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介護・育児をしながら大学院に通えるか問題
「育児があるから、大学院進学なんてムリ…」
「進学しようと思っていたけど、親に介護が必要に…」
大学院進学で夢を叶えようと思っていても、育児や介護があるから難しそう…。
こういう声を何度も聞いてきました。

進学やキャリアアップの道を模索する人にとって、育児や介護といった「ケア」の責任が大きな壁となることは少なくありません。
ケアとキャリア。
この2つは本当に両立できないものなのでしょうか?
今回はこの「ケアとキャリアの両立」について、私自身の経験やまわりの事例もふまえながら考察していきます。
ケアは予測不能。だから通学しづらくなる…!
子育てや介護など、ケアは人間が対象です。
そのため、日によって体調や雰囲気は全く変わります。
「きょうは大学院の授業の日だけど、子どもが発熱して家で面倒を見ないといけなくなった…」
こういうこともザラに起こります。
このようにケアを担っている場合、定期的に大学院に通うのが困難になってしまうことが多いです。

ケアの担い手は誰か?
ケアの問題の難しいところは、性別の偏りが大きいこと。
育児や介護というケア労働の担い手は歴史的にみると女性に偏ってきていました。
女性であれば育児や介護を行って「当たり前」。
周りだけでなく本人もそう考える事が多いです。
その結果、女性が進学やキャリア形成の機会を失ってしまうという構造が今もなお残っています。
男性であれば「俺は大学院でキャリアアップする!」という意見が通りやすいのに、女性であれば「わがまま」「母親としてどうなの?」と
女性学などジェンダー研究の分野ではこうした「ケアの押し付け」が社会的不平等を生んでいると指摘されています。

大学院が通学型中心である限り、家庭でケアを担当する担い手が進学機会を得にくくなります。
結果として、キャリア形成を断念せざるを得なくなるのです。
たいへん残念ですが、夫婦のうち「子育てがあるから進学を残念する」ケースは女性の方が多い現状があります。
(ジェンダー的偏りが大きいです)
これを改善するには男性側に「ケアは女性がすべき」という発想があるのを改めていく必要があります。
同時に、女性側も「ケアは当然自分がすべきだ」という思い込みを認識していくのが大事ですね。
「ケア労働は女性の方が適している」という考えは幻想に過ぎません。
家庭内でケアの役割分担を改めて話し合うこと、ケアをきちんと分業することなどが求められていると言えるでしょう。
そのうえで、ケアをすべて自分たちだけで担わなければならないわけではありません。
保育所・デイサービスなどの各種サービスを活用するなど行政のよる支援なども最大限に活用していくことも重要なのです。

解決策はあるか?
ケアとキャリア形成について考えてみると、ケアのメインで担っている状態で大学院に進学するのはかなり困難なように見えてしまいます。
とはいえ、すべてが悲観的な状況ではありません。
最近では、大学構内に託児施設を設けたり、保育サポートを提供したりする大学も増えています。
実際、私の通っている北海道大学でも、教職員だけでなく大学院生もこういった施設を活用することが可能です。
さらに、介護に関しても、デイサービスやショートステイといった地域福祉サービスをうまく活用することで、一時的に学びの時間を確保することも可能です。
重要なのは、「ひとりで抱え込まないこと」。
家族の協力を求めるほか、行政のサービスや制度を調べ活用する。
あるいは大学院の教員に事情を説明し、履修計画を柔軟に組んでもらうなど、支援を求める姿勢も大切です。

コロナ禍が示した「可能性」
実は2020年からのコロナ禍はこれまで「ケアを担っていると大学院に進学しづらい」というキャリアの問題に対し、一時的に「解決策」を示していました。
それが「オンラインでの通学」です。
コロナ禍は多くの苦難をもたらした一方で、私たちに「新しい学びの形」を提示してくれました。
コロナ禍のなか、当時は大学院でもオンライン授業が主流となりました。
その結果、育児中・介護中の人でもZoomを使って自宅で学ぶことが可能になりました。
子どもをもあやしながら大学院に通学し授業に出るのはなかなか気が引けるかも知れませんが、自宅でオンラインで繋いでいると十分ケアと両立できます。
授業中に子どもが騒いだらミュートにすればいいだけ。
オンラインで発表するときも「ちょっとすみません」と言って席を外し、子どもが落ち着いてからまた発言するというケースも実際にありました。
私の知人でも、子育て中の看護師の方が育児の合間にオンラインで授業を受け、大学院を修了した例もあります。
ちょうど産休・育休中に大学院でキャリア形成できたことが復職後の飛躍にもつながったのです。
いまやオンラインを用いることで、ケアを担っていても大学院で学びキャリア形成をできるようになりました。
オンラインでの柔軟な学びは、ケアとキャリアの両立の可能性を大きく広げてくれたのです。

