目次
体系的な学びVS偶然に基づく学び
「大学院で体系的に勉強したい…」
「いちど大学院で本格的に勉強し直したい…」
そういう思いを持って大学院を目指す社会人の人も多いことでしょう。
実際、大学院での学びと聞くと、体系的で計画的な知識習得をイメージする人が多いかもしれません。
ですが、学びには「偶然」も重要な要素として存在します。
「偶然」を活かすことを心理学では「セレンディピティ」と呼びます。
実は、大学院に進学することは体系的な学びを得られるだけでなく、「偶然の学び」を得る機会も格段に増えるのです。
今回は「セレンディピティ」をテーマに、大学院でどのように「偶然の学び」を活かせるのか、その魅力についてお伝えします!
セレンディピティとは?物語に秘められた意味
セレンディピティという言葉、聞いたことがある人も多いかもしれません。
セレンディピティ(serendipity)とは、18世紀のイギリスの作家ホレス・ウォルポールが使い始めた造語です。
由来は「セレンディップの3人の王子」という古い物語にあります。
この物語では、3人の王子たちが旅をしている最中、出会った偶然の出来事からさまざまな洞察を得たり、問題解決に役立てたりしていく姿が描かれています。
この物語を受けてホレス・ウォルポールは「偶然の中から思わぬ発見をする能力」や「意外な出会いから新たな知識や洞察を得ること」をセレンディピティといい始めたのです。
ウィキペディアに引用文があったので紹介します↓
この私の発見は、私に言わせればまさに「セレンディピティ」です。このセレンディピティという言葉は、とても表現力に満ちた言葉です。この言葉を理解していただくには、へたに語の定義などするよりも、その物語を引用したほうがずっとよいでしょう。かつて私は『セレンディップの3人の王子』という童話を読んだことがあるのですが、そのお話において、王子たちは旅の途中、いつも意外な出来事と遭遇し、彼らの聡明さによって、彼らがもともと探していなかった何かを発見するのです。たとえば、王子の一人は、自分が進んでいる道を少し前に片目のロバが歩いていたことを発見します。なぜ分かったかというと、道の左側の草だけが食べられていたためなのです。さあ、これで「セレンディピティ」がどのようなものか理解していただけたでしょう?
ウィキペディア「セレンディピティ」
計画的なことがらではなくふとしたきっかけや思いがけない出来事が今後につながること。
それがセレンディピティなのです。
セレンディピティに基づく学びを!
大学院というと体系的・計画的な学びを得るための場所にように思えます。
ですが、大学院ではセレンディピティに基づく偶然の学びを得る機会が多くあります。
例えば大学院で一緒に学んでいる仲間と話す中で新たな発見が得られたり、大学院でたまたま履修した授業の内容にヒントを受け新たな製品開発につながったりすることもあります。
大学院の図書館でたまたま見つけた本に魅了され、「この分野をもっと勉強したい!」と気づくこともあるでしょう。
このように大学院での偶然の学びが今後の人生を大きく変えることもあるのです。
大学院時代のセレンディピティ体験
私自身、大学院時代にセレンディピティを実感したことがあります。
事例1)『日本語の作文技術』との出会いが独立・開業につながった!
1つ目は友人の家に行った際のことです。
大学院時代の友人の家に行くと、本棚にある本を見つけました。
それが本多勝一さんの『日本語の作文技術』です。
写真は「新装版」ですが、友人宅にあったのは以前の版のものでした。
以前から作文に興味を持っていた私ですが、「どうやって作文の書き方を身に着けたらいいか」という方法論はまったくといっていいほど知りませんでした。
友人宅にあった『日本語の作文技術』をパラパラ読んで「これ、面白い!」と実感。
帰宅後 本屋で買って熟読したのをいまだに覚えています。
この本を読んだことがきっかけで「文章に関する講義ができるようになりたい」と思うようになりました。
8年前に「作文塾」を開く形で独立・開業したのも、いま企業様や団体職員の方を対象に「文章作成力向上研修」講師の仕事を行っているのも、きっかけは『日本語の作文技術』に魅了されたことが大きいです。
あのとき友人宅に行っていなければいま自分は独立・開業していることもなかったかもしれません。
そう思うと、1冊の本との出会いが人生を変えるのを実感しています。
事例2)たまたま読んでいた本が修士論文に活用できた!
