目次
研究ってそもそも何をすること?
「研究するって、どういうこと?」
「どうやって研究したら良いの?」
大学院を目指す方のこういった疑問・質問にお答えする
「研究の型」シリーズ、今回もお届けします!
前回は研究とは
「因果関係に基づいた仮説を検証すること」
であると説明してきました。

そのうえで研究の型を知ることが
研究の方向性を分析するうえで役立つことを
見てきたわけです。
今回はその「研究の型」の具体的な内容として
PICO(ピコ)フレームワークをご紹介します!
介入研究の基本形!PICOフレームワーク
今回ご紹介する研究の型はPICO(ピコ)フレームワークです。
今回ご紹介するPICOや次回ご紹介するPECOは
いずれも医学・薬学・看護学など
医療系の研究で多く用いられるフレームワークとなっています。
そのため、
社会科学系の大学院生の中には
全く知らない人もいます。
(私も大学院生の頃は知りませんでした)
ですが、このPICOフレームワーク、
考え方を知っておくと医療系の研究領域だけでなく
社会科学領域でも活用可能です。
なので「自分は関係ない…」と思わず
一度学んでみてくださいね!

さて、PICOフレームワークは主に
「介入研究」をデザインする際に
用いられることが多くあります。
介入研究とは何かの治療・行動・政策などを意図的に行い、
その効果を検証する研究方法です。
PICOフレームワーク4つの要素
PICOフレームワークは次の4つの要素から成ります。
P(Patient / Population)
どのような人・集団が
I(Intervention)
何を行うと(どのような介入を行うと)
C(Comparison / Control)
何と比較して
O(Outcome)
結果として何が起こるか
この4つを整理することで、研究の問いが非常に明確になります。
介入とは?
ちなみに「介入(Intervention)」という言葉って
通常はあまりいい意味合いでは使われませんよね。
「権力者の介入で結果が変更された」
「社長の介入で議論は振り出しに戻った」など、
マイナスの意味でよく使われます。
ですが研究における「介入」とは
研究者が何らかの行動を意図的・意識的に行うことであり、
マイナスの意味はありません。
例えば2つの集団に対し
片方の集団にはAという薬剤を投与し、
もう片方の集団には何も投与しないとします。

しばらくした後それぞれの集団で
健康に関する数値の違いを比較検討すると
「Aという薬剤にはどのような効果があるか」
を測定しやすくなるのです。
コロナ禍の頃、ワクチンの効果があれこれ議論されていました。
ある薬剤にワクチンの効果があるかを検証する際、
このPICOフレームワークが用いることになります。
昔話で考えるPICO:「浦島太郎」研究
少しイメージしやすい例を考えてみましょう。
昔話の浦島太郎です。

竜宮城から帰ってきた浦島太郎が玉手箱を開けたら
一瞬で老人になった、という話があります。

これを科学的な仮説として整理してみましょう。
仮説として、
「玉手箱内の煙を吸うことは若い被験者を高齢者に変化させる働きがあるのではないか」
というものを立ててみましょう。
仮説とは因果関係、つまり「原因→結果」の関係を想定したものである、
と説明しています。
この場合の原因が「玉手箱内の煙を吸う」こと、
結果が「若い被験者を高齢者に変化させる」ことであるといえます。
PICOに当てはめると次のようになります。
- P どのような人が:浦島太郎
- I 何を行うと :玉手箱を開けた場合
- C 何と比べて :玉手箱を開けなかった場合
- O どうなるのか :歳を取るのか
こう整理すると、「玉手箱を開ける」という
介入の影響を検証する研究になります。
実際に研究する思考の型として分かりやすくなりますね!
ここで重要なのは、
何かをした場合と、しなかった場合を比較する
という視点です。
これが研究の基本になります。
(なお、浦島太郎の事例は次の本の内容を参考にしています)

