、往々にして「まとめただけの資料」が“報告”として扱われることがあります。
ですが学術的な研究ではそれを一歩深めて「分析」をする必要があるのです。
では実際にどういう分析方法があるのでしょうか?
今回はその分析方法の基本についてを量的調査・質的調査にわけて説明していきます。
なお、今回紹介する技法にはそれぞれ専門のテキストや専門の調査手法の講習などが存在しています。
興味を持った内容について書店やネットで調べてみるのをおすすめします!

量的データ分析の第一歩:記述統計から始めよう
量的データ、つまり数値で表現されるデータを扱う場合、まず必要なのが記述統計(Descriptive Statistics)です。
これは、調査結果を基本的な指標で要約するもの。
先程挙げたように「はい/いいえ」という回答の数を表にまとめるだけでなく、平均値・中央値・最頻値・標準偏差などを求めることが必要です。
(場合によってはヒストグラムを作ることもあります)
こうやってデータ全体の傾向をつかむことが必要です。
こうやって記述分析をする中で、例えばそれぞれの回答の関係性を見ていく必要があります。
たとえば、あるアンケート項目で「仕事に満足している」と答えた人が60%いたとします。
こういう回答をしている人がどういう特徴を持っているか調べられると研究がさらに深まっていきます。
そのためには「仕事に満足している」という項目以外との関係性を知ることが必要になってきます。
クロス集計で「関係性」を見る
「仕事に満足している」という回答をした人はどういう特徴を持っているか。
それを知る際に役立つのがクロス集計(Cross Tabulation)です。
これは、2つ以上の項目を掛け合わせ、属性間の関係を見る方法です。
たとえば次のような例が考えられます。
- 「性別」と「仕事に満足している」回答の関係
- 「業務内容」と「仕事に満足している」回答の関係
このようにクロス集計を行うと、単なる数字の羅列から一歩進み、どんな層にどのような傾向があるかが見えてきます。
たとえば、先程のデータですと
「女性の方が仕事に満足している傾向が高い」
「営業職の人間のほうが事務職の人間よりも仕事に満足している傾向が高い」
といった示唆が得られるかもしれません(データは参考のため「適当」に書いたものなので信憑性はありません、念のため)。
これこそが「分析」です。
クロス集計を行うことで、表面上の質問だけではなく質問項目の背後にある関係性も探ることが出来ます。
これが研究の醍醐味でもあるのです。
実際にはアンケート調査をした場合、だいたいすべての項目をクロス集計にかけていくことになります。
「どこかに意外な関係性がないか」を血眼になって探すことになります。
偶然か必然か? 統計的検定の重要性
ただし、クロス集計などで見えた差が「本当に意味のある差」なのか、それとも「たまたまそうなっただけ」なのかを確かめる必要があります。
そのときに用いられるのが統計的検定(Statistical Test)です。
代表的なのは「χ二乗(カイ二乗)検定」や「t検定」などです。
これらを用いることで、観測された差が偶然によるものではない確率を確認できます。
これらの確認のために必要なのが統計ソフトです。
χ二乗検定やt検定というと難しく感じるかもしれませんが、統計ソフトを使うと誰でも簡単に結果を出すことが出来ます。
統計ソフト、かつては高価な「SPSS」などのソフトを使うしかありませんでした。
ですが、今では誰でも統計分析を始められる環境が整っています。
私がおすすめなのが「JASP(ジャスプ)」という統計ソフトです。
こちら、なんと無料で使用できます。
日本語版も存在しますので操作しやすいです。
なので私も受講生の方におすすめしています。

