まずは「仮説を立てる」ところから!研究論文の書き方シリーズ①

summary

大学院で多くの人が悩むのが「研究論文の書き方」です。論文は単なる作文ではなく、因果関係に基づいた仮説を立て、それを検証するプロセスで構成されます。最初の一歩は「〇〇なら△△ではないか?」という仮説を立てること。仮説を持つことで研究の方向性が明確になり、文献調査も効率的に進みますよ!

「研究論文、どう書けばいいの…?」と悩んでいませんか?

大学院での学びや研究活動を進める中で、必ず直面するのが「研究論文をどう書けばいいのか」という壁です。

実際、私の塾にも「研究論文の書き方がわからない」「研究計画書までは出したけど、その先が見えない」といったご相談が数多く寄せられます。

論文を書くというのは、単なる作文ではありません。

「研究のルール」に沿って、筋道を立てて論理的に構成していく必要があります。

しかも学会ごと、分野ごとに細かい執筆ルールが存在します。


それだけに「全体の流れ」を理解していないと、どこから手をつけていいのかわからず途方に暮れてしまうのです。

このシリーズでは、研究論文執筆の全体像を解説していきます!


第1回のテーマは「仮説を立てる」。


研究の最初の一歩であるこの部分を一緒に見ていきましょう!

仮説とは何か? ― 因果関係を考えることから始まる

研究を始めるとき、最初に行うべきことが「仮説を立てる」ことです。

これは研究の出発点であり、いわば“羅針盤”のような役割を果たします。

「仮説」とは、「ある現象が、ある原因によって生じているのではないか」という自分なりの仮の答えのことです。

「〇〇ならば△△になるのではないか」。
「〇〇ならば△△なのではないか」。

こういった形で表現する事ができます。

〇〇という原因によって、△△という結果につながる。

この関係性を因果関係と言います。

と結の関係性が因果関係。

学問の世界では、この因果関係を想定したうえで「〇〇ならば△△になるのではないか」と仮説を立てていくことが基本となっています。

この仮説のことを「リサーチ・クエスチョン」と呼ぶこともありますが、同じものだと考えてほぼ問題ありません。

因果関係を想定したうえで「〇〇ならば△△になるのではないか」という仮説を立てていくことが研究の第一歩となるのです。


なお、安宅和人さんの『イシューよりはじめよ』ではこの仮説を「イシュー」と説明しています。
研究においても仕事においても、本質的なイシューを見つけるのがいかに重要かを力説するのです。

イシューさえ見つけられれば99%の仕事は不要になる。

そういう発想を得ることができる名著なので気になる方は一読をおすすめします。

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独立変数・従属変数、説明変数・目的変数とは?

論文を読んでいると「〇〇を独立変数に定めて」という言い方が頻繁に出てきます。

「この独立変数ってなんだろう?」と思う人も多いかも知れませんが、要するにこれは「原因」のことです。

「〇〇ならば△△なのではないか」という仮説を説明しましたが、これを因果関係で表すと

・原因→結果
・◯◯→△△

と示すことが出来ます。

学問の種類によってはこの「原因→結果」を次のように表すことがあります。

・独立変数→従属変数
・説明変数→目的変数

こういう言葉を見ると「なんだろう?」と思ってしまいますが、これも「原因→結果」の言い換えだと考えましょう!

