社会人として大学院で学んだ経験を持つ方々へのインタビューシリーズ。
第11弾は、自衛官の経験を経て北海道大学公共政策大学院(通称HOPS)に通い、修了後は小樽商科大学大学院アントレプレナーシップ専攻(通称OBS)に通っているホクダイショウダイさん(仮名)のお話を伺います。
2回にわたってお届けします!(前編)。
(インタビュー実施日:2024年6月5日)
目次
「自衛官として働きながら通信教育で高校・大学を卒業しました」
ーー最初に略歴を伺えますか?
ホクダイ:私は自衛隊で16年勤務した後航空業界で約20年勤務をしました。
自衛隊に中学校を出てすぐ入ったので、高校と大学は通信教育で通う形となりました。
ーーそうだったんですね。
ホクダイ:はい。私は自衛隊の時に幹部に大卒相当の幹部自衛官になりました。
ただ、結局通信で大学を出たのは幹部自衛官になってからだったので、
キャリアに学歴が追いついたような人生を送ってきました。
ーーなるほどそうなんですね!
キャリアに人生が追いついたっていうのはどういうことを意味するのでしょうか?
ホクダイ:普通は大学を出てあと社会に出て大卒相当の職種につくという感じがあるじゃないですか。
私の場合は中学を出てすぐ社会に出たんですけども、私が22歳の頃には学歴偏重社会への批判から、国家公務員や自衛隊幹部候補生の応募資格が「大学卒業程度の学力を有する者」に変更されていて、受験に大卒の学歴は必要ない時代になっていました。
これは北大公共政策大学院もそうですよね。
大卒の資格がなくても、社会人の経験があれば受験できるという状態です。
そんなわけで私の場合は先に役職についたあとに学歴が追いついてきたような人生を送ってきました。
慶應義塾大学の通信を13年かけて卒業!
ーー大変興味深いですね!
自衛隊で自衛官として働きながら通信で大学も出られたんですね!
ホクダイ:そうです。
ーーどちらの大学に行かれたんですか。
ホクダイ:慶應です。
自衛隊辞めた後にようやく卒業できたので13年ぐらいかかったんですけど卒業できました。
卒論指導を初めて受けたときに助手だった先生が、卒業時に通信教育部長になっておられ、慶應の卒業式では卒論の指導教員から直接、学位記を受け取ることができました。
当時の慶應の通信は、卒業論文の登録をしている状態であれば最大14年まで在籍期間を延長できました。
もちろん、教養課程も終わってない状態で十何年も在籍するのは無理ですけど。
ーーすごいですね!まさに働きながら学ぶというのを昔から実践されているわけですね!
ホクダイ:そうなっちゃいましたね(笑)。
北大公共政策大学院(HOPS)を選んだ理由は?
ーー現在2つ目の大学院に通われていることを聞いたのですが、ホクダイさんとはじめに知り合ったのは北大の公共政策大学院(通称:HOPS ホップス)でしたね。
ここを目指されたのはなぜですか?
