「はじめに」は最後に書く!研究全体を締めくくる導入文の作り方【研究論文の書き方11】

summary

「研究論文の書き方」シリーズ第11弾は序論「はじめに」の書き方の解説です。「はじめに」と言いながら最後に書くのが最大のポイント。研究全体を俯瞰してこそ、的確な「はじめに」が書けます。①研究背景と課題、②筆者の立場、③論文構成の3点を意識しましょう!

研究論文の書き方シリーズ第11弾!

「研究論文ってどうやって書いたら良いかわからない…」

そんな声にお答えする「研究論文の書き方シリーズ」、今回もお届けします!

ここまで「研究論文の書き方」シリーズでは、研究テーマを立てるための仮説設定、先行研究の批判的検討、研究方法、データ分析、考察、そして結論までを一通り見てきました。

これで研究論文があらかた「完成」したことになります!

…ですが、ここまでの要素に1つ欠けている部分があります。

それは論文の最初に書く「はじめに」(序論)の部分です。

「はじめに」の部分って、実はめちゃくちゃ重要な部分です。

今回は地味に大事な「はじめに」の書き方をお伝えします!

ポイント!「はじめに」は最後に書く!

「はじめに」の部分って、言葉からして「最初」に書くように見えます。

これ、実は逆です。

「はじめに」は最後に書く。

これがポイントなのです。

論文は最初から順番に書かれてはいない!

研究論文では通常 次のような構成で作られています。

・はじめに(序論)
・先行研究の検討
・本研究の狙い(注 ないこともある)
・研究の方法
・研究結果
・分析
・考察
・結論(終わりに)
・参考文献

「研究論文の書き方」シリーズでも、「先行研究の検討」から「結論」まで順番に書き方を見てきました。

こういう論文の構成を見ていると、時折誤解する人がいます。

それは「論文は最初から順番に書かれている」という誤解です。

研究論文って理路整然としています。

そのため「はじめに」から「結論」まで一気に書かれたように見えてしまいます。

ですがそうではないのです。

実際は研究論文ってあちこちの場所から書かれています。

最終的に「理路整然」となるように文章を修正しているだけなのです。

なかでも「はじめに」は読者が最初に目にする部分です。

また全体の構成や研究の意義などを指し示す必要がある重要な部分でもあります。

だからこそ「はじめに」は研究論文の「最後」に書くことが求められています。

そうしないと研究論文全体とズレた内容になってしまうからです。

そのため、「はじめに」は論文の最後に書書かれることが多いです。

研究全体がまとまり、全体像を俯瞰できた段階でこそ、初めて読者を導く「はじめに」を書けるのです。

「はじめに」が果たす3つの役割

では、「はじめに」では何を書けばいいのでしょうか?


ここでは、一般的に重視される3つの役割を紹介します。

① 現状の課題と研究背景を提示する

まず必要なのは、「なぜこの研究を行う必要があるのか」という問題意識の提示です。


現代社会の動きや、学問領域での課題、または現場での実践的な問題など、読者が「確かにこの研究は意味がある」と納得できる文脈を示すことが求められます。

この段階では、以下のような構成が参考になります。

  • 現在の社会的・学問的背景を述べる
  • その中で解決されていない課題を指摘する
  • その課題に着目した理由を簡潔に述べる

つまり、「現状の問題 → 研究の必要性 → 自分の研究テーマ」という流れで、読者を自然に研究の世界へ引き込むのです。

② 筆者自身の立場を明確にする

次に重要なのは、筆者がどのような立場から研究を行ったのかを明示することです。

たとえば、同じ教育学の論文であっても教育現場の実践者としての立場から書かれた研究なのか、行政職としての政策的視点から書かれた研究なのか、教育学の研究者の立場から書かれた研究なのかでまとめ方・論の立てからが大きく変わってきます。

学術論文では「主観を排する」ことが基本とされますが、社会科学や教育学など実践的な分野では、論文の執筆者の立場が研究の方向性に影響を与えることもあります。

だからこそ、自らの立場を明確にすることで読者の理解も進むことになるのです。

純粋な学術研究の場ではこの②は書かなくてもいいことがあります。

③ 研究全体の構成を示す

3つ目の役割は論文全体の構成を予告することです。

これは地味ながら非常に大切な要素です。

読者にとって「これからどんな流れで論文が進むのか」を理解できることは、内容理解を助けるうえで欠かせません。


以下のように、このあとに続く章立ての概要を紹介する形が一般的です。

本論文では、まず第1章で先行研究の動向を整理していく。
第2章では本研究で実施した調査方法を示す。
第3章でその結果を分析し、第4章で現代教育への示唆を論じる。

このように構成を明確に記すと「このあとどんな流れで論が進むのか」が分かるようになります。

そのため読者も安心して本文を読み進めることができるのです。

「はじめに」を最後に書く理由

ここまで見てきたように、「はじめに」は論文全体の「入り口」でもありますし、全体の内容を示した「流れ表」でもあります。


そのため、研究が完成していない段階では書きようがありません。

たとえるなら「映画の予告編」と同じです。

映画の予告編って、ふつうは映画本編を撮った後につくっています。

それと全く同じです。

まず本編(研究本文)を仕上げ全体像を把握するからこそ的確な「はじめに」を書けるようになるのです。

構成を意識した「はじめに」の実例

ここで、教育学の研究を例にした「はじめに」のモデルを見ていきましょう!

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はじめに(例)

近年、社会人の学び直しやリカレント教育が注目を集めている。
しかし、働きながら大学院で学ぶ社会人学生を対象とした研究は、未だ十分とは言えない。
特に、学習意欲の維持やキャリア形成への影響に関する実証的研究は少ないのが現状である。

そこで本研究では、社会人大学院生を対象に、学習動機の変化とキャリア観の形成過程を明らかにすることを目的とする。
筆者自身も社会人大学院に在学しながら教育実践を行っており、その経験を踏まえた質的分析を行う。

本論文では、まず第1章で社会人のリカレント教育に関する先行研究を整理し、第2章で研究の方法を示す。
第3章でインタビュー調査の結果を分析し、第4章でその意義と課題を考察する。

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このように、現状の問題→筆者の立場→構成概要という流れで書くとわかりやすいものに仕上げることができますよ!

文章の「最初」を書くのは難しい件。

ちなみに。

研究論文に限らず「はじめに」のような最初の文章を書くのってけっこう難しいです。

実際、文章の書き出しが決まらず何時間も悩む人がけっこういます。

私は文章講座の際に「最初の部分は後で考える」ことの大事さをお伝えすることがあります。

文章の書き出しって難しいので、まずはそこを飛ばして途中から書いていくほうがいい文章になることが多いのです。

まとめ!「はじめに」を極めよう!

「はじめに」を書くのは研究論文執筆の「最後」に当たる行為でもあります。

研究論文の見通しがつかないと書けないからこそ、まずは「はじめに」を無視して途中から書いていくのをオススメします!

そのうえで今回ご紹介した3つの要素を活かして「はじめに」を書いていきましょう!

「はじめに」は読者を論文に導くガイドの役割をもちます。

ぜひ、「はじめに」を極め、読者を研究に引き込んでいきましょう!

次回は論文完成後に行う「要約(アブストラクト)」の書き方を取り上げます!

「研究論文の書き方」はこちら!

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