目次
「研究って要は何をすることか?」
「研究って、何をしたら良いのかわからない…」
社会人の方が大学院進学を目指す場合、
「そもそも研究って何をすることだろう…?」
と悩んでしまうことがよくあります。

それを解決するための「研究の型」を
これまで2回に渡って見てきました。
研究とは「因果関係に基づいた仮説を検証する」ために行うものであり、
研究の流れを示すフレームワークにPICO(ピコ)がある、
ということを見てきました。
PICOフレームワークの復習
PICOは、
- どのような人が(P)
- 何を行うと(I)
- 何と比べて(C)
- どうなるのか(O)
という介入研究の基本構造を整理するためのフレームワークでした。

研究の本質は「原因→結果」を探ることだとお伝えしましたが、
PICOはその因果関係を非常に分かりやすく整理してくれる思考の型です。
つまり「原因」として何か行動を行う(=介入)ことが
どのような「結果」をもたらすのかを比較して検証するのが
PICOフレームワークなのです。
ですが。
実際の研究では、必ずしも「介入」ができるとは限りません。
多くの分野では、
「倫理的に介入できない」「現実的に操作できない」事が多いです。
例えば医療において
「Aという病気の特効薬としてBを作ったので
Bの効果を測りたいけど、
まだ安全性が保証されていない」
という場合、そもそも実験をすることは出来ません。

また政治学の分野で
「雨や雪が降ると投票率は下がるか」
という研究をするとしましょう。
当たり前ですが、
雨や雪を人工的に降らせることはできません。
なので
「雨が降っている投票所とそうでない投票所」を用意することは
出来ないのです。

こういう場合、
PICOだけでは
うまく研究を進められないのです。
そこで登場するのが、今回解説するPECO(ペコ)フレームワークです。
PECOとは何か?
PECOは、観察研究で用いられるフレームワークです。
観察研究とは
「既に起きたことを研究する」というもの。
いわゆる「後(うしろ)向き研究」です。

前向き研究・後向き研究の違いとは?
後向き研究というとなんだか
「ネガティブ」な印象がありますが、
ここでいっているのは
「介入をこれから行うか、
すでに何かが行われた後に観察するか」
という意味での「後向き研究」ということです。
例えば「Aという病気の治療薬Bを患者に投与する」という研究は
PICOフレームワークで説明できます。
「これから」治療薬Bを患者に投与するという「介入」をするわけなので
「前向き研究」といいます。
一方、
「Aという病気が完治した患者に対し、
何が要因でAが治ったのかを分析する」
という研究はこれから説明するPECOフレームワークで説明できます。
Aという病気が治った「あと」の患者を分析するので
「後向き研究」というのです。
PECOフレームワークの中身
ではそんなPECOフレームワークの中身を見ていきましょう。
PECOフレームワークの構造は次の通りです。
P(Patient / Population)
どのような人・集団が
E(Exposure)
どのような曝露(ばくろ)・リスクがあると
C(Comparison / Control)
何と比べて
O(Outcome)
どうなるか
この流れとなります。
「曝露(ばくろ)」というとちょっと難しい言葉ですが、
要するに何かの要因・要素に「さらされる」ことを言います。
例えば「化学物質Aに長期間曝露される」というのは
化学物質Aに長い間さらされるということを意味します。
再び、浦島太郎の例
前回の記事ではPICOを浦島太郎の例で説明しました。

