目次
AIに論文を書かせる人々。
最近、ChatGPTをはじめとした生成AIの発展が目覚ましいです。
指示すればどんどん原稿を自動で作ってくれるスピード感。
これを見ていると
「人間が文章を書く意味って何なんだろう…」
と思ってしまいます。
実は大学や大学院の研究の分野にも
生成AIが入り込んできています。
…というより、生成AIの出力を
「そのまま」論文にしているケースも
散見されます。
以前の記事でも紹介しましたが、
生成AIの出力を「そのまま」使うという形で
学術界の「汚染」が進んでいるのです。
大規模言語モデルは科学界をも汚染している。
2024年2月にはすでに多くの科学雑誌が、生成AIが生み出した不正確な情報に基づいた記事を受け入れ、発表さえするようになっている。
滑稽にも、チャットボットを利用した証拠を最露している論文さえある。
たとえば、バッテリー化学に関する中国のある論文は、「わかりました。そのテーマに関する序文の一例を以下に示します」という言葉で始まっている。
また、「最後に知識を更新した時点では」という語句が登場する論文の数は、2024年3月時点で180を超える。
論文の査読に生成AIが利用されているケースがあるとの調査結果もある。
このような事態が、発表された論文の品質に影響を及ぼさないはずがない。(ゲイリー・マーカス『AIテックを抑え込め!』Kindle版77ページ/297ページ)

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私としては生成AIを研究や論文執筆に使うなとは言いませんが、
「そのまま」出力するのはいかにも品がないな・・・
と思ってしまいます。
余談ですけど、読者の方から
「フジモトさん、最近AIネタばっかですね」
という感想をいただきました…。
それくらい、私の中では
「AIが発展したなかでいかにキャリアを形成するか」が
危機的な課題になっていると解釈していただければ、と思います…!
人間の研究者がAIに敵わなくなってしまう?!
さて、ChatGPTなどの生成AIって
すでに「言語化」「数値化」された情報をもとに
分析や検討をするのが得意であるという特徴があります。
言ってしまえば、
先行研究の分析や
大量のアンケートの分析、
統計の分析などが得意、ということです。
先行研究の分析やアンケートの分析、
統計の分析などは
「人によって解釈が違う」のは
あまり良くないこと。
同じデータが有るのなら
皆がほぼ同じ結論に達することが求められるのです。
こういうふうに
「ほぼ同じ結論」に達することが求められる作業、
生成AIが得意とする分野です。
人間って「体力」「精神力」の限界があるので、
数千枚ものアンケートを読み込んだり
数百本の論文の内容を正確に整理したり
数万件の統計を正しく分析したりするのは
なかなか困難です。
…ということはこの分野について、
人間の研究者はAIに敵わなくなるのではないか、
と思うのです。
これ、考えてみると「論文作成にAIを使う」問題以上に深刻です。
「AIがあるなら研究者っていらないんじゃないか」
そう言われてしまう可能性も出てくるからです。
生成AIが研究に活用されるなか、これから必要なのはフィールドワークだ!
ここまで考えた時、
「人間の研究者は今後何をすべきなんだろうか…」
「AIにできない研究って一体なんだろうか…」
という疑問が湧いてきました。
私の専門である教育学や社会学に関して言えば、
アンケート調査や統計分析については
AIのほうが効果的に分析を行ってくれるようになっていると言えます。
じゃあ、人間の研究者は何が出来るのか。
色々考えて、
「フィールドワークやインタビュー調査など、
ゼロからデータを作るタイプの研究だと
まだまだ活躍できる!」
と結論を出しました。
つまり量的調査ではなく
質的調査の分野だとまだまだ活躍できるのでは、と思うのです。

質的調査は「人間の営み」そのもの
質的調査というのは
現地に行って調査をするフィールドワークや
人の話を聞くインタビュー、
集団に入っての参与観察やエスノメソドロジーなどをまとめた言い方です。
アンケートや統計のような数字データではなく、
実際に現地に行って人の話や環境を観察し、
言語データを作っていくタイプの研究を言います。
例えばインタビュー調査だと
相手に質問をしながら話を聞いていきます。

このときのポイントは
「関係性づくり」自体も研究に入るということ。
インタビュー調査のなかには
「調査許可」を得るのが大変なタイプの研究があります。
例えば80~90年代に「活躍」していた
暴走族を例に見てみましょう。

暴走族たちはなぜバイクで行動を暴走するのか、
暴走族たちはどのような価値観を持っているのか。
このことを調べようと思っても、
「そもそも暴走族に話を聞くのが難しい」
ことになりますよね。
そんななか、社会学者の佐藤郁哉(さとう・いくや)さんは
暴走族の若者と個人的に仲良くなり、
暴走族の集会にも参加し一緒に行動するなかで
関係性を築いていきました。
そのなかでの暴走族の若者との関わりをもとに
調査を進めていったのです。
それが『暴走族のエスノグラフィー』という力作にまとめられています。

暴走族の若者と仲良くなるのもまず大変ですし、
研究の調査協力を得るのもけっこう大変です。
でもそれをやりきったからこそ
社会学の歴史に残る研究が出来たわけですね。
関係性づくりからはじめるのは骨が折れますが、
人と関係を作ったうえで研究をするのって
AIでは絶対に行えません。
なので今後研究の分野って
AIではできないフィールドワークやインタビュー調査など
質的調査の方が中心になっていくのではないかと思っているのです。

当事者研究というもう一つの可能性
もう一つ重要だと感じているのが、
質的調査のなかでも
当事者研究と言われる研究方法です。
これは研究者が外からインタビューやフィールドワークをするのとは異なり、
「当事者」自身が自分のことを研究するという研究方法を意味します。
例えば、これまで精神疾患を持つ方についてを
医学研究者などがインタビュー調査をしたことがありますが、
精神疾患を持つ方自身が
自分のことを研究しても良いわけです。
実際に北海道・浦河の「べてるの家」の研究実践が
当事者研究として重要な意味を持つものになっています。
AIって生身の肉体を持って生きているわけではないので
「自分自身のこと」を研究することはほぼ不可能です。
こういう分野こそ
人間の研究者の役割が大きくなるのではないかと思うのです。

これからの研究は「努力型」に戻るかもしれない
今回はAIが発展する中での
今後の研究のあり方についてを見てきました。
研究者と言うと
「研究室で論文ばかり読んでいる人」
というイメージを持つ人がいますが、
論文を読むのは研究のごく一部です。
本来的な研究は
研究室の外に出てフィールドワークをしたり
インタビュー調査をしたりする中にもあります。
アンケート調査や統計分析などが
AIで分析できるようになっているのであれば、
人間の研究者がやるべきことは
こういう泥臭い質的調査のなかにあるのだと思うのです。
つまり研究者が現地に行き、
人と対話したり集団に参加したり
ともに行動したりするなかで研究を深めていくような研究が
今後ますます価値が出てくるのではないかと思うのですね。

同時に、大学院進学をする際にも
こういう質的調査に関する研究計画を作る意義が
今後ますます高まっていくのだと思います。
私はけっこうこういう質的調査が好きな人間なので、
このタイプの研究、より広めていきたいと思います…!

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生成AIの発展のマイナス面としてAI出力をそのまま論文にする研究者が出ているという問題があります。そもそもAIは統計やアンケート調査等の分析が得意でその点では人間は敵わなくなっていくでしょう。反対にフィールドワークやインタビュー、当事者研究など関係づくりや経験がものをいう質的調査について人間の研究者の役割は今後より大きくなるように思います。質的調査の意義も高まっていくのではないでしょうか?