学問によって、独立変数といったり目的変数といったりしますが、要は同じものです。
なので表現を揃えてほしいなあ、といつも思います…。

仮説の前提!因果関係の例

たとえば、次のような日常的な例で考えてみましょう。

寝坊をした → 会社に遅刻した

身近なので「当たり前」に思えてしまいますが、まずはこの例で考えてみましょう。

この場合、「寝坊をした」という原因が「遅刻した」という結果をもたらしています。



このように、原因(独立変数)と結果(従属変数)の関係を考えるのが仮説づくりの基本です。

逆に、「会社に遅刻した → 寝坊した」という順序にしてしまうと、因果の流れが逆転してしまいます。


これは論理的に正しくありません。

重要なのは「因果の方向性を正しく設定する」ということです。

なお、このとき、数学的には「必要条件ではあるが十分条件ではない」と説明することができます。

「原因」と「結果」をセットで考える

仮説を立てるときに役立つのが、「原因と結果をペアで考える」という発想です。

たとえば、医療の分野では次のような仮説が典型的です。

「新薬Aを投与すると、がんの進行が抑えられるのではないか?」

このとき、「新薬Aを投与する」が原因であり、「がんの進行が抑えられる」が結果です。


ここに「従来の治療法」と「新薬Aの治療法」を比較するという実験設計を入れると、仮説を検証する研究が成立します。

教育学の分野でも同様です。

「オンライン授業を導入すると、学生の学習意欲が高まるのではないか」

「教員がフィードバックを増やすと、レポートの質が向上するのではないか」

こうした「〇〇をすると△△が起きる」という構造を整理していくと、研究の骨格が見えてきます。


仮説は、つまり「この原因がこの結果を生むのではないか?」という“仮の橋渡し”なのです。

小学校の理科実験も立派な仮説研究

仮説というと難しそうに感じるかもしれませんが、実は私たちは小学生のころから仮説的な思考に触れています。

たとえば理科の授業で行った次のような実験を思い出してください。

ジャガイモにヨウ素液をかけたら紫色に変わった。

ここでの「原因」はヨウ素液をかけたこと、「結果」はジャガイモが紫色に変化したことです。

「ジャガイモにヨウ素液をかけた→紫色に変わった」


デンプンがあるとヨウ素液は紫色に変わります。

だからこそ、この結果をもとに、「ジャガイモにはデンプンが含まれている」と結論づけているわけです。

これはまさに仮説の検証プロセスと同じ構造です。

研究とは、このような“因果の想定”をもとに「なぜそうなるのか」「本当にそうか」を確かめていく作業の積み重ねなのです。

仮説を立てるコツ ―「〇〇なら△△ではないか?」をたくさん書き出す

では、実際にどのように仮説を立てていけばよいのでしょうか。

ここでおすすめなのが、「〇〇なら△△ではないか?」という文型でとにかく書き出してみることです。

たとえば教育系の研究をしたい場合、次のように考えてみます。

  • 授業中の発言回数が多い学生は、学習意欲が高いのではないか。
  • 教員のフィードバック量が多いと、学生の成績が上がるのではないか。
  • 学生同士のピアレビューを導入すると、レポートの完成度が高まるのではないか。

このように“原因と結果”の関係を頭の中で組み合わせ、メモに片っ端から書き出していくのです。


最初から正しい仮説を立てようとする必要はありません。

重要なのは、「関係がありそうだ」と思えるアイデアをたくさん出すこと。

その中から実際に検証できそうなものを選び、次のステップ(先行研究調査)に進めばいいのです。

なぜ仮説が必要なのか? ― 調査の“軸”をつくるため

研究の初期段階では、「何を研究すればいいのかわからない」という悩みがつきものです。

論文を読めば読むほど「すでにやり尽くされている気がする」と感じてしまうこともあります。

しかし、仮説を立てておくと状況は一変します。

「この仮説を検証するために、どんな研究が過去に行われているか?」という目的をもって先行研究を探せるからです。

いわば、仮説が“地図”となって、自分の研究の位置づけを明確にしてくれるのです。

もし仮説がないまま文献を読んでいると、すべてがバラバラの情報に見えてしまい、どの研究が自分のテーマと関連しているのか判断できません。

それでは時間ばかりが過ぎ、研究が進まないのも当然です。

仮説を立てることは、研究の方向性を定めるための最も効率的な方法なのです。

仮説型研究と仮説生成型研究の違い

学問の世界には、大きく分けて2種類の研究スタイルがあります。

  1. 仮説検証型(hypothesis testing)
     すでに立てた仮説を、実験や調査によって検証するタイプです。自然科学や社会調査で多く用いられます。

     例:「Aという要因がBという結果をもたらすかを検証する」
  2. 仮説生成型(hypothesis generating)

     研究を進める中で仮説を見つけ出していくタイプです。質的研究や探索的研究に多く見られます。
     例:「インタビューを通じて、AとBの間にどんな関係があるのかを探る」

分野によってどちらの方法が主流かは異なりますが、共通しているのは「最終的には仮説が必要になる」という点です。

仮説検証型が最初から仮説を探るのに対し、仮説生成型では研究の中で仮説を探っていくという違いがあるだけです。


仮説があるからこそ、研究に“目的”と“方向性”が生まれます。

研究計画書にも仮説が必要

この仮説立案のプロセスは、完成論文のためだけでなく、「研究計画書」を書く段階でも欠かせません。

むしろ、研究計画書の段階で仮説が曖昧だと、審査する教員に「この研究はどこへ向かうのか」が伝わらなくなってしまいます。

明確な仮説は、研究テーマに「筋」を通す働きをします。


逆に仮説が曖昧な計画書は、どれだけ立派な先行研究を並べても評価されにくいものです。

大学院受験の研究計画の中には「〇〇を調査する」「〇〇について文献検討する」というレベルの内容しか書いていない事が多くあります。

この場合、仮説がないので何をどう研究するかよくわかりません。

こういう研究計画しか書けていないと、そもそも合格できないだけでなく合格した後も「何をしたら良いかわからない…」ということになりがちです。

だからこそ仮説を活かした研究計画が必要なのです。

まとめ!まずは“因果関係”を意識して仮説を立てよう

ここまで見てきたように、仮説づくりのポイントはとてもシンプルです。

  1. 原因と結果の関係を考える。
  2. 「〇〇なら△△ではないか?」という形で書き出す。
  3. その仮説をもとに先行研究を探す。

これが研究の最初の一歩です。

仮説が立てば、研究の流れが自然と見えてきます。

もちろん、研究を進める中で仮説を修正することもあります。

それは悪いことではなく、むしろ健全な研究プロセスです。

仮説は“出発点”であって“ゴール”ではありません。

検証を通じて仮説が支持されることもあれば、反証されることもあります。

どちらの結果になっても、そこに新しい発見が生まれるのです。

次回は、この仮説をもとにどのように研究を設計していくのか、つまり「研究デザイン(調査方法・データ収集の考え方)」について解説します。


論文執筆の道は長いようで、ステップを踏めば確実に前進できます。

「研究論文は難しい」と感じている方こそ、まずは“仮説を立てる”ところから始めてみましょう!

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