文章書き方本書評①日本語の作文技術(本多勝一)

役立つ「文章の書き方」の本って、何ですか?

 

こんにちは、
文章アドバイザーの
藤本研一です。

 

おかげさまで
作文教室ゆうに
多数の受講生の方が来てくださっています。

 

ありがたい限りです。

 

作文教室ゆう開設のなかで
自分の「文章修行」を行ってきました。

 

具体的には
「文章の書き方」本を大量に読みこんできました。

 

読む中で発見もありました。

 

いまの作文教室ゆうでの
講義に役立っているのです。

 

 

ただ。

 

 

「文章の書き方」本には
【役に立たない】物が多いのも
事実です。

 

「どこかに役立つ文章の書き方の本、
ないんだろうか・・・」

 

そう考えながら
探し求めてきました。

 

そしてようやく、
役立つ本を見つけ、
活用できたのです。

 

 

そんなわけで、ここでは
読んで

これは本当に役立つ!

と言える「文章の書き方」本の書評を
行っていきます。

 

お楽しみに!

 

本多勝一『日本語の作文技術』

 

今回紹介するのは
『日本語の作文技術』。

 

 

 

このブログでも何度も
紹介してきている名著です。

 

初版が1982年という
古い本です。

ですが、
ここに書かれている内容は
いまだに役立ちます。

 

 

1982年当時から、
「文章の書き方」の本に
役立つものが少ないことを
本多勝一さんはなげいていました。

 

「文章はセンスだ」
「文章は才能だ」

という声も聞かれています。

 

でも、本当はそうではないのです。

 

だれにも学習可能な「技術」
としての日本語作文の仕方を
教えてくれるのです。

 

テンとマルの打ち方

 

『日本語の作文技術』が教えてくれる
最大のものは

テンとマルの打ち方

です。

 

日本語で文章を書いていると、
ふとこのことを悩みます。

 

あれ、
どこでテンを打ったらいいんだろう?

 

わからなくなります。

学校でも、
テンの打ち方については
間違ったルールしか教えてくれません。

小学校ですと

「息継ぎのところに
テンを打つんですよ」

「単語の切れ目に
テンを打つんですよ」

という教え方をしています。

 

この「ルール」に則って書くと、
テンばっかりの
実に読みにくい作文が
出来上がるのです。

 

 

例を挙げましょう。

 

ぼくは、今日、運動会で50m走り、とても疲れましたが、がんばりました。

 

息継ぎのところにテンを打ちましたし、
単語の切れ目にも
テンを打ちました。

 

 

どうでしょう。

 

読みやすいですか?

 

 

 

……おそらくすごく読みづらいはずです。

 

テンが多すぎるのです。

 

 

そうなのです。

 

 

日常で読む日本語の文章って、
テンが多すぎるのです!

 

『日本語の作文技術』を読むと、
いかに自分がこれまで
不要なテンを打ってきたかよくわかります。

 

 

むしろ、

「テンが無くても意味がわかるのがいい文章だ」

といえるのです。

 

 

試しに先程の例を
書き直してみましょう。

 

ぼくは今日 運動会で50m走りとても疲れましたが、がんばりました。

 

テンを3つも消しました。

これでも意味がわかりますね。
変なところにテンがないので
さっきよりも
読みやすくなったはずです!

 

 

そうです。

 

あなたの書く文章も、
おそらくテンが多すぎるはずです。

 

テンが多すぎて、
あなたの言いたいことが伝わりにくく
なっているのです。

 

テンの打ち方の正しいルールとは?

 

では、具体的には
どんなふうにテンを打てばいいんでしょうか?

 

テンとマルを打つ際には
2つの原則があります。

 

 

句読点の打ち方ルール

第1原則 長い修飾語が二つ以上あるとき、その境界にテンを打つ。

第2原則 原則的語順が逆順の場合にテンを打つ。

☆   それ以外は、書き手の表現の仕方としてテンを打つ。

 

はい、
ルールはこれだけです。

 

 

ではどうこのルールを使うか、
見てみましょう。

 

 

こんな例文を使います。

 

例文
「白い大きな花をくわえた太った犬」

これを元にしましょう。

 

犬が白くて大きくて太っているのを示す場合、
「白い大きな」という部分を見てみましょう。

 

「白い大きな」という言葉と、
「花をくわえた」という言葉があります。

 

だからその境界で
テンを打つということです。

 

 

 

続いて、
第2原則です。

 

第2原則は
通常の並び方とは
逆になるところにテンを打つ、
ということです。

 

 

「白い大きな花をくわえた太った犬」
を「白い太った犬が大きな花をくわえている」
状況にするにはどうしたらいいでしょうか。

この場合
本来は
「大きな花をくわえた白い太った犬」
と書くはずです。

 

ですが、
「白い」の場所が
通常の並びとは
逆順になっています。

 

だから
その区切りの場所にテンを打っているのです。

 

はい、
「白い、大きな花をくわえた太った犬」
となりました。

 

 

 

 

テンの打ち方のルールは
以上です!

 

あとは「ここにテンを入れたいな・・・」
という時に書き手が自由にテンを打つという
やりかたをするのです。

 

☆テンとマルの打ち方については
こちらもご覧ください。

テンの打ち方問題演習

 

ではこのルールを頭に入れて
問題を解いてみましょう。

 

次の文章は遊牧民族のテントに
泊まった筆者が書いたエッセイの一部です。

 

テンの位置が不適切な文となっています。

 

どのテンを取り、
どこにテンを打てばいいか考えてみてください。

 

私は出発準備にとりかかった。まずアベールの妻のカーリーが、昨夜寝る前にほしておいてくれた靴や手袋をていねいにもむ。物音で目がさめたのだろうか、カーリーも起き出してきた。

 

 

 

さあ、できたでしょうか?

