目次
研究の仕方から解説する「研究論文の書き方シリーズ」第6弾!
「論文って、どう書いたら良いかわからない…」
そういった声にお答えするため、「研究をどういう手順で進めるか」という観点から解説をしている「研究論文の書き方」シリーズ。
前回までの記事では、先行研究を読み込みながら、自分の研究テーマをどのように絞り込むかを見てきました。
そして「自分ひとりで行える」「時間的な制約に合う」「社会的・学術的に意味がある」という3つの条件を満たした研究テーマが理想であるとお伝えしました。
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今回はその続きとして、実際に研究を進めるうえで欠かせない「調査手法」について見ていきます。
「論文のテーマは決まったけれど、実際に“調査”ってどうやればいいの?
アンケートを取ればそれで良いのかな?」
大学院で研究を始めると、多くの方が最初につまずくのがこの点です。
今回は文系の研究者がよく用いる調査手法である「量的調査」と「質的調査」という2つの手法の違いを中心に観ていきます。
今回はあくまで文系分野の研究における調査手法を扱っていきます。
理系分野はそれこそ専門分野によって無数の調査方法・実験方法がありますので、専門の文献を読んでみていただければ幸いです。
なお、文系分野のなかでも私の専門である社会学や教育学分野に偏った解説となっていますのでそのあたりご理解のほどよろしくお願いします。
調査手法とは何か?
自分で仮説を立て、先行研究の持つ課題を検討する。
そのあとはいよいよ自分なりの調査研究を進める段階になります。
文献検討は研究ではない!
大学院に入ったばかりの方ですと「調査研究って、これまでの文献をもとに整理すれば良いんですよね?」と考えていらっしゃることがあります。
これまで書かれてきた文献を元に分析していく。
こういう調査手法を「文献検討」といいます。

こちら、哲学や文学・法学などですとこれまで書かれてきた文献を整理・検討していくことが研究になるケースがあります。
ですが、そうでない文系分野では「文献検討」を行うだけでは「研究」として扱われないことが多いです。
文献検討を行うだけでなく、まだ文献になっていないデータを自分で取りに行き、それを学問的に分析すること。
それが調査研究に求められているのです。
例えばフリースクールや不登校についての研究であれば、実際にフリースクールに通っている子どもたちやその保護者にインタビュー調査をしたりアンケート調査をしたりすることが求められているのです。
こうやって自分でデータを取っていくことが研究の本質となってきます。
調査研究のルールを知らないと後で大問題になることも!
ただ、このデータの取り方にも多くのルール(決まり・作法)があります。
実際に調査研究を行う前に、こういったルールを知っていなければ大問題が発生します。
例えばせっかくデータを取ってきたのにやり直しを命じられてしまうこともあります。
また、何の意味もないデータを取ってしまうこともあります。
最悪の場合、データの取り方のまずさから裁判沙汰になることもあります。
なので調査研究を行う前に調査研究のルールを知っていくようにしましょう!

量的調査と質的調査
では、実際に調査手法を観ていきましょう。
文系の調査手法は、大きく「量的調査(quantitative research)」と「質的調査(qualitative research)」の2つに分けられます。
(厳密には先述の文献検討も入りますが、データを自力で取りに行く調査を行う観点から今回はこの2つに絞ってみていきます)
調査手法①量的調査
量的調査とは、数値化できるデータをもとに分析する手法です。
代表的なものが「アンケート調査」や「統計データ分析」などです。
たとえば次のような研究です。
- 学生のモチベーションと学業成績の相関を調べる
- 地方自治体の職員研修が満足度に与える影響を測定する
- SNS利用時間とストレス度の関係を分析する
これらはすべて、数値データを集め、統計的に関係性を明らかにしていく調査です。
アンケートでは「5段階評価(とてもそう思う〜まったく思わない)」のような尺度を設定して回答を得ます。
得られたデータは、SPSSやJASPなどの統計分析ソフトを使って処理し、相関分析・分散分析・回帰分析などを行っていきます。
量的調査の注意点
量的調査を行う際にまず意識したいのは、「サンプル数」です。
回答数が少なければ、結果に偏りが出てしまいます。
たとえば10人にしかアンケートを行えなければ、1人の回答が全体の10%もの影響力を持ってしまいます。
これは統計的には信頼性が低く、結果を一般化するのが難しいのです。
少なくとも50件、できれば100件以上の回答があると、より安定した結果を導けるといわれています。
また、調査項目(質問内容)を作る際にも作法があります。
すでに発表されている先行研究で使われている質問票を参考にしつつ、今回の研究目的に合う形にアレンジすることが基本です。
「独自性を出す」ためにまったく新しい質問を作るよりも、過去の研究との比較ができるよう既存の質問を踏襲する方が望ましい場合が多いです。
調査手法②質的調査
次に「質的調査(qualitative research)」について見ていきましょう。
質的調査とは、数値では表せない「言葉」「経験」「感情」「背景」などの情報をもとに現象を理解する手法です。
例えば「不登校になったときに自分はどう感じたか」「フリースクールの印象はどうか」などと数字にしようがない「思い」や「考え」をデータとしていくものが質的調査になります。
例えばアンケート調査は「5 とても当てはまる、4 まあ当てはまる、3 どちらでもない、2 あまり当てはまらない、1 全く当てはまらない」などと数字にしたうえで回答してもらいますが、このとき「なぜそう思うか」などと掘り下げて質問することができません。
一方、質的調査であれば回答している人の思いや価値観などもデータとして扱うことが出来ます。
こういう「数値化できない情報」を扱えるのが質的調査の魅力です。
代表的なものには、インタビュー調査・観察調査・フィールドワーク・事例研究などがあります。
なお、私の1回目の修士論文では通信制大学における学生会組織をテーマに研究を行いました。
その際、実際に学生会組織に参加した方へのインタビュー調査のほか、実際の学生会組織でのイベントの様子を参与観察しデータを集めていきました。
私が調査したのは数名のためアンケート調査をしても大したデータにはなりません。
ですが、インタビュー調査や参与観察という質的調査を行ったからこそ、学生会に参加している方がどのような動機で活動し、どんな課題を感じているのかを自分なりに調べることが出来ました。
インタビューや参与観察を通し、調査対象者のもつ考え方・価値観まで掘り下げて観ていくことができる。
そういう質的調査の魅力、修士論文の執筆を通して学ぶことが出来ました。
質的調査の特徴
質的調査は、対象者の「生の声」や「語り」から現象を深く理解することを目的とします。
したがって、データの量よりも内容の深さが重視されます。
たとえば10人にインタビューしても、そのうちの1人の語りを詳細に分析するだけで新たな理論や概念を導けることもあります。
量的調査のように統計ソフトで分析するわけではなく、インタビュー内容を文字起こしし、そこから意味のまとまり(コード)を抽出し、さらにテーマや概念にまとめ上げていくというプロセスを取ります。