ホクダイ:ちょうど前職を辞めた後で再就職をしようと思ってたいたんですけど、50も後半になると再就職がけっこう厳しいというのと、これまで通信教育で高校と大学を出てきたこともあり、一回ちゃんと学校で勉強してみたいという思いがあったんです。
通信でもスクーリングとかあるんですけど、実際のキャンパスで日常的に学ぶ機会はそんなになかったんです。
「どこかでどっかいい大学院がないかな」 と思って探していたら、北大に公共政策大学院があることを知りました。
学力考査などの入学試験がある学校だと今から受験して入るってのは非常に厳しいと思っていたのですが、社会人入試の枠があることを知って挑戦しようと思ったんです。
北大公共政策大学院の社会人入試は書類審査と面接試験のみとなっています。
自分はずっと交通関係の仕事をしていたので「公共交通をテーマに研究したいな」と思っていました。
ちょうどその辺のニーズが合致して受験することにしました。
たまたま公共政策大学院を見つけた時が後期の募集をしている時だったんです。
ちょうど入学前の10月ぐらいにネットサーフィンしていたら見つけたっていう感じなんですね。
トイレが縁で北大へ。
ホクダイ:きっかけはもう1個ありまして、当時は会社を辞めていて家にいても暇なので自転車を漕いでいたんです。
家からちょっと遠くまで自転車で行ってみたいなっていう目標があり、だんだん距離を延ばしていったんです。
結果的に北大に到達をした時に、ちょうど北大博物館のそばまで来たんです。
この博物館の向かい側に公共政策大学院の建物があるんですけど、そのときトイレに行きたくなって勝手にその建物のトイレを使ったんですよね。
その時入り口のところに公共政策大学院っていう看板が掛かっていて、「おいおい、これは何だろうな」って感じたんです。
ネットサーフィンをして確認してみたら自分がやりたいことと合致していることがわかり、「じゃあ受けてみようかな」と思った次第なんです。
ーー何か運命的なところがありますね。
ホクダイ:そうですね。まさかその後、本当に北大に自転車で通うようになると思わなかったですね(笑)
ーー大学院の間はずっと自転車で通ってらっしゃったんですか?
ホクダイ:夏は自転車ですね。天気が悪い時以外はずっと自転車です。
ーー懐かしいですね、ホクダイさんはいい折りたたみ自転車を使っていらっしゃいましたね。
北大大学院修了後、もう一度大学院へ!
ーーホクダイさんは公共政策大学院に行かれた後でもう一度再び大学院を目指されて、実際にいま小樽商科大学大学院アントレプレナーシップ専攻(OBS)に通われていますね。
もう1回大学院を目指そうと思われた理由はなんでしょうか?
ホクダイ:就活していたんですけど、なかなか再雇用がなかったっていうのがまず一番の理由なんです。
あとは昔からの憧れですね。
ちょうど自分の学年が学生の頃、バブルの絶頂期だったんです。
その頃ビジネススクールが無茶苦茶流行ったんですよ。
その時から「いつかビジネススクールで学びたい」っていうのが心の片隅にあったんです。
そのため、北海道にも小樽商科大学にMBAコースがあるというのを以前から知っていたんです。
ーーそうだったんですね。
ホクダイ:それで、藤本さんとの出会いもあってOBSを受けようかなと思いました。
北大大学院の場合は直接現地に行けたから良かったんですけど、小樽の場合はなかなか自分でそこまで行く気がなかなか起こらなかったんです。
そういう経緯の中で、OBSの札幌のサテライトは札幌駅前の紀伊國屋書店の上にあるというのを知ったのと、藤本さんから試験のスケジュールを伺ったんです。
その時藤本さんから「後期募集の方が受験の倍率が高いよ」と聞き、前期募集の間に受験するためすぐにOBSの札幌のサテライトにいって願書をとりあえず貰ってきたんです。
ーーそうだったのですね!今も自転車で通われているんですか?
ホクダイ:今はバイトもあるので、電車ですね。
北大と小樽商科大学。大学院の違いは?
ーーホクダイさんは今2つ目の大学院に行かれているわけですが、両方に通ってみていかがですか?
なにか違いなどの発見はありますか?
ホクダイ:北大はやっぱり総合大学なのがメリットだと思いますね。
一つのキャンパスの中にすべての学部(水産学部以外)全部あるのが強みですね。
大学院になると大学院共通科目というのがあるんですが、どの大学院に通っていてもほとんどの科目が履修できるんですよね。
そういった意味で、北大のような総合大学だと幅広く勉強できるというのがいいですね。
さらに北大は文理融合というポリシーを掲げているので、文系の学生が理系の技術を学んだり、理系の学生が文系・社会科学の考え方を学ぶことができます。
私は北大大学院の時はデータサイエンスとプログラミングをやりたかったのでニューラルネットワークの講義を受けたりPython(パイソン)のプログラミングを学んだりしました。
北大に入った時にAIがちょうど広まりだした時期だったので、そういう授業があってラッキーでした。
なので北大ではデータサイエンスに必要な科目などを受けられたのが大きかったです 。
北大でプログラミングを学ぶ!