PICOの場合、浦島太郎の例はこのようになります。
- P どのような人が:浦島太郎
- I 何を行うと :玉手箱を開けた場合
- C 何と比べて :玉手箱を開けなかった場合
- O どうなるのか :歳を取るのか
続いて、PECOで浦島太郎を整理してみましょう。
- P どのような人が : 浦島太郎
- E リスクや曝露があると: 玉手箱の煙にさらされてしまう
- C 何と比べて : 煙にさらされていない場合と比べて
- O どうなるのか : 歳を取るのか
出典:星野晴彦・松石雄二朗, 2025,『国家試験をギリギリ合格したナースが英語論文を読めるようになった理由』メディカ出版, 77頁.
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PICOとの違い
PICOとPECOの違いを見てみましょう。
PICOとの違いは、
PICOではI(介入)があったのに対し、
PECOではE(曝露)に変わっているというところにあります。
研究者が意識的に何か新たな行動をする(=介入)のではなく、
すでに存在している環境や条件を観察するという
研究スタイルになります。
すでに何かの要因の影響を受けている(=曝露)から
それを分析するということなのです。
研究者が主体的に何かを介入するわけでなく、
すでに起きている変化を分析する。
だからこそ
倫理面で問題が起きにくいですし、
実験しにくい内容も実験しやすくなるのです。
浦島太郎の例で考えてみますと、
PICOではこれから浦島太郎に
玉手箱を開けさせる(=介入)ことになりますが、
PECOでは「煙を浴びてしまう」(=曝露)という状況に
着目します。
医療系の研究では
毒性があるかもしれない煙をわざと人に吸わせる「介入」は
倫理的に許されませんが、
すでに吸ってしまった人を「観察」することは可能です。
その点で
PECOに則った研究のほうが
倫理審査を通りやすいという特徴があります。
実際のPECOの事例
ではPECOを用いた研究例を見てみましょう。
まずは医療研究から。
「タバコを吸うことは健康に害をもたらすか」
という仮説を研究するとします。
まずはPICOで研究計画を考えることにしましょう。
このとき、例えばAさん・Bさん2人の人物に
こういう依頼をすることは出来るでしょうか?
「Aさん、あなたはこれから1日1箱タバコを毎日必ず吸ってください。
Bさん、あなたはこれから絶対タバコを吸わないでください。
10年後、おふたりの健康状態を比較します」
…依頼をすることは無理ではないでしょうが、
タバコの被害を研究させられるAさんはけっこう「かわいそう」ですね。
自分の意志で吸うのならともかく、
無理やり吸わされるわけですから…。
なので研究倫理的にもやりづらい研究になります。

じゃあどうするかというと
PECOスタイルで
「タバコを長年吸ってきた人を集めたグループと、
タバコを一切吸わなかった人を集めたグループを比較する」
という研究が行えるわけです。
図にするとこうなります。
- P どのような人が:成人男性
- E リスクや曝露があると:喫煙習慣がある
- C 何と比べて:非喫煙者
- O どうなるのか:健康への影響
すでに喫煙している(=タバコの曝露を受けている)人と
そうでない人を比較する。
これですと
研究者が意図的にタバコを吸わせるわけでないので
研究をしやすくなるわけです。
他にも公共政策学における都市政策例で考えてみましょう。
「都市部に住むことはストレスを増やすのか」
という仮説を検証するとします。

このとき、PECOで研究を考えると
次のようにまとめることが出来ます。
- P どのような人が:社会人
- E リスクや曝露があると:都市部に居住する
- C 何と比べて:都市部以外に居住する人
- O どうなるのか:ストレスが増える
こちらも
すでに都市部に住んでいる人とそうでない人とを比較するだけなので
新たな介入をするわけでありません。
都市部に住んでいる人・そうでない人に
ストレス調査を行うことで
影響を検証することが出来るのです。

研究の型を使って論文を読み解こう!研究を理解しよう!
ここまでPICOとPECOとを見てきました。
この研究の型を使うと、
大学院の面接官にウケの良い研究計画を作ることが出来ます。

それだけでなく、
あなたが論文を読んだり研究発表を聞いたりする際も
「この研究、PICOとPECOのどちらに当てはまるだろうか」
「Pは何でCはなんだろうか」
と検証することができます。
論文の余白などに
PICOやPECOの要素をメモしていくと
論文理解が格段と進むのです。
ぜひPICOやPECOという
研究の型(フレームワーク)を活用し、
あなたの研究を進めていってくださいね!

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「研究って何をしたら良いの?」そういうときに役立つのが研究の型。介入研究の整理にはPICO、観察研究にはPECOというフレームワークを使うことで研究の方針が定まり、何をしたら良いかが見えてきます。PECOは既に起きた曝露を比較し結果を分析する方法で、倫理的・現実的に介入できない研究にも有効です。論文を読み解く際にも有効なのがこの研究の型、ぜひ学んでいきましょう!