 

まずこの文章、
読んでいて
「?」
となりますね。

 

 

「あれ、カーリーが
靴や手袋をもんでいたんじゃないの???
なんでいまさら目をさましてくるの???」

 

 

はい、こうなるのは
テンの位置のせいなんです!

 

 

まずは正解から。

 

分かりやすいように、テンを消したところ
テンを追加したところに
下線を引きますね。

 

 

私は出発準備にとりかかった。まずアベールの妻のカーリーが 昨夜寝る前にほしておいてくれた靴や手袋をていねいにもむ。物音で目がさめたのだろうか、カーリーも起き出してきた。

 

 

いかがでしょう?

 

もっとテンを打った人もいますが、
これで十分意味がとれます!!!

 

靴や手袋をもんでいたのは
「私」だったのです。

 

テンを打ちすぎていた人は
気をつけてください。

 

さっきも言ったように

テンを打ちすぎると
かえって文章は読みにくくなるのです。

 

『日本語の作文技術』を読めば
テンとマルの打ち方を
完全にマスターすることができます。

 

あとはそれを活かしていくだけです。

 

 

実は『日本語の作文技術』、
私が大学生の頃に読みました。

 

いまだに役立っている本。

 

おそろしくコストパフォーマンスが
高い本なので、
ぜひ一読してみてくださいね!

 

 

日本語は「主語」のない、「劣った」「非論理的な」言語か

 

この本には
「裏」の目的があります。

 

それは
「日本語は決して劣った言語ではない」
という主張です。

 

よく、こんなことを言う人がいます。

 

「日本語って、語順がめちゃくちゃ。
非論理的だよね。
英語のほうが論理的だよ」

 

「日本語は【主語】のない
実にあいまいな言語だ。
英語は主語があるから
分かりやすい言語だ」

 

……どうでしょう、
こんなことをいう人、
まわりにいませんか?

 

「進歩的知識人」が
こんなことを言うことが
多いようです。

 

 

でも。

 

本当に
そうなのでしょうか?

 

本多勝一さんは
ここに疑問を投げかけるのです。

 

イギリス語(英語)などは
あくまで無数の言語の中のヒトツにすぎない。

これがとくに論理的でもなければ、
とくにすぐれているわけでもない。

現代までの言語帝国主義的国際情勢のおかげで
イギリス語が得ている不当に大きい力関係を
考えれば、
むしろイギリス語は他の言語より非論理的で
劣っていると言わなければ
平衡がとれないくらいだが、
この際感情に走るのはやめておこう。(144)

 

そうです。

 

英語も(本多勝一さんのいう「イギリス語」)
数ある言語の一つにすぎないのです。

 

たまたま、
英語は「主語」を
ハッキリと書く言語ですが、

それだけをもって
「だから日本語は劣っている」
「だから日本語はダメなんだ」
というのは
間違いなのです。

 

むしろ
英語は「主語」を必ずおくことで
表現が制約されたり、
表記が面倒になったりするのです。

 

例をあげましょう。

 

下の状況を日本語と英語で
表現してみます↓

 

 

日本語では

「雨が降った」

と書きます。

 

 

一方、英語では

「It rains.」

と書きます。

 

日本語では「雨が」と
主格を示していますが、
英語では

いきなり謎の主語Itが
登場するのです。

 

別に「Rains.」で分かりそうな
ものですが、
それでも無理やりItをつけるのです。

 

 

別の例を出しましょう。

 

「とてもカンタンだ!」

を英語にしてみましょう。

 

英語だと

「It is very easy.」

となります。

 

「とてもカンタンだ」と言うだけなのに、
「It is」がないと書けないのです。

 

考えてみると、
英語って謎な言語だと思いませんか?

 

こう書くと、

「英語のささいな例で批判するのは
フェアじゃない」

という人もいるかもしれませんね。

 

でも、
これこそが大事な点なのです。

 

日本語は
「主語」を書かなくても
構わない
「便利な言葉」なのです。

 

別に「主語」がないということで
「劣った言語だ」というわけではないのです。

 

むしろ英語よりも
「主語」を書かなくていい分、
「便利な言葉」と言ってもかまわないわけです。

 

せっかく日本語を使っている以上、日本語の「強み」を活かしていこう

 

そうです。

 

たまたま「主語」を必ず書く
英語という一言語と、
「主語」がなくてもいい
日本語を比べても
本当は意味が無いのです

 

これは英語と日本語に限りません。

 

アイヌ語も中国語も韓国語も、
ドイツ語もロシア語も、
どれもそうです。

 

 

どの国の言語も、
「劣っている」とか
「非論理的だ」とか
批判をすべきではないのです。

 

むしろ
その国の言語の持つ
「強み」を活かしていくのが重要なのです。

 

 

私たちは
日本語を普段使っています。

 

せっかく普段使っている以上、
日本語の「強み」を活かした
使い方をしたいですよね。

 

また、せっかく使っている以上、
よりよい日本語を使っていきたいですよね。

 

日本語で文章を書く。
その際に「どう書けばいいか」を
教えてくれるのが
『日本語の作文技術』なのです。

 

同時に、
作文教室ゆうが目指しているものでもあるのです。

 

ではまた!

 


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