もう1つ、セレンディピティを実感した事例を紹介します。
それは私が修士論文を書いているときのこと。
当時、アマルティア・センという経済学者の本を何気なく読んでいました。
その内容は、直接的には私の研究テーマには関係なかったのですが、ふとした興味から読んでいたのです。
ところが、読み進める中で「これなら自分の論文で引用できるかもしれない」と思う一節に出会い、実際に引用として使用しました。
修士論文に使ったところ、副査の先生から「この引用にはセンスがあるね」と褒められたのです。
全く予期していないコメントだったので嬉しかったですね!
この経験から、普段自分が学んでいることや、偶然目にした情報が、予想外の場面で役に立つことがあると実感しました。
何か一つの目的のために本を読むだけでなく、興味を広げてさまざまなジャンルの書籍や資料に触れることが、思いがけない学びにつながるのです。
偶然の学びが「使える」場面は意外と多い
このようなセレンディピティによる学びは大学院の学問的な学びに限らず、日常生活や仕事においても役立つ場面が多いです。
たとえば、私は現在、社会人向けに大学院進学のための講義を行っています。その中でも、過去に読んださまざまな本や、思いつきで受講したセミナーで得た知識が、思わぬところで役立っています。
講義の中で受講生の方からの質問に答える際にも、こうした「偶然の知識」が何度も役立っています。
たとえ当初は「これは直接仕事には役立たないかな…」と思っていた情報であっても、意外なところで役に立つことがあるのです。
ですから、大学院での勉強でも「この本はすぐには役立たないかもしれない」というような考えを持たず、興味があればどんどん手に取ってみることをおすすめします。
いつか思わぬタイミングで、その知識が自分を救うこともあるからです。
「あんまり関係ないことを学ぶのは時間がもったいない…」
なかにはこういう思いを持つ方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに大学院には「キャリアアップしたい!」という強い思いで進学する方が多いので、関係ない本を読むのは一見ムダに見えることでしょう。
ですが、ムダに見えるものの中から今後のキャリアに繋がるヒントが隠れているものです。
かのアップル創業者スティーブ・ジョブズさんも大学を中退する前 興味本位でカリグラフィー(西洋書道のようなもの)を学んでいたことがあとあと役立ったとスピーチしています。
カリグラフィーを学んでいたことがきっかけで、アップルのPCには多彩なフォントが搭載されることになったのです。
これも一見ムダに見える学びが後々役立った事例であると言えるでしょう。
以前このブログでも「無目的な学び」の大事さをお伝えしています。
これもムダに見える学びがセレンディピティにつながることを伝えているのです。
セレンディピティを活かす学びの習慣
セレンディピティを日々の学びに取り入れるためには、毎日の少しずつの積み重ねが大切です。
いくつかのポイントを紹介します。
1. 興味の赴くままに本を読む
大学院進学を目指していると、どうしても「この科目のテキスト」や「研究テーマに関連する文献」など、計画的に読む本が中心になることが多いですが、たまには「面白そうだな」と思っただけで本を手に取るのも良いのです。
そうすることで、今後の研究や仕事において役立つ知識を偶然見つけるチャンスが広がります。
2. 日常の出来事を振り返る
セレンディピティは本や学術書の中だけにあるわけではありません。
日常生活や、仕事中にふと気づいたことも、意識して記録しておくと良いでしょう。
その振り返りの中に、新たな発見があるかもしれません。
大学院生活ではこうした記録が思わぬアイデアにつながることも多く、成長のヒントが散りばめられています。
3. 「役に立つかどうか」より「面白いかどうか」で判断する
大学院生は忙しいですが、たまには自分の純粋な興味で知識を追いかけてみることも必要でしょう。