最初はどう使うかわからないかも知れませんが、YouTubeなどで調べてみると使い方を解説する動画が色々ありますので見ながら慣れていくのがおすすめです!
▼ 統計分析の理解を深めるために
もし量的データ分析を本格的に学びたい場合は、次のような本を参考にしてみると良いでしょう。
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いずれも大学院レベルの研究に必要な「記述統計」「推測統計」「回帰分析」などの基礎が身につく構成になっています。
質的データ分析の基本〜KJ法とグラウンデッド・セオリー〜
ここまで量的調査のデータ分析について見てきました。
次には質的調査したデータの分析方法について見ていきましょう。
質的データを分析する場合はKJ法やグラウンデッド・セオリー(Grounded Theory)といった手法を用います。
これらは、インタビューや自由記述などの“言葉のデータ”から共通する意味や構造を導き出す方法です。
KJ法とは
KJ法は、もともと文化人類学者・川喜田二郎氏が提唱した手法です。
基本的な流れは次の通りです。
- データの抽出
インタビューやアンケートの自由記述から印象的な発言・キーワードを抜き出す。
カード1枚につき1つの内容を記入する。 - グルーピング(類似のカードをまとめる)
似た内容のカードを束ねて“山”を作る。 - カテゴリー化(タイトル付け)
各山に共通する意味を言葉にし、タイトルカードを作る。 - 再統合
タイトルカード同士をさらに統合していき、最終的に1枚の図や構造として表す。
こうした手順を通して、数十、数百の発言データを体系化していきます。
最終的には「全体の構造」を図式化することで、データの背後にある意味や傾向を明らかにするのです。
なおここで挙げているのはKJ法のエッセンスであって、厳密なやり方ではありません。
KJ法を厳密に行うには専門のテキストや講習を受けること・KJ法専用のシートを使うことなどが求められますのでお気を付けください。
次の本を一度読んでみるのがおすすめです!
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看護研究における実践例
たとえば看護学分野の研究で「新人指導における熟練看護師の困難感」についてインタビュー調査を行ったとします。
得られた語りの中から印象的な部分をカードに書き出していきます。
それを分類していくと、新人指導において熟練看護師が抱えている困難をグループ分けすることができるます。
例えば次のようなグループに分けられるかも知れません。
- 新人との関係性に関する困難
- 教育内容の難易度に関する戸惑い
- 職場環境や人間関係の影響
これらのカテゴリーをさらに統合していくと、「指導者としての役割葛藤」「教育体制の不十分さ」など、上位のテーマが浮かび上がってきます。
こうした構造化こそが、質的調査の“分析”になるのです。
なお、KJ法以外にもグラウンデッド・セオリーなどいろんな分析方法があります。
※『ライブ講義M-GTA 実践的質的研究法 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチのすべて』などを読んでみましょう!
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いずれも方法に長所・短所などがありますので、一度それぞれの技法について解説された書籍を読んでみるのがおすすめです!
違いを理解した上で、研究テーマに応じて適切な手法を選びましょう。
分析手法を選ぶための視点
なお、分析の手法を選ぶ際に大切なのは、先行研究の分析方法を確認することです。
同じテーマ・同じ分野の研究ではどのような手法が用いられているのかを調べてみると、どういう手法が求められているかがわかります。
基本的に、先行研究のやっている手法を参考に研究分析を行っていけばそれほど外れた分析をしなくて済みます。
ぜひ先行研究を検討していくようにしましょう!
客観性と再現性を担保する
なお、学術研究で最も重視されるのは、客観性と再現性です。
つまり、誰が同じ方法で分析しても、ほぼ同じ結果が得られる状態を指します。
「この研究者だからこうなった」のではなく、「この方法だからこうなった」と説明できることが大切です。
そのためには、分析手順を丁寧に記録し、他者が追試できるように明示する必要があります。
また、データの改ざんや恣意的な解釈を避け、“データに対して謙虚である”姿勢を持つことが求められます。
場合によっては「この分析を行った根拠を見せてください」といわれることもあります。
その時に困らないよう、統計分析やKJ法などの分析手法の途中経過も記録に残しておくようにあいましょう!
まとめ:データに“語らせる”のが分析
データ分析の本質は、「自分の意見を証明するために使う」ことではなく、「データそのものに語らせる」ことにあります。
量的調査でも質的調査でも、データをもとに「誰がやっても同じ結果になる」ように客観的・冷静に分析していくことが求められます。
こうやって分析することで単なる「アンケート集」や「インタビュー集」を「研究」に昇華させることができるのです。
もちろん、慣れるまでは大変だと思いますが、ぜひ少しずつ分析手法に慣れていってくださいね!
次回は、こうして得られた分析結果をどのように論文としてまとめ、どのように文章化していくかを見ていきます。
研究データを「結果」から「考察」へとつなげる、その橋渡しの部分についてみていきましょう!

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アンケート結果・インタビュー調査の結果をまとめただけでは研究にはなりません。大切なのは統計分析やKJ方などの分析手法を用い、客観的・再現可能な方法でデータに語らせることです。これにより単なる「調査のまとめ」を「研究」へと発展させることができます!