いままで、「作文のコツ」を考えてきました。
ここのあたりで、一度「書く」とはどういうことか、考えてみましょう。
「書く」ことって、何だろう?
ここでは2つの側面から見ていきます。
検証①3R’sの発想から
子どもの教育にとって必要不可欠な3つの力があるそうです。
3R’sという3つのRのことなのですが、何かご存知ですか?
答えです。
Reading(読み)、Writing(書き)、Reckoning(算)です!
【参考】https://kotobank.jp/word/3R’s-1348432
(余談ですが、個人的には「Writing」のところだけRはじまりでないのが気になります)
日本風に言うと「読み書きソロバン」。
小学校でもよくやっている教育です。
ここで考えて欲しいのは、「話す」「言う」が入っていないところです。
3R’sは「子どもが一人前の社会人になるため、学校で教わるべき力」でした。
明治の近代化、あるいはそれ以前・江戸時代の寺子屋で教えられていたのも「読み書きソロバン」です。
「言う」「話す」は家や地域社会でも学べる力です。
言ってしまえば勝手に学べてしまうものです。
ですが(当初は)「読み書きソロバン」は専門の教員からしか学べないものでした。
読み書きソロバンの学習には、きちんと向き合って教えて貰う必要があります。
親は忙しい。
だから代わりに教える「寺子屋」なり「学校」なりが登場してきたのです。
この「読み書きソロバン」には一つの共通点があります。
それは基本的には「他者の意見を聞く」「他者に意見を伝える」ところが求められている点です。
「好き勝手に自分の考えを話す」のとは違います。
どこまでも他者、つまり相手のことを考えることを要求されているのです。
検証してみましょう。
「読む」力は、他人が「これを伝えたい!」という思いを持って書いた文章を読む力です。
「書く」力は、他人に「これを伝えたい!」という思いを持って文章を書く力です。
「そろばん」(計算力)は他人や自分の周りにある金銭取引を整理する力です。
読み書きソロバンには背後に「伝える」相手がいます。
案外、忘れられているのでもう一度書きます。
読み書きソロバンには背後に「伝える」相手がいるのです。
検証②大学生のレポートから
ちょうど昨日、ある飲み会に参加しました。
その際、大学教員の方に話を伺いました。
なかなか楽しくお話をしながら、「作文」や「書くこと」について語り合いました。
(もうおわかりかと思いますが、その際の会話が今日のブログにつながっています)
大学生のレポートについての話で盛り上がりました。
「大学生はただ【レポートを作る】ことばかり考え、
それを読む相手がいることを全く考えていない」
この点で共感しあいました。
大学生は授業の際、レポート提出が求められます。
大体の場合、ただ「レポートを作る」だけに意識がいってしまいます。
ただ本の内容をまとめただけのレポート。
ダラダラ、授業の内容を書いただけのレポート。
彼らはレポートを作ることしか、考えていません。
ただレポートを「こなす」だけです。
レポートを「教員が読む」という当たり前の事実を忘れてしまうのです。
「期限通り、レポートを作ったよー」
「授業をもとにレポートを出したよー」ということしか考えていないのです。
「レポート執筆を通し、授業で学んだことをもう一歩深め、自分の考えを出そう」
「レポートをまとめるなかで、新たに自分なりに【気付き】を得よう」とは考えないのです。
大学の授業でレポートを要求する意味。
それは次のことです。
授業を受け、自分は何を学んだか。
自分はどう考えたか。
レポートを書く中で自分は何を学んだか/何を気付いたか。
このことを求めているのです。
ここで、検証①・検証②をもとに、はじめに書いた【書くことって、なんだろう】の問いに戻ります。
「書く」ことには、次の2つの意味があります。
(1)相手に、自分の言いたいことを伝えるため
(2)自分の考えを深め、気付きを得るため
(1)から見ていきましょう。
3R’sの部分で書いたとおり、「書く」ことには背後に「相手」がいます。
相手に、自分が「これは伝えたい!」ということを伝えるのが「書く」意味です。
(2)も見ましょう。
単に書くのが目的ではなく、「書く」なかで自分の意見や考えがまとめられます。
前に本ブログで書きましたが、「書きたいことは書く中で/書き始めると見つかる」のです。
書くことで自分の考えが深まります。
今回、【「書く」ことって、何だろう?】の問いから、
(1)相手に、自分の言いたいことを伝えるため
(2)自分の考えを深め、気付きを得るため
・・・という2つのことをまとめました。
大切にして欲しいのは、単に「ただ書く」「ただレポートを出す」ことがいかにダメか、ということです。
レポートを「こなす」のではなく、(1)のように適切に「伝え」、
(2)のように自分の考えを「深め」、「気付きを得る」。
それができているか、いま一度考えてみましょう。
書く文章自体が変わってくるはずです。
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