何か新しいことに出会うとき、「これは役に立つか?」と考えず、「面白い!」と感じたならばそのまま深掘りしてみましょう。
セレンディピティに基づく学びとは、こうした偶然の「出会い」を大切にすることから始まります。
セレンディピティを育てるために
セレンディピティを活かすためには、偶然に出会う機会を増やすことが大切です。
そのために、以下のような姿勢を持つと良いでしょう。
1. 計画的でない時間も作る
多くの大学院生は計画的に学びを進めていますが、少しだけ「無計画な時間」を持つことも大切です。
この時間を利用して、普段あまり触れることのないジャンルの本を読んだり、講義の後に図書館を散策してみたりと、偶然の出会いの機会を意識的に作ってみてください。
2. 他の人の視点を聞いてみる
大学院では、自分と違った背景や専門分野を持つ仲間がたくさんいます。
まわりの意見に耳を傾けると新たな発見や着想が生まれることもあります。
セレンディピティを育てるには、自分の世界を広げるために他の人の意見を聞くことも効果的です。
3. 新しい経験を大切にする
セレンディピティの本質は「意外性」です。
日常から少し離れた活動やイベントに参加することで、偶然の学びを得ることができます。
大学院に通っていると研究活動に集中しがちですが、意識して新しいことにチャレンジすることで、思いがけない学びが得られるでしょう。
実は大学院って珍しいイベントの宝庫です。
聞いたこともない分野の専門家による講演会や大学主催のイベントが大量に行われています。
現に私はいま北海道大学大学院に通っていますが、毎週のように「謎のイベント」のご案内がメールで大学院から送られてきます。
興味を感じたものに参加することであらたな世界を知ることもできます。
場合によってはそこでの出会いがきっかけに未来が変わることもあることでしょう。
「目的」だけにとらわれるのはキケンです!
大学院において本来の専門以外のことを学ぶ。
このことを「ムダ」と考える人もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、忙しく仕事や家事に追われながら大学院で学ぶため回り道をしている時間がムダに思える気持ちもよくわかります。
最短距離で卒業したい思いもわかります。
ですが、せっかく大学院に行くのに一切ムダを経験しないのももったいないと思うのです。
哲学者・國分功一郎(こくぶ・こういちろう)さんの本に『目的への抵抗』があります。
この本は現代の社会においては役立つ・役立たないといった合理性や「それをやる意味は何?」などと目的が常に問われている状況を批判する本です。
いうならば合理性・目的を超えていく大事さを訴えているのです。
この姿勢、セレンディピティに基づく学びを行う際にも重要でしょう。
「すぐに役立つかどうか」という目的だけにとらわれず、時には興味・関心に応じて自由に学ぶ。
この姿勢も人間には必要なのですね。
☆本書を解説していますのでよければこちらもご覧ください↓
結論!偶然の学びがあなたの未来を変える!
大学院での学びは、計画的な勉強だけでなく、偶然の発見や出会いが加わることでさらに豊かになることでしょう。
「セレンディピティを大切にしよう」と意識するだけで、普段の学び方が変わり、新たな発見が生まれやすくなります。
ときには自分の興味に従って自由に学び、たくさんの「偶然の学び」を経験してみましょう!
それが、大学院生活を充実させることにつながり、キャリアや人生の大きな支えとなるはずですよ!
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大学院での学びは「計画的」に限らず「偶然」による発見も重要です!
セレンディピティを活かすことで新たな発見や成長のチャンスが広がります。
たまたま読んだ本や日常の出来事からも貴重な気づきを得られることも。
大学院生活で偶然の学びを積極的に楽しみ、学びを深めていきましょう!