…ですが2025年現在、再び多くの大学院では通学型・対面中心の授業が戻ってきています。
これ、大学院という施設を使っての学びは充実しますが、ケアの担い手にとっては再び厳しい環境になりつつあるとも言えるのです。
なのでオンラインで履修できる授業をもっと増やしていくべきでは、と思うのです。
キャリアを優先することは、悪いことか?
ときにこんな声を耳にすることがあります。
「子育てしているのに、なぜ進学なんかするの?」
「育児や介護が最優先ではないのか?」
こういう意見、よく聞きます。
ですが、大抵の場合 男性ではなく女性にこれが言われていますね…(良くないことですが)。
たしかに、ケアの時間を削って学びの時間をつくるというのは、短期的に見ると家庭への影響もあるかもしれません。
(ただ、だからといって「大学院進学なんてとんでもない」「わがまま」と一方的に言ってしまうのは乱暴だと言えます)
ですが、長い目で見たとき、大学院進学などキャリアアップを行うことは大きなプラスになります。
キャリアアップによって収入が増えたり、仕事が安定したりします。
さらには大学院で学んだ知識・人脈が、家族全体にとってもプラスになる可能性があります。
だからこそ、一時的な時間のやりくりのために、自分のキャリアを諦めてしまう必要はないのです。

「時間差」の発想もありうる
もちろん、すべての人が今すぐ進学できるとは限りません。
たとえば、出産直後や親の介護が非常に大変な時期などは、無理に進学しようとしても現実的ではないでしょう。
そんなときに考えていただきたいのが、「時間差」の発想です。
人生は長いです。
大学院進学やキャリア形成を今すぐに達成しなくても、タイミングを見計らって挑戦することは可能です。
子どもが小学校に入るタイミングや、介護が少し落ち着いたタイミング、あるいは家族の理解が得られたとき。
こういう「時機」をうまくとらえることで、ケアとキャリアは両立しうるのではないでしょうか?

ケアの経験がキャリアを豊かにする!
育児や介護といったケアは、ただ「時間を取られる大変なこと」ではありません。
多くの人が、ケアを通じて人生観や価値観に変化があったと語ります。
感情的な理解力が高まったり、他者に対する共感力が深まったりすることも多くあります。
これは、福祉・医療・教育などの分野において特に強みとなりうる能力です。
つまり、ケアの経験そのものがキャリアにとって“武器”となることもあるのです。

あなたにとっての「両立」とは?
育児や介護。
これらと大学院進学の両立はなかなか大変なのが現実です。
どうやったらうまく両立できるのか、日々悩みながら過ごしている方も多くいらっしゃいます。

妊娠がわかったり、家族が病気になったり、親に介護が必要になったり。
人生の変化はどれも急に起こります。
そのなかで、どうやって「学び」を続けるか、「キャリア」を育てるかは大きな難問です。
正解はひとつではありません。
ですが、ひとつだけ言えることがあります。
それは、「あきらめなければ、道はある」ということ。
たとえば進学している方でしたら「休学」制度を一時的であれ活用するのもおすすめです。
ほかにも、進学の際「長期履修制度」を使うことも1つの解決策となります。
長期履修制度を使うと、修士2年分の学費で3〜4年かけて学習することができます。
長期履修制度を使う場合、1年ごとの授業履修の負担が減るので学習がしやすくなるはずです。
このように、すでにある制度を使うだけでもケアとキャリアの両立をしやすくなります。
もちろん、現状には大きな課題もありますが諦めずにケアとの両立を行う方法を考えていきましょう!
☆もしよければ、あなたの工夫や経験もぜひコメントで教えてくださいね!

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育児や介護というケア。ケアとキャリア形成をどうやって両立するかって大きな問題です。そもそも「ケアは女性がやるべき」という思い込みを排していくのも重要だと言えます。現在、オンライン授業や長期履修制度、家族・行政の支援を活用すれば両立は必ずしも不可能ではありません。あきらめずに挑戦する道を考えてみるのがおすすめです!