業界小説『予備校のいちばん長い日』を年始早々読んでみた件。

今回のポイント

自分の業界の職業小説を
休み期間に読んでみるメリット。

予備校業界小説を読んでみた。

お正月期間、
みなさまいかがお過ごしでしょうか?

お正月期間、
少し時間ができたので
世にも珍しい「数学小説」、
もっといえば「予備校業界小説」
とも言える作品を読んでいました。


帰省のため新千歳空港に向かう途中、
たまたま買った小説です。

それが
向井湘吾さんの
『予備校のいちばん長い日』です。

「解答速報」にかける予備校での意地の張り合い。

予備校業界では試験後に
「解答速報」なるものを
配っています。

これは試験の答案の
模範解答をその日のうちに作成し
試験が終わる頃を見計らって配布したり
ネットにアップしたりしているものです。



それによって
各予備校の信用や実力を
受験生に示すという意味合いがあります。

実際、
大学入学共通テストや
旧・大学入試センター試験のほか
有名校の試験では
あちこちの予備校が解答速報を
出していますね。


『予備校のいちばん長い日』は
まさにそういう文化を背景に
成立しています。

1998年3月、実際に東大で出題された難問。

ストーリーは1998年の3月。

当時、東京大学理科Ⅰ類の
後期日程試験当日、
驚くべき難問が数学で出題されます。


あまりにもこれまでの出題傾向から
外れている上、
解き方が導き出せないほどの難易度。


そのために
通常は当日に出る解答速報を
どの予備校も出すことができませんでした。



主人公・言問さくら(こととい・さくら)は
弱小予備校で勤務している
エース数学講師。

ちょうどこの予備校の
東大コース廃止が決まったタイミングでした。



「どの予備校も出せていない解答速報を
 うちの予備校がまっさきに出せたら
 東大コース廃止を防げるのでは?」

そう決意し、
徹底的に問題に向き合いあう…。

そんなストーリーとなっています。


解答速報づくりに命を燃やす



小説には実際に出された問題も
掲載されています。

この難問を
英語講師との話や
焼肉屋での何気ない行為から引き出し、
なんとしても回答しようとする
意欲が印象的な作品となっています。

正月期間中
業務が空いていたこともあり
一気に読み切りました。





塾・予備校業界での
エリートたちの意地の張り合いと
「浮世離れ」した講師の日常が
描かれていてめちゃくちゃおもしろかったです。



私は数学が昔からニガテでしたが、
あらゆることを犠牲にして
数学の回答作成に執念を燃やす
主人公たちの情熱が
本作から伝わってきます。



ちょうどいまから25年前が
舞台ということもあり、
残業・徹夜が当たり前の世界の中で
問題と戦う主人公の姿が印象的でした。

私自身
受験業界のはしくれの存在として
シンパシーというか
微笑ましい気持ちで読み切ることができました。




今回のポイント


自分の業界の職業小説を
休み期間に読んでみるメリット。

休み期間こそ職業小説を読もう!


休みの期間って、
普段読んでいない長編小説を読むのに
最適な機会ですよね。

特に自分の仕事に関わる分野の
職業小説って、
読んでみると印象深いですね。


ふだん自分がいる業界を
客観的な目で見ることができるからです。


予備校業界は挫折者の集う場所。




この
『予備校のいちばん長い日』は
私もいちおう所属している
受験業界を支える講師の「特殊性」が
伝わってくる作品です。



概して言えば
予備校業界って
「夢を挫折したものが集まる場所」

という傾向があります。


主人公・さくらも
元は数学の研究者になるべく
東大理Ⅰ(数学の研究科がある場所)を
受験するも挫折していますし、

他の主人公たちも
軒並み「数学者」を目指すも
挫折した人たちばかりです。

でも、挫折しているからこそ
その情熱を
受験業界でイキイキと発揮している
わけですね。



…私も彼ら同様
大学院博士後期課程に進学し
研究者になることを目指していましたが、

あまりに高い壁に挫折をした
経験を持っています。

「ああ、自分だけではないんだな」

という妙な納得感を
読後に感じました。

挫折したからこそ
得られた経験があります。

それを受講生の方に
今年も還元できるよう
努力していきたいと思います!

今年もよろしくおねがいします!



☆『予備校のいちばん長い日』、
 かなりいい作品です。

 数学好きな人もそうでない人も
 読むと数学の面白さが伝わってくる
 良書ですよ!


 

ではまた!