量的調査・質的調査、両方できるとベスト!
さあ、ここまで量的調査・質的調査について観てきました。
これ、どちらがよくてどちらが悪いというものではありません。
調査したい対象・内容に応じて適時使い分けることが求められます。
例えば「日本全国のフリースクール運営者の意識」を知りたい場合を考えてみましょう。
全国各地をインタビューして回るほどの余裕がない場合、アンケートの調査票を作り、全国のフリースクールに郵送するという形で「量的調査」を実施するということが出来ます。
逆に、「フリースクールに通っている子どもたちの日常の様子を調べたい」と思った場合、調査の許可を得たうえでフリースクールに行き、参与観察していくとデータを取ることが出来ます。
こうやって参与観察するなかでの様子を文字として書き残すことで「質的調査」を実施することが出来ます。
一番いいのは量的調査・質的調査両方を組み合わせて実施することです。
例えば量的調査としてフリースクール運営者に対するアンケート調査を行うだけでなく、何人かのフリースクール運営者には直接インタビューをする形で調査をする、ということが考えれます。
こうすると、量的調査のマクロさと質的調査のミクロさを組み合わせた研究を実施することが可能となります。
このように量的調査・質的調査はどちらが良くてどちらが悪いというものではなく組み合わせての実施も可能であることを意識してみていただければ幸いです。
両方実施するからこそ、より詳しく調査を行うことも出来ます。
ですので、量的調査・質的調査のやり方を両方学んでおくのをおすすめします!
大学院の授業で「調査法」に関する内容を履修したり、図書館・書店で調査法に関する書籍を探してみたりするのをおすすめします!

調査倫理と同意の重要性
量的調査・質的調査 両方に共通するのは、研究対象者の保護という観点です。
相手の時間と労力を使ってデータを提供してもらうからこそ、対象者の迷惑にならないように実施することが求められます。
例えば誰がどんな回答をしたかを匿名にするほか、回答へ協力する/しないを自分の意志で決められること、同意をいつでも撤回できることが求められています。
大型調査になってきますとアンケート回答者に500〜1000円程度の商品券(QUOカードなど)が配布されることがありますが、これには対象者の協力に感謝をするという意味合いがあります。
(もちろん、QUOカードを「エサ」に回答してもらう、という意味合いもあります…)
研究対象者保護については現在あらゆる学問でめちゃくちゃ重視されています。
それはこれまでの研究のなかには調査対象者を傷つけてしまったり個人情報が漏れてしまい不利益につながってしまったりしたケースが残念ながらいくつもあるからです。
そのため、研究では調査研究を行う前に「倫理的配慮」をどう行っているかが求められます。
具体的には大学・大学院などの研究機関では、調査を行う前に調査計画書を提出したうえで「倫理委員会」の許可・承認を取ることが求められているのです。
倫理委員会の許可を取るためには調査の目的や質問項目の種類、個人情報の扱い方、データ管理の方法、研究同意の取り方などをこと細かく記載している必要があります。
これ、研究者としての基本的なマナーです。
実際、研究倫理を軽視すると論文の信頼性が損なわれるだけでなく、学会発表や論文投稿ができなくなることもあります。
研究をする際には回答者への倫理的配慮の意識を持っておくことが必要不可欠なのです。
まとめ!研究方法を「選ぶ」ことが研究の第一歩
今回の記事では、研究を進める上で避けて通れない「調査法」について見てきました。
- 調査には「量的調査」と「質的調査」がある
- 量的調査は数字で傾向を捉えるもの。
- 質的調査は言葉で意味や価値観を探るもの
- 倫理的配慮と同意が欠かせない
研究方法は、単なる“手段”ではなく、研究の方向性そのものを決める重要な要素です。
「自分は何を知りたいのか」「どんなデータを集めたいのか」を明確にし、その目的に合った方法を選ぶことが、論文成功への第一歩になります。
調査方法については詳しい解説書がたくさんありますので、まずは調査研究の前に学習しておくことをおすすめいたします!
次回は量的調査・質的調査の具体的な中身について解説します。
次回もよろしくお願いします!

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研究テーマが決まっても「調査ってどうすれば?」と悩む方は多いです。文系分野の調査手法には「量的調査」と「質的調査」の2つがあります。アンケートや統計で傾向を捉えるのが量的調査、言葉や経験を通して深く理解するのが質的調査です。どちらも倫理的配慮が不可欠で、目的に応じて選ぶことが重要です。まずは授業や書物で専門のやり方を学んでいきましょう!