☆星野晴彦・松石雄二朗, 2025,『国家試験をギリギリ合格したナースが英語論文を読めるようになった理由』メディカ出版。
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医療研究の典型例:薬の効果検証
医療分野ではPICOが頻繁に使われます。
例えば新しい薬の効果を検証する場合、
次のような研究を行うことになります。
- P どのような人が:特定の疾患を持つ患者
- I 何を行うと:新薬を投与する
- C 何と比べて:従来薬またはプラセボ(偽薬)を投与した場合に比べて
- O どうなるのか:症状が改善する
このように整理すると、研究の構造が非常にクリアになります。
ちなみに時折
「Cの「何に比べて」って別になくても良いんじゃないですか」
とご質問をいただくことがあります。
Cはある意味で統制群と言えるもの。
変化が生じたかどうかを比較する対象(統制群)があるからこそ
Iで行った介入にどれくらい効果があったのかがわかるのです。
PICOが難しい場合
ただ、このPICOによる研究ですが
研究許可が得られないケースも多くあります。
例えば新薬の調査の場合
「安全性に問題はないのか」
などと課題になる場合があります。
他にも
「効果があると分かっているのなら
そういう効果を得られない統制群がかわいそう」
と言われることがあります。
実際、教育に関する研究では
「最新の教育手法を用いる介入群(Iを行ったグループ)と
そうでない統制群との成績の差を調べるのは不公平」
という批判が来ることも多くあります。
そういう場合、
例えば次回ご紹介するPECOフレームワークに基づいて
観察研究にすることもありますし、
あるいは他地域・他の病院との比較を行う場合もあります。

社会科学でも応用できるPICO思考
他地域・他の病院との比較の観点で考えると
PICOフレームワークは一気に使いやすくなります。
例えば政治学や公共政策学の分野で考えてみましょう。
「歩きタバコ禁止条例」を制定している自治体が増えていますが、
「歩きタバコ禁止条例制定は住民の健康を良くするのか」
という仮説を研究するケースで考えてみます。
歩きタバコ禁止条例制定が
住民の健康に影響があるかどうかを
PICOフレームワークにまとめたものは次のとおりです。
- P どのような人が:ある自治体の住民
- I 何を行うと:歩きタバコ禁止条例の導入
- C 何と比べて:導入していない自治体
- O どうなるのか:健康寿命や喫煙率の変化
歩きタバコ禁止条例を制定している自治体と
そうでない自治体を比較する。
こうすると歩きタバコ禁止条例制定がもたらす政策効果が
はっきりします。

ただ、市町村を1つだけ比較すると
「これ、恣意的な比較じゃないの?」
と言われてしまうこともあります。
その場合は
全国の自治体から
歩きタバコ禁止条例を制定している市町村・
していない市町村を複数ランダムでピックアップして比較するという
「ランダム化比較試験(RCT)」
を行うという方法があります。
(こういうとややこしそうですが、
単にPICOをより広範囲に行っただけです)
教育研究でも同様です。
新しい授業法を導入している学校と
従来型の授業法を行っている学校とを
ランダムに選び出し比較すると
「新しい授業方法はクラスの平均成績を向上させるか」
という仮説を検討することができるのです。
研究初心者ほどPICOを知るべき理由
さあ、ここまでPICOフレームワークについて見てきました。
PICOフレームワークで考えると
論文や専門書を読む際も楽になります。
「この研究、Pは何でIは何だろう?」
こう考えつつ、
論文にメモしながら読み取ると
「この論文は〜〜を比較することで==を明らかにしているんだな」
と読み取ることが出来るのです。
なのでぜひこの機会に
PICOフレームワークでの考え方をマスターしてみましょう!
次回予告:PECOフレームワークを解説します!
今回は介入研究の基本であるPICOを解説しました。
しかし研究にはもう一つ重要な型があります。
それがPECO(ペコ)です。
PICOでは介入、つまり「何かをする」ことが前提でしたが、
PECOを使うとすでに起きている要素を分析することが出来ます。
特に医療系の研究などでは倫理的理由から介入できない場合も多いため、
PECOは非常に重要な視点になります。
次回はこのPECOを詳しく解説しますので
ぜひこちらもお読みくださいね!

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研究の流れを知る際に役立つのがPICOフレームワークです。介入研究の基本となるPICOはP(どのような人が)・I(何を行うと)・C(何と比べて)・O(どうなるのか)を整理するのに役立ちます。医療系だけでなく社会科学にも応用可能な考え方であり、これを知っていると研究計画を立てる際にも論文読解する際にも役立ちますよ!