ホクダイ:それから修士論文を書く際にPythonでプログラミングをして研究をしていきました。
道内の民営化された空港がどうやって生き残っていくかを考えるとき、Pythonのプログラムを組んで実際の生き残り方を検討していったんです。
具体的には観光客の動きをパターン分けし、各地でどれぐらいの滞在時間があるかを判定するプログラムを作ることになったんです。
プログラミングに関しては、まず基礎的なところを講義で習いました。
北大ではこういうプログラミングを支援する制度があり、登録すると理学部の先生がついてくれて、徹底的にマンツーマン指導していただけんです。
私は公共政策大学院での講義は1年目でほぼ履修し終えていたので、2年目はもう全然違う大学院の授業ばっかり履修していた感じですね。
法学部から理学部に行ったり、南極学の勉強に行ったりしていました。
2年で74単位・大学院2回分修得!
ーーすごいですね! 私が知らない制度がたくさんあって、めちゃくちゃ大学院を使いこなしてらっしゃる事が伝わってきました!
ホクダイ:私、2年で74単位取ったんですよ。
ーーふつうの修士課程の2回分ですね(笑)
ホクダイ:大学院って、同じ学費で何単位も取れるんです。
何でも勉強できるのが北大のいいところですね。環境も整っているし。
社会人なると恥も外聞もないので、全然知らない学部に平気でいけます。
なかには「公共政策大学院って何ですか」っていう院生ともよく出会いました。
あとその中でビジネス関係の大学院の授業も履修しにいきましたね。
実は、理工系の大学院では経営に関する科目が結構あるんです。
それは理工系の大学院を出た技術者会社の経営をよく知らず、それゆえ苦労したり会社が潰れたりするケースがあるのでその辺をちゃんと支援する、という流れから設けられています。
この中には小樽商大のMBAコースとタイアップした講義なんかもあるんですよ。
そういう科目を受ける中で、小樽商大の先生や小樽商大を修了した北大の先生とも知り合いになりました。
北大の先生方が、口々に「OBSはいいぞ」と言ってたことが印象的でした。
そういうことから「あ、OBSっていいんだな」と思ってはいました。
北大大学院と小樽商大大学院、学びの内容が全く違う!
ーーそうなんですね! 実際にOBSに通ってみて、いかがですか?
ホクダイ:実際にOBSに通ってみますと、もう北大とは全然学びの内容も違いますね。
OBSは社会で働くことをベースしている授業があるだけでなく、卒業生などから講義を受ける機会もあります。
あと起業家の方のお話なんかもあります。
北大でも「アントレプレナーシップ(起業)を応援しよう」っていう流れはいっぱいあるんですけど、具体的に何をするかという部分はあまり存在していないんです。
でも、OBSの場合は目の前に色んなリソースがあって、起業に関わる部分をちゃんと教えてくれるというのが特徴ですね。
ーーOBSのアントレプレナーシップ支援と言うと、具体的にどんなことをやっているんですか?
ホクダイ:例えば起業においての考え方ですね。
アントレプレナーシップ関係で面白いのは、今エシカルアントレプレナーシップって言って、単に儲かればいいという話ではなく、その社会的な意義やSDG’s・サステナブルの問題をいかに織り込みながら起業をしていくかっていうところに力が置かれているんです。
こういった部分を学べるのが大きいです。
ほかにもファイナンスの講義だったり、アカウンティングの講義だったり、会社経営の基礎的なところを教えてもらえます。
ーーなるほど〜!非常に興味深いですね !
☆後編に続きます。
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中学卒業後、自衛官として16年勤務の後、航空業界で勤務。2022年に北海道大学公共政策大学院に入学し2024年3月に修了。そのまま2024年4月から小樽商科大学大学院アントレプレナーシップ専攻でMBA取得に向け学習中。