「する」ことを超えて。デイケアで学ぶ「いる」ことの意味。東畑開人『居るのはつらいよ』を読んでみて。

藤本研一
Digest!
東畑開人さんの『居るのはつらいよ』。
常識がひっくり返る感じのあるいい本です。
 
特にいいのは何かを「する」ことよりも
そこに「いる」ということの価値を
示しているところ。
 
私はうつ発症時、何も「する」ことができない自分を
卑下するあまり外に出れませんでしたが、
開き直って自分で「いる」ことを受け止めたことで
外に出られるようになりました。
 
『居るのはつらいよ』、いい本ですよ!

東畑開人『居るのはつらいよ』で常識が崩れる。

最近読んでいて
面白い本があります。

それが
『居るのはつらいよ』という本です。

(写真はAmazonより)


精神疾患を抱えた方が日々通うデイケアの日常を
心理士の立場から描いた作品となっています。

読んでいると、
自分の「常識」と言いますか、
「当たり前」の概念が崩れていくように感じる本です。

本書は著者の東畑開人(とうはた・かいと)さんの
27歳の時から話が始まります。


(東畑さんの本、
 これまで何冊も読んでいますが
 とてもおもしろいです)


大学院で心理学の博士号を取得したはいいものの、
なかなか就職先が決まらない。

そんななか、

「大学に残ったほうがいいよ」

という声も振り切って
セラピーの現場での就職を志望することにします。


採用されたのが沖縄のデイケア。



精神疾患を持っている方に
カウンセリングを通してセラピーを
提供するために就職をしました。

勢い込んでカウンセリングしようとするものの…。

現場で求められるものは全く異なりました。

「する」ことより「いる」ことが重視されるデイケア現場。

東畑さんはカウンセリングの実施をしようと意気込むのですが、
そこでは
「ただ座っている」こと・
「そこに居る」ことが求められていました。


利用者はただイスに座っていたり、
その場で過ごしていたりします。

何かを「する」ことは重視されません。



必然的にスタッフも、
利用者がそこに「居」れるよう、
ただ黙ってその場に「居」続けることが
求められていました。

「デイケアで過ごす10時間うちの
 かなり多くが自由時間なのだ。
 それは何かを「する」のではなく、
 「いる」時間だ。

 座って「いる」。
 とにかくそこに「いる」。

 ただ、いる、だけ。
 何も起こらなくて、動きがない静かな場所だ。

 デイケアとは、とにもかくにも、
 「いる」の場所なのだ。」
 (東畑開人『居るのはつらいよ』42頁)


精神疾患を抱えて
人と関わること・
外に出ることなどに課題を抱えている利用者たちは
デイケアの場所に「いる」ことが求められています。



ただ座っているだけでもいいですし、
ダラダラ過ごすだけでもいい。


それはその場に「居」られるようになることが
精神的な回復への一歩となるからです。

「いる」ことへの戸惑い

東畑さんは当初そのデイケア施設で
カウンセリング「する」こと・
セラピーをして人を改善「する」ことばかりを
考えていました。


そのため、
「居る」こと・ただそこで「過ごす」ことが
求められることに
さいしょ相当とまどうことになりました。

勤務時間の10時間、
ただ居続ける。

〈もっとカウンセリングなどをして
 利用者のセラピーをしようと思っていたのに、
 なんでそういう事ができないのだろう…〉

当初、東畑さんは
「する」ことではなく「居る」ことが求められる職場で、
ツラさを実感していたようです。


ただ、東畑さん自身が
その場で利用者と一緒に過ごす中で
その場所に「居る」ことができるようになりました。


すると、
利用者との関わりを通し
利用者自身の回復や
東畑さん自身の成長が
自然に引き起こされるようになったといいます。

「する」ことばっかり重視していませんか?

この本を読んで
「する」と「居る(いる)」の違いが
とても興味深く感じられました。

多くの場合、私たちは
「する」ことでしか自分の価値を
実感できません。

何もせずその場に「居る」ことで
褒められたり評価されたりすることは
ほぼないからです。

(会社に出勤しても
 「この会社に居てくれて嬉しいよ」
 「今日も来てくれたね」
 と感謝されることはほぼ無いですよね)

ただ、「する」ことだけで評価をしていると、
なにか起きたとき簡単に自己認識が折れてしまいます。

「する」ことだけだと、
病気やケガなどで仕事ができなくなるなど
「する」ことができなくなった時
自分の価値を感じられなくなるのです。

そんなとき
「自分はなんてダメなんだ…」
と精神的不調にもつながるのです。

「する」ことができなかった うつの頃。

私は大学院2年生の頃
うつを発症していました。


そのとき、
なにも「する」事ができませんでした。

なにも「する」事ができない
自分には何の価値もない。

そう自己卑下していました。




当時は自分にひとつも価値を感じることができませんでした。

私がうつから回復できたのは
「する」ことへの重視を辞めたことがきっかけでした。

たとえ何も「する」事ができなくても、
自分で「いる」事ができるならそれでいい。

そう開き直ったのです。

「いる」ことへの「開き直り」による自己肯定

具体的には

「大学院で良い研究ができなくても、
 いい就職先を見つけられなくても
 構わない」

と開き直りました。


当時私は映画を見ることだけが趣味だったので、
 
「自分が好きな映画を観れる生活を
 維持できるならそれでいい」

と開き直っていたのです。

たとえ何も「する」ことができなくても、
自分のしたい生活ができる・
自分で「いる」ことができれば
それでいい。

開き直ったことで
自分を認められるようになったのです。

結果、うつを抜け出すことができたのです。

「する」だけでなく「いる」だけでも価値がある!

本書『居るのはつらいよ』を読むと、
「する」ことばかり重視することの
問題点を実感できます。


たとえ何かを「する」ことができなくても、
「居る」ことだけでも価値がある。


それを強く感じることができました。



心が折れてきたときなど、
この本を読むと癒やされる気がします。

今回のポイント


「する」こと以上に「居る」事自体の価値も
実感を!!

人の価値は「する」では決まらない!

人間の価値はなにを「する」かどうか、
何か「する」ことができているかどうかで
決まるわけではありません。

なにか特別に「する」ことができなくても
「居る」ということ自体にも価値があります。


いつも同じ自分でいつづけることにも
多くの価値があるのです。

ふだん過ごしていると「する」ことの価値ばかり
注目してしまいがちですが、
「居る」ことの価値をもっと見ていく必要がある。

それを感じることができるのが
『居るのはつらいよ』なのです。


(私はふだん「する」ことの価値ばかり考えてしまうため、
 「居る」ことの価値を考えないとな…と思っています)

主なターゲットはケアをしている方ですが、
それ以外の方も読まれてみると
面白いですよ!

  ☆東畑開人『居るのはつらいよ』の
   詳細とお求めはこちら↓
   https://amzn.to/4boqDHX

ぜひ読んでみてくださいね!

補足

本記事は本書を半分くらい読んだ段階で書いた内容と
なっています。

最後まで読むと、
大きな「どんでん返し」というか
「謎解き」が出ていますので、
ここで書いた内容が少し覆されるところがあります。

本書を読んでそういった「どんでん返し」を
楽しんでいただけましたら幸いです。